【不動産DXのシステム特集】~賃貸管理システム編~
アットホーム,日本情報クリエイト,いえらぶGROUP,アセットコミュニケーションズ,Bambooboy(バンブーボーイ),東計電算
商品|2022年06月14日
不動産業務を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)ツールに着目する本特集。第3弾の今回は、賃貸管理会社の管理物件データを取りまとめ、基幹業務全般を支える賃貸管理システムを紹介する。建物整備を手がけるビルメンテナンス会社向けの建物管理システムも取り上げる。
アットホーム、自社に合わせてタスクをカスタマイズ 流通サイトや電子契約サービスと連携
機能別にプラン展開 入送金業務にも対応
管理物件の部屋ごとの情報や、そこに住む入居者、管理を受託するオーナーの情報などを一元的に管理し、管理業務全般の効率化を図ることができる賃貸管理システム。帳票類の作成や家賃送金にも対応し、社外でも操作できるクラウド版も各社から展開されるなど、機能や提供形態は充実の一途をたどる。今後は、物件流通サイトや各種電子入居申し込みサービス、電子契約サービスなどとの連携により、さらなる利便性の高まりが期待される。
アットホーム(東京都大田区)は、2016年5月よりクラウド型システム「賃貸管理システム」を展開している。管理戸数500戸程度の管理会社の利用を想定しており、必要な機能に合わせてプランを選択できるサービス設計が特長だ。
プランは三つ。「台帳プラン」は、物件情報のほか、オーナー情報、入居者情報を管理できる各種台帳機能を搭載。これまで紙で管理していた情報をシステム化するための基本機能をそろえたプランとなる。入居募集時には、物件情報を同社が運営する不動産情報流通サイト「ATBB(アットビービー)」に連携することも可能だ。
「契約管理プラン」は、台帳プランの機能に加えて契約・更新・解約に関する契約情報がシステム上で管理できる。契約書や重要事項説明書、更新・解約時の帳票を簡単に作れるほか、原状回復費用算出や請求書の作成ができる。
最上位の「家賃管理プラン」は、金融機関との連携により金銭の振り込みや引き落としが行える「ファームバンキング機能」を標準搭載。入金管理や滞納督促、オーナーへの送金などにも対応し、全75種類の帳票出力も可能。
システムのトップ画面で使うアイコンの種類や色、配置は各社の業務に合わせてカスタマイズできる。
電子契約と連携 書類管理を効率化
賃貸管理システムでは、管理会社各社の業務フローに合わせられるタスクのカスタマイズ機能により、タスクの進捗(しんちょく)管理も可能だ。システム全般の操作については、今夏より順次「ナビゲーション機能」の搭載を予定している。
5月27日には、同社が展開する電子契約システム「スマート契約」とのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携を開始。賃貸管理システムで作成した契約書をスマート契約に連携できるようになり、契約締結や契約書の管理業務の改善に寄与する。1月に施行された改正電子帳簿保存法の電子データ保存の義務化にも対応。契約書の保存のほか、過去の契約案件の検索性も担保している。
日本情報クリエイト、集客、契約書作成にも対応 仲介・管理業務を幅広く支援
成約数向上にも貢献 多機能な管理システム
集客業務から管理業務まで、賃貸管理会社の業務を総合的にサポートするのが、日本情報クリエイト(宮崎県都城市)が展開する「賃貸革命10」だ。1997年3月のリリース以降、アップグレードのたびに機能を拡充してきた。最新版の賃貸革命10は2017年1月にリリース。管理業務の効率化のほか、成約数の向上にも貢献するシステムとなる。
物件チラシの作成や契約書作成、インターネット広告掲載などの仲介業務支援機能を搭載。賃貸革命10に登録した物件情報を、チラシ作成やポータルサイト、自社サイトへの広告掲載に簡単に転用できる。管理業務では、請求管理、入金・送金管理、問い合わせ管理などの機能が役立つ。オーナー情報や入居者情報を基礎データとして、家賃管理や修繕管理に横断的に活用できるため、業務の効率化や顧客対応の品質向上へとつなげられる点が強みだ。
導入企業数は約4800社。管理戸数3000戸以下の管理会社の利用が多いが、機能の拡充とともに5000戸以上の管理会社からも選択される機会が増えた。12年1月には賃貸革命のクラウド版の提供を開始しており、遠隔からのシステム利用や災害対策を重視する管理会社から堅調な引き合いを得ている。
利用料金は、オンプレミス版、クラウド版ともに月額1万7000円から(管理戸数に応じて料金変動、クラウド版は環境費用が別途必要)。20年7月には、初期費用無料で月額7000円から利用できる「スモールスタートプラン」も展開している(料金はいずれも税別)。管理戸数100戸以下で、仲介や売買を主軸事業とする管理会社が対象。4月末時点で94社が利用する。
選べるオプション充実 管理業務負担を軽減
標準機能のほか、業務に合わせて利用を検討できるオプション機能も充実している。
オーナーや入居者とのコミュニケーションアプリとなる「くらさぽコネクト」、巡回先から清掃や点検結果を記録・報告できる「巡回管理オプション」、入金・送金情報を会計ソフトに取り込んで一元管理できる「会計連動オプション」などだ。
最近では、賃貸革命に登録している各種データを自動で集計・分析し、経営分析レポートを作成する「経営分析オプション」をリリースした。データを根拠にした営業戦略が立てられ、グラフや表を使ったわかりやすいレポート資料を提出できるようになる。
そのほか、空室の通電手続きを簡易化する「空室プランでんき自動連携」、月極駐車場の募集・契約・更新から賃料回収、オーナーへの送金までをオンラインで完結できる「オンライン駐車場連携」などのオプションも、外部企業との連携により提供している。
日本情報クリエイトは、入居者募集から管理、ステークホルダーとの連携までカバーする機能をそろえることで、不動産会社のDX化を支援する。
いえらぶGROUP、1万2000社で導入実績 クラウド型基幹システム
オールインワンで賃貸・売買対応
いえらぶGROUP(東京都新宿区)は、12年1月からクラウド型基幹システム「いえらぶCLOUD(クラウド)」を提供している。
不動産会社が業務のDX化を目的にさまざまなシステムを導入した結果、かえって業務が非効率になってしまったという声はよく聞かれる。いえらぶCLOUDは、賃貸仲介や管理だけでなく売買にも対応した不動産業務専用の基幹システムとして、1万2000社以上の不動産会社で導入されている。すべての業務を行うことができるため、他社のシステムを導入・連結する必要がない。
例えば、管理会社が仲介会社に空室物件の客付けを依頼するリーシング業務では、21年9月にリリースした基本利用料無料の事業者間流通サイト「いえらぶBB(ビービー)」を活用する。
いえらぶCLOUD上で客付け可能な空室として登録すると、リアルタイムでいえらぶBB上に反映される。仲介会社は空室確認から内見予約、ウェブ申し込み、契約までを一気通貫で行うことができる。管理会社300社以上、仲介会社4万社以上で利用され、5月時点で取り込み可能な物件情報は33万件。自社のホームページやほかのポータルサイトなどへ掲載することも可能だ。
電子契約サービス開始 他社システムとも連携可
契約の電子化を見据え、21年8月から不動産会社向け電子契約サービス「いえらぶサイン」の提供も開始した。サービス開始当初は、電子契約が解禁になる前であったため、賃貸借契約の更新や駐車場の契約などで利用されてきた。
単体でも利用が可能でドキュサイン・ジャパン(東京都港区)や弁護士ドットコム(同)、GMO(ジーエムオー)グローバルサイン・ホールディングス(東京都渋谷区)が提供する電子契約サービスとも連携している。他社の基幹システムとの連携や不動産業務に沿ったシステム設計が強み。電子契約の有効性を担保するタイムスタンプや電子署名のほか、本人確認のための2要素認証にも対応済みだ。5月18日の電子契約解禁を受け、IT重要事項説明とともに契約の完全オンライン化を実現するツールとして、さらなる利用が見込まれる。
いえらぶCLOUDの導入費用は27万5000円から、月額利用料は5万5000円からとなっている。いえらぶサインは導入費用が11万円、月額利用料は1万650円、1契約につき220円(いずれも税込み)がかかる。
アセットコミュニケーションズ、54種の建物管理業務を用意 ECサイトから発注・管理まで対応
システム利用料不要 進捗・完工日を一覧化
賃貸管理会社の仕事のうち、建物自体の管理に関する業務は幅が広く、手間や時間も大きくかかる。さまざまな協力事業者と連携し、清掃や巡回などの日常業務から突発的に発生するトラブル対応まで、多岐にわたる業務をカバーする必要がある。
不動産業界向けクラウドシステムの開発・販売を行うアセットコミュニケーションズ(東京都中央区)では、管理会社が行う建物管理業務を効率化させるクラウドサービス「BM(ビーエム)クラウド」を提供している。
全54種の業務から、依頼したい項目を選びオンライン上で発注するインターネットショップサービスだ。日常清掃や定期巡回、電球交換などの定常業務から消防点検といった建物管理業務、緊急駆け付けサービスまで豊富な商材をそろえている。発注方法は、専用の電子商取引(EC)サイトから業務を選び物件情報を入力するだけ。物件の場所や希望作業時間帯に合わせて見積もりが作成され、金額を確認して発注の可否を判断する。システム利用料は発生せず、費用は各作業にかかる実費のみとなる。
発注した業務の進捗(しんちょく)状況はシステム上で確認でき、完工日を一覧化して管理するカレンダー機能もある。業務によっては作業員がどこにいるかを、全地球測位システム(GPS)と連携してマップ上でリアルタイムに閲覧する機能も搭載している。
雑務をアウトソーシング 業務効率化を促進
BMクラウドを通して登録された受発注データや作業報告書は、同社の建物管理システム「AssetApps(アセットアップス)」に共有できる。財務会計や入出金管理から物件管理、各種工事の報告機能まで100種の機能を備えており、必要な機能を取捨選択し、利用する会社やオーナーごとにカスタマイズ可能だ。
月額利用料は、1アカウントまでは無料。2~5アカウントは5500円、6~50アカウントは3万3000円、51~100アカウントが5万5000円(いずれも税込み)だ。5月末時点で1400アカウントの利用があり、管理している物件棟数は1万棟に上る。
BMクラウドとAssetAppsを併せて活用することで、業務のアウトソーシングが進む。発注・報告管理をシステム上で行うことができるようになるため、ペーパーレス化による業務効率化が実現できる。今まで担当者が直接現地へ向かい対応していた電球交換や残置物の撤去などの雑務をBMクラウドから発注すると、その分の手間と時間を営業活動など、よりクリエーティブな業務に充てられる。
BMクラウドで発注できる商材は各社のニーズに合わせてカスタマイズすることも可能だ。例えば、宅配ボックスなどの住宅設備の発注・設置工事を商品化した場合、物件の付加価値を上げるための相談をオーナーから受けた際に新しい設備の導入に素早く着手できる。
近藤統嗣社長は「どの物件でどの業務を発注したのか、すべてのデータがシステム上に蓄積される。そのため各作業にかかるコストやニーズの高い業務の傾向などを一目で把握できるようになる。物件管理業務を可視化することで、不動産会社が抱える課題の解決に貢献したい」と話す。
Bambooboy、低価格かつ即日稼働を実現 簡単操作で導入障壁低く
充実した基本機能搭載 月額2980円から提供
Bambooboy(バンブーボーイ:東京都武蔵野市)は、15年にクラウド型賃貸管理システム「ReDocS(リドックス)」の提供を開始した。5月末時点で約1000社が利用している。
家賃の入金管理や入居者管理、契約書をはじめ必要書類の作成など、さまざまな賃貸管理業務を行うことができる。不要な表示や機能をなくし、誰でも直感的に操作ができるデザインを意識。月額2980円(税別)から利用できるリーズナブルな料金体系も特徴だ。システムの導入対象は、家賃管理を「エクセル」で行っている管理会社や賃貸管理業務を効率化させたい不動産会社である。
機能は主に3つ。一つ目は入金管理機能。家賃の入金管理や未納者の確認などは、毎月欠かせない作業であり時間がかかる。ReDocSでは、登録した入金情報がシステム内の「支払い状況一覧」に自動で反映される。有料オプションとなるインターネットバンキングと連動した「自動消し込み機能」も便利だ。資産管理サービスを手がけるマネーツリー(東京都港区)が開発・運営する金融データプラットフォーム「Moneytree LINK(マネーツリーリンク)」と連携し、各金融口座の明細データを取得、システム内の契約情報と連動させ家賃の消し込み作業を自動化する。
二つ目は契約書などの「書類作成機能」。契約書や重要事項説明書、オーナーへの精算書や報告書など、管理会社が日々作成している賃貸管理業務に関する書類がワンクリックで作成可能で入力の手間がかからず、ミスも防げる。オプションとして自社で使用している書類のひな型を登録し利用することができる。
三つ目は契約管理や建物管理の機能。契約者情報の確認や建物の工事履歴など、確認が必要な際に書庫から書類を探す必用がない。システムに情報を入力しておけば、部屋ごとの契約者情報が一目でわかる。契約者情報から、更新が近い入居者の抽出も可能だ。クレームや工事履歴の確認も物件にひも付けることができる。画像や過去の契約書などもPDFデータとして保存することが可能であるため、過去に扱った書類も管理画面から閲覧でき、担当者が不在の際や外出先でも契約者情報や過去の履歴などを確認しながら対応することができる。
導入費用は4万9800円。部屋や駐車場など100区画まで登録できる「ライトプラン」は月額2980円、「ミドルプラン」は500区画まで登録可能で月額6980円、「アドバンスプラン」は1000区画登録可能で1万2480円(いずれも税別)で利用できる。1000区画以上登録する場合は個別に見積もりが必要。30日間無料の「無料トライアル」も用意している。システム利用時に用意するものはメールアドレスのみで、最短で当日から利用が可能だ。
他社サービスと連携 業務効率向上に寄与
4月からは、イタンジ(東京都港区)が運営する「申込受付くん」とのAPI連携を行っている。申込受付くんを経由して申し込みが入った場合、ReDocSに顧客情報データをリアルタイムで反映。申込時に入力した情報を再入力する手間を省くことができる。
髙田圭佑社長は「リーズナブルな料金だけではなく、豊富な機能や使いやすさも評価していただき、導入した企業の95%が継続利用している。不動産会社のデジタル化や、ペーパーレス化、業務効率化につながるように、今後も機能を充実させたい」と語る。
東計電算、入出金情報を自動仕分け 各社の会計システムに連動
柔軟にカスタマイズ API連携にも対応
製造、流通、住宅関連など、業種別に特化したシステム開発を行う東計電算(神奈川県川崎市)は、賃貸管理システム「J-Rent(ジェイレント)」を、05年より開発・販売している。物件管理や賃貸契約・更新・解約・退去時の精算、原状回復工事の受発注などを基本機能として備えている。管理戸数3000戸以上の管理会社を中心に、累計約70社で利用されている。
特徴の一つが、カスタマイズにより管理会社がすでに利用している会計システムと連動が可能である点。入居者からの家賃の振り込み、口座振替、家賃債務保証会社などからの入金やオーナーへの送金、工事会社への支払いなどを自動で仕分ける。企業が利用している会計・経理システムと連動させることで適正化された経理処理を行うことが可能だ。
標準搭載機能として、募集業務や設備点検、クレーム管理など豊富な機能を備えており、賃貸管理におけるさまざまな業務を導入企業の要望に応じてカスタマイズできる。APIの開発を進めており、各社が提供する業務支援システムと柔軟に連携できるようにしている。
導入費用や月額費用は会社の規模やカスタマイズの内容によって変動する。データ入力などの導入支援サービスもオプションで付けられる。自社でデータセンターを所有しており、24時間体制の運用監視や災害などへの安全対策を実施している。
今後は不動産業界における法令変更への対応や、より多くの会社とAPI連携ができるように開発を進める。賃貸管理会社にとってかゆいところに手が届くようなサービスを目指していく。
(2022年6月13日12~17面に掲載)