廃業店舗をリノべ、地域活性へ寄与【シャッター街のカフェに月3000人が来訪】

三角形,のしろ家守舎,楽市白河

物件紹介|2022年09月26日

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「寿百家店」内の古本店区画

 シャッター街となった商店街を再生し、地元の再興に貢献する取り組みが出てきている。築古店舗の再生や賃貸住宅の建設により、人の集まる拠点としての姿を取り戻す。ただ、持続的なまちづくりには、不動産運営事業者や地域住民の当時者意識、帰属意識も重要になる。

ミニ店舗に起業家

 11店舗中9店舗が閉店し夜間の人通りはほぼ0人となっていた、JR鹿児島本線黒崎駅の駅前商店街。その一画、寿通り商店街では、今や日中には月約2400人が来訪する商店街に息を吹き返した。

 その中の「寿百家店」は、元店舗の3軒の空き物件を11区画に細分化。賃料を月額3万円と低額にし、起業家を呼び込みやすくしたことで人気を博す。ネイルサロンやヘッドスパ店、無人の古本店などが入居。店主らがSNSなどで発信したことで来店者が増加した。

寿百家店内の総菜カフェの写真

寿百家店内の総菜カフェ。イートインスペースもありアルコールも提供する

 ほかにも同商店街では月1回、週末にお試しで出店できる「寿マーケット」を開催。毎回5~6店舗が軒を連ねている。

 にぎわい創出の立役者は、PR企画会社、三角形(福岡県北九州市)の福岡佐知子社長だ。

 2015年ごろには、店主らの高齢化によりシャッター街となっていた。商店街振興組合から福岡代表に依頼があったことから再生プロジェクトを開始。まずは、汚い落書きが描かれたシャッターを、商店街の関係者や地元の子どもたちと共にパステルカラーにペインティングした。「ユニークさを出すことで商店街のファンを増やし、地元民の当事者意識を高めたかった」(福岡代表)

「トム・ソーヤ大作戦」の様子

「トム・ソーヤ大作戦」と名付け、寿通り商店街でシャッターを塗るイベントを実施

 21年4月には寿百家店の2階にシェアハウスをオープン。全4室で、起業や街づくりに関心のある20代の若者が入居している。

寿百家店の2階シェアハウスの写真

寿百家店の2階部分をシェアハウスにリノベ。商店街内に住宅をつくったことで、夜でも明かりが灯る

元酒販店をリノベ

 東北を代表するシャッター街といわれる、秋田県能代市のJR五能線能代駅前にある畠町商店街。この商店街の再生を目指すのが、のしろ家守舎(秋田県能代市)だ。

 能代駅前にある、廃業した元酒販店「丸彦商店」を同社で借り上げ、21年4月にリノベーション。「マルヒコビルヂング」に再生。1階を子どもの遊び場やカフェ、2階をコワーキングスペース、地下1階はDIYを学ぶスペースにした。

マルヒコビルヂング2階のコワーキングスペースの写真

マルヒコビルヂング2階のコワーキングスペース。林業が発展した能代市らしく木質感を出した

 同社の湊哲一代表社員はUターンした家具職人だ。帰郷後、子どもの遊び場がなく、寂れてしまった商店街に危機感を覚え、まちづくりに関わり始めたという。

マルヒコビルヂングBefore写真

マルヒコビルヂングBefore

マルヒコビルヂングAfter写真

マルヒコビルヂングAfter

 1階のカフェと遊び場スペースには、1日平均100人、月の累計で3000人ほどが来訪しており、にぎわいを創出。同物件の再生が軌道に乗ったことで、近隣で廃業したままになっている店舗のオーナーが、所有物件を「貸し出してもいい」という考え方に変わってきているという。「1店舗だけでは地域の再生はできない。街の人を巻き込まないといけない」(湊代表社員)

マルヒコビルヂング1階のカフェスペースの写真

マルヒコビルヂング1階のカフェスペース

県外から入居者獲得

 「賃貸マンションの建設をきっかけとして、県外からの入居者獲得に至った」と話すのは、福島県、白河市のまちづくり会社楽市白河(福島県白河市)の古川直文取締役だ。13年に、シャッター街となっていた旧市街地に賃貸マンションを建設。現在では2棟計50戸を運営。間取りは1LDK~2LDK。入居者はファミリー層がメインで、満室の状態が続く。近隣企業の勤務者や、地方公務員などの転勤族が中心だ。

「レジデンス楽市Ⅰ」の外観写真

楽市白河が手がけた初の物件「レジデンス楽市Ⅰ」。総戸数20戸。2013年8月竣工だったため、満室までは7カ月を要した。だがその後9年間、満室の状態が続く

 人気の理由は、設備が整っていることだ。物件にオートロックやカラーモニター付きインターホンなどを導入。同市は城下町であるため建築物の高さに制限があり、5階以上の建物が建てられない。そのため、民間事業者にとって戸数を増やせないマンションタイプの建築はリスクが高く、進出がなかった。

 JR東北新幹線の新白河駅が開業して以降、当時市街地であったJR東北本線白河駅周辺は徐々に衰退していった。白河駅前の商店街には空き店舗が目立ち、スーパーも撤退。旧市街地の再興を目的に、同社を設立した。公的資金は導入されているものの、運営はあくまで民間事業者だ。古川取締役は地元商店街の元菓子店の専務で、同社の経営層も地元商店街や地元企業の後継者が務める。

 古川取締役は「肌感覚ではあるが、以前より人通りは増えている」と語った。

(2022年9月26日1面に掲載)

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