金利上昇や工事費高騰を背景に、不動産業界では収益性の維持が大きな課題となっている。THIRD(東京都新宿区)は建物に設置したセンサーやAIを活用し、運営や設備投資にかかるコストの最適化を図っていく。約4万棟の建物データを活用した同社の井上惇社長が掲げるのは「建物の自動運転」だ。
ビッグデータ生かし収益性向上へ
重要性増す、運営・工事コスト削減
THIRDは、AIの活用によって建物管理の在り方が大きく変わるとみている。
不動産投資市場では現在、金利上昇と工事費・資材費の高騰が大きな課題となっている。民間調査によると、賃料や不動産価格はピーク圏にあるとの投資家の見方も多い。今後は賃料上昇による収益拡大が見込みにくくなる可能性があるという。
そうした中で重要性を増しているのが、不動産の収益性を維持・向上するための運営コストの最適化だ。
井上社長は「市場がピークアウトし賃料の伸び悩みが懸念される中で、金利上昇とコスト高騰という二大リスクが同時に迫っている。この状況下で不動産価値を維持するには、ランニングコストや工事費の削減を含め、いかに具体的なヘッジ手法の選択肢を持てるかが重要」と語る。これまでの建物管理は、決められたスケジュールに沿って人が現地へ赴き、点検や修繕を行う労働集約型のビジネスだった。同社は、テクノロジーの進化によって、その構造自体が変わり始めているとみる。
井上社長は「人が動く労働集約型から、情報を集約するビジネスへの転換が始まっている。今後は、人の勘や経験による管理から、設備機器の個別のフィジカルデータをAIが解析して劣化診断などを行う『データサイエンス』の領域へと発展していく」と説明する。
現場で得られるデータを活用することで、建物管理は単なる維持管理から経営判断を支援する役割へと進化するという。
「現場のオペレーションを握る管理会社が、そのデータを使って不動産のNOI(純営業利益)改善に直接寄与できるようになることこそが、これからの差別化。現場の状況が金融資産価値にどう直結するかをAIが可視化する。どの工事を優先し、どこに投資すべきかも、オーナーに対して科学的かつ合理的に提案・判断できるようになる





