【ホームステージング活用事例】半年間空室が2週間で成約
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商品|2022年11月10日
空室を演出する方法として、部屋に家具や小物を配置し入居後の生活をイメージしやすくさせるホームステージングが注目されている。実際に部屋に家具を置くだけでなく、空室写真に家具画像を組み合わせるバーチャルホームステージングという手法もある。管理会社がどのようにホームステージングを取り入れているのか、5社に話を聞いた。
自社で運搬・設置 内見当日に成約も
山梨県甲府市を中心に2500戸の賃貸住宅を管理するけやき総合管理(山梨県甲府市)では、2019年より、年間10~12件の物件でホームステージングを取り入れている。
半年以上の長期間空室の物件を対象に、入居促進策として実施。入居ターゲットの選定から家具や小物選び、運搬と設置、撤去まですべて同社の社員が担う。ホームステージングを行う居室の1室あたりの予算は、単身者向けのワンルームで3万5000円、複数人での入居を想定した2LDK以上の場合は5万~6万円で設定。家賃1カ月分が目安だ。一度使った家具は、入居希望者から欲しいという希望がない限り、基本的に倉庫で保管している。
ホームステージングを実施した部屋は、成約までの期間が平均で約2週間だ。1年半空室だった物件が、内見当日に成約した事例もある。日当たりがいい物件には寒色系、悪い物件には暖色系の家具を配置するなど、部屋の特徴に合わせたインテリアの使用を心がけている。
ホームステージングを導入したきっかけは、19年から始めた地元の山梨学院大学と共同で取り組む「山梨学院大学ホームステージングチャレンジ」というゼミ授業の企画だ。学生の新鮮な視点が入ることで新たな空室の解決策に気付くこともある。
ホームステージングを行っているスペシャリストチームの大神田貴氏は「コンセプト決めからインテリア選びまですべて当社で行うことで、社員の管理物件への理解が深まる。そのため、責任を持って入居付がけできるので、オーナーからの信頼の獲得にもつながっている」と話す。
ワンルームに設置 反響率30%向上
東京都23区を中心に約4000戸を管理するスペース(東京都中野区)は、2月よりホームステージングを行っている。家具は仲介管理事業を手がけるハウジングロビー(長崎市)が企画や開発・提供するプラスチック製の段ボール家具「モデル~ム」を活用する。
きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大により、管理物件における学生や外国人の入居者数が減ったことだった。スペースが管理する東京都23区のワンルームや、狭小かつ3点ユニットの物件を中心に長期空室が増え、客付けに苦労した。対策として、ポータルサイトにホームステージングを手がけた内観写真を掲載。ほかの物件との差別化につながり、反響率が高まった。
モデル~ムは、ベッドやテーブル、椅子を模したディスプレイ用のたためる家具だ。クッションやカーペットと合わせてホームステージングを行う。1Kから1LDK向け、1LDKから2LDK向けの物件を想定した家具がそれぞれ一式として販売されている。
スペースには、一般社団法人日本ホームステージング協会(東京都江東区)が認定するホームステージャー1級の資格を持つ社員が在籍。空室物件の演出を手がけている。空室期間が3カ月以上となる物件を対象に、これまで約20戸にモデル~ムを設置。設置前と比べ、反響率を平均約30%高めることに成功した。営業本部の高山怜士本部長は「今後もホームステージングの効果について検証し、より効果的な手法の検討を行っていく」と語る。
豊富な家具で演出 高賃料物件に導入
愛知県を中心に約14万戸の賃貸物件の管理を行う積水ハウス不動産中部(愛知県名古屋市)では、20年12月ごろよりカラーアンドデコ(東京都港区)が提供する「バーチャルインテリア」を活用している。空室写真にバーチャルの家具画像を合わせるサービスだ。現在37営業所中21営業所で導入。これまでの実績として、月に約30戸の物件にバーチャルホームステージングを実施している。
入居付けに苦戦している部屋のアピールポイントを増やすために導入したことがきっかけだ。ほかにも、新築物件やリノベーション物件など、比較的賃料を高めに設定している部屋で、より物件の質の高さを印象付けるために取り入れている。導入前はまったく引き合いのなかった物件もバーチャルホームステージングを行ったことで、ポータルサイト上で入居希望者の目に入る機会が増え、反響につながっているという。
同サービスに決めた理由はコーディネートの豊富さと画像技術の高さである。カラーアンドデコが持っている家具データは5万点以上。物件に合ったインテリアをプロのコーディネーターが選定し、空室画像に配置することで魅力的な物件を演出できる。実売している家具の画像を使い、実物サイズで空室写真に配置しているため、実際の部屋の様子を写真から想像しやすいことも重宝している。
7月からは同社の新サービス「カラデコファスト」も活用。あらかじめカラーアンドデコが用意しているインテリアパッケージの中から物件に合ったコーディネートを選び、空室写真にバーチャルホームステージングを行うサービスだ。空室画像1枚につき2178円(税込み)から発注でき、発注から最短3時間で納品可能な点が特徴となる。
賃貸企画部賃貸企画室の東野和俊室長は「カラーアンドデコは、サービスの活用方法だけでなく、効果的な空室写真の撮り方などのアドバイスをくれる。入居希望者にとって、質の高い住宅を選べるツールとして、また新しい生活をイメージしやすくできるサービスとして、これからも活用したい」と話す。
40日以内に成約 2営業日で提供
4万8000戸の賃貸物件を管理するアレップス(東京都千代田区)では、3月よりBoxBrownie.com(ボックスブラウニードットコム:オーストラリア・クイーンズランド州)の提供するVR(仮想現実)ホームステージングサービス「バーチャルステージング」を導入している。2カ月以上空室となっている物件を対象に、月間でおよそ80室に実施する。
もともとは同社社員が空室に家具を配置するホームステージングを、入居促進策として行っていた。家具の設置・運搬にかかる時間や労力の問題があり月に数件しかできなかったため、手軽に多くの物件で実施できる同サービスを取り入れることにした。導入した物件では、40日以内に入居が決まっている。
同サービスの導入理由は、コストと提供スピードだ。バーチャルステージングは、空室写真に家具の3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)画像を配置し、入居希望者に生活空間を想起させるサービスである。1アングルにつき料金は3800円(税込み)から。発注方法は、複数のコーディネートプランから物件のイメージに合うものを選定し、空室写真をアップロードするだけ。完成までの期間は2営業日以内となっているが、早い場合は6時間ほどで提供される。
アレップスでは、オーナーに提供するリフォームプラン内のサービスとしてもバーチャルステージングを取り入れている。ただきれいにリフォームするだけでなく、その部屋でどのように住むか、というところまで想像させることで、住みたくなる物件をつくることができる。
賃貸管理部PM事業部の島田慎一郎チーフマネージャーは「アクセスの良い都心にあっても決まりづらい物件が増えてきている。家賃を減額するのではなく、物件自体の価値を高めたうえで入居希望者から選ばれる販促活動を今後も行っていく」と話す。
実物とCGを併用 仲介会社にも好評
東京都内を中心に9月末時点で1万3031戸を管理する東京建物不動産販売(東京都中央区)は、数年前から空室のホームステージングに取り組んでいる。生活空間を演出できることから、実物の家具を配置するホームステージングに取り組み、一定の効果を感じていた。しかし、家具の保有コストと運搬の手間がかかっていたため、その解決策として、2年前よりバーチャルホームステージングを取り入れた。
バーチャルホームステージングには、スペースリー(東京都渋谷区)が提供するVRコンテンツ制作ソフト「スペースリー」を19年2月に導入し、利用している。導入当初は、360度パノラマ画像を活用して物件情報を充実させることが目的だったが、空室の入居促進策の一環としてCG家具を配置できる機能を使い始めた。
この機能はインテリアコーディネーター監修の下、空室をCGの家具や小物で装飾してVR画像を作成できるものだ。空室期間が4カ月になる物件にバーチャルホームステージングを実施することが多い。実際の入居促進効果は測定できていないが、東京建物不動産販売の賃貸営業第1部・塩川克明担当部長は「物件のイメージが伝わりやすくなるため、仲介会社から入居希望者に積極的に案内してもらっている」と話す。コロナ下においても現地での内見を希望する顧客が多いことから、実物の家具を空室に配置する取り組みも継続して行っている。
(2022年11月14日8・9面に掲載)