家主の悩みの一つとして挙げられる、部屋に染み付いた臭い。清掃事業者に、消臭・脱臭の方法や、使用する薬剤、器材について聞いた。
薬剤・器材用い徹底清掃
臭いの原因たどる 特殊塗装も必要
物件において強烈な汚れや臭気が発生した際、その清掃をするのが特殊清掃事業者だ。特に、孤独死や自殺などがあった後に発見が遅れ、遺体が腐敗してしまった場合などがこのケースにあたる。
これまでに約1800件の特殊清掃と1万5000件超の遺品整理を行ってきたメモリーズ(大阪府堺市)の横尾将臣社長は、特殊清掃事業者の消臭作業についてこう説明する。
「特殊清掃では人の体から出た体液、油を洗浄するため、まず強アルカリ性の洗剤を使う。そのほかに、セスキ炭酸ソーダやクエン酸も併用する。器材でいえば、オゾン発生器はオゾン発生濃度が高い業務用のものを用いている」
特殊清掃における消臭作業の割合は、基本的に洗浄が7割、その後の処理が3割程度と語る横尾社長。この3割が難しいとのことで、遺体周辺をきれいに洗浄したとしても、どこかに臭いが残ってしまうことが多いという。
「遺体発見が遅れて時間がたってしまうと、遺体があったところだけでなく、周辺のさまざまなものが腐ったり、傷んだりして臭いの発生源になる。洗浄だけで臭いが消えなかったら、どこに原因があるのか仮説を立て、一つ一つ、つぶしていく。そこに経験やノウハウが必要になってくる」(横尾社長)
横尾社長は、臭いが残りやすい部分のうち、見落としやすいところとして、玄関のドアの裏の塗装とふすまの部分の敷居を挙げた。また、遺体から出た体液がコンクリートの躯体にまで染み込んでいたり、床と壁の間に入り込んで裏に回っていたりする場合は、清掃が困難で臭いが残りやすい。その際は床を剥がして壁を削り、周辺に独自のコーティングを施して対応するそうだ。
特殊清掃が必要になるケースを想定すると、「高齢者が住む住居の床はフローリングは望ましくない」と横尾社長は語る。これは奥まで染み込みやすく、貼り替え時のコストが高くなるためで、より交換が容易なクッションフロアを使うほうがいいということだ。
脱臭器は必携器材 用途に合わせて活用
横尾社長が消臭・脱臭用のアイテムとして挙げていたのが、高濃度のオゾンを発生させ、臭いのもととなる細菌を殺して消臭するオゾン脱臭器だ。
オゾン脱臭器にはさまざまな機種があり、価格や用途に違いがある。安い価格帯のものはオゾン発生量が少ないが、そのような機種でも長い時間稼働させっ放しにすればある程度の脱臭効果が見込める。一方で、オゾン発生量が多い無人環境用のものは、使用中の部屋に人やペットが立ち入らないように注意したい。
横尾社長は効果的な使用法として「使用対象が決まっている場合、例えばカビが発生した壁に使うときなどは、サーキュレーターを併用して、オゾン脱臭器から発生されたオゾンが対象箇所に直接吹きかかるように設置するといいだろう。程度にもよるが、オゾンの濃度が高い機種なら、2~3時間程度の使用でも効果がある」と語った。
Check!
部屋についた臭いの原因の例
・部屋に残った体臭や生活臭
・排水管から上がってくる臭気
・ペットのふん尿の臭い
市販の消臭用の薬剤について
アルカリ性:カセイソーダ(水酸化ナトリウム)など。油や皮脂などの酸性の汚れを除去する
酸性:クエン酸など。水あかやたばこのヤニなどのアルカリ性の汚れを除去する
塩素系:安定化二酸化塩素や次亜塩素酸系など。殺菌効果、漂白効果に優れる
薬剤同士の混合は絶対にNG
・塩素系の薬剤と酸性の薬剤を混ぜると有毒ガスが発生
→直接の混合だけでなく、連続して使用する際も換気をして1日以上時間をおいてから使う
使用環境と注意点
・有人環境用
オゾン発生量を抑え、人体への影響を最低限にとどめたタイプ。脱臭効果は高くないが、人がいる部屋で常時使用可能
・無人環境用
オゾン発生量が多い業務用の機種。オゾンは生物の粘膜に強い刺激を与えるため、使用中の部屋には立ち入らず、使用後も換気を行うなどの注意が必要
(2023年3月13日9面に掲載)