EV充電スタンドの設置にはどんなメリットがあるの? サービス各社の運営手法を紹介

商品|2023年03月08日

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Q.賃貸マンションを新築する際に、敷地内にEV充電スタンドを設置したいと思っています。入居者のみが利用できることを想定していますが、実際にどのような運営方法があるのか知りたいです。どのように充電料金を支払うのか、事前予約や充電完了の通知ができる仕組み があるのか。すでにEV充電スタンドを設置している事例を詳しく知りたいです。

 

 脱炭素社会に向けて、電気自動車(EV車)の普及が世界的に進んでいます。日本では現状ガソリン車が主流ですが、日本の自動車メーカー各社は、EV車の強化を図っています。近い将来、EV車は広がっていくでしょう。そんな中で、EV充電スタンドを賃貸物件の駐車場に設置する動きが出ています。今回は、EV充電スタンドを供給する各社の運営手法と、実際に所有物件にEV充電スタンドを設置したオーナーに取材しました。

【Terra Motors】

集合住宅用EV充電事業 「Terra Charge」

20230308(2)_EV充電スタンド_画像(1).jpg

Terra Chargeの設置イメージ

・Terra MotorsのEV充電スタンドの運営方法
 EV充電器を設置した後は、アプリで管理します。質問者されている方は、利用者を入居者で想定されていますので、アプリ上で利用者の制限をかけることが可能です。
 管理者は、充電器の利用予定がある入居者に対し「マイ充電器」の専用コードを発行します。入居者は、事前に氏名や電話番号、住所、クレジットカードなどを登録していただきます。登録が完了した時点で、EV充電器の使用が可能になる仕組みです。

 では、もし、知人が来た時にEV充電スタンドを使用したいとなった場合はどうするか。
その場合は、入居者がご自身の「マイ充電器」コードを共有することで、一時的に使用を許可することが可能です。
 事前予約は、現状できません。たとえ時間で予約をしていても、前に使用していた人が充電器を繋ぎっぱなしでいた場合に、予約時間に利用することができないからです。
 充電完了時には、終了10分前にアプリ上で通知が来ます。

20230308(2)_EV充電スタンド_画像(2).png

TERRA CHARGEアプリのイメージ

 EV充電で使用した電気料金は、利用者が負担します。地域により異なりますが、3kw/hで1時間充電すると200円という料金設定が基本となっています(2023年2月時点)。利用者は、登録したクレジットカードから、利用した分の料金が引き落とされます。

 集合住宅の共用電源からEV充電の配線を引くため、一旦はオーナーに電気料金の請求がいきます。そのため、EV充電に利用した分の電力料金も、オーナーが立て替えます。東京電力パートナーズが発表している平均燃料価格に基づき電気料金を算定し、年1回、Terra Motorsからオーナーに使用電力相当額を支払います。

 本体はTerra Motorsの所有となります。そのため、破損や事故発生時は、利用者に明らかな過失がない場合は、Terra Motorsが修理し、責任を負います。
 
 現時点では、EV 充電スタンドを導入してもオーナーや管理会社の新たな収益とはなりません。物件の付加価値として訴求できるポイントです。
 
 集合住宅に導入する際は、Terra Motorsが各戸にお知らせを送っています。質問などについては、Terra Motors側に連絡が行くようにコールセンターを設けています。
 Terra Motorsは、2022年4月からEV充電機供給事業を開始しました。政府の補助金を活用し、実質無料でEV設備を導入できることを訴求ポイントに設置台数を増やしています。23年2月末時点で、約2000基を受注しており、全国で展開しています。補助金の申請が無事下りた後は約1カ月程度で設置が可能です。補助金を申請する時期によっては、審査に時間がかかります。

【日本宅配システム】

集合住宅用EV充電スタンド 
「EV充電システム i-CHARGER30」

6d36dc20e2cad9aa66647b956204dbcd.jpg駐車場に並ぶ「EV充電システム i-CHARGER30」の充電器


・日本宅配システムのEV充電スタンドの運営方法
 EV充電スタンドの設置には、日本宅配システムの主力商品である、宅配ボックスの設置が必須となります。日本宅配システムの宅配ボックスは電気式のため、宅配ボックスの電気エネルギーとEV充電器を連動させる仕組みです。そのため、現状は宅配ボックスとEV充電スタンドのセットでの設置を推奨しています。

・電気料金の支払い運営について 
 日本宅配システムが運営するシステム「i-CHARGER管理システム」を使用します。i-CHARGER管理システムでは、各物件の入居者毎にアカウントがあり、EV充電スタンドの予約ができます。利用料金については、基本的にはシステムを管理する管理会社が決定します。これは、日本宅配システムならではの手法です。料金を管理会社が決定することで、オーナーや管理管理会社の収益とすることも可能です。日本宅配システムは設備導入がポイントのため、導入後の電気料金については、管理会社が調整します。

・EV充電スタンドのリスク・課題 
 i-CHARGER30では、開扉錠によってプラグの挿入口が管理されているので、盗難や感電といったリスクはありません。課題は、50戸のマンションに対して、数台のEV充電器といったように、戸数に対してEV充電スタンドの供給台数が多くないことです。EV車を使用する入居者は、平日の晩に充電することが一般的です。1回あたりの充電時間は2~4時間。こうなると、20時から充電を開始して、完了は24時。夜中12時にEV充電の駐車場から使用者が車を動かすことは稀です。つまり、使用時間が集中してしまう事例が発生します。こうした状況を解消するためには、EV充電スタンドを増やすことが上げられますが、コストや使用頻度を鑑みたところ、供給を安定させるにはもう少し時間がかかりそうです。

【エネチェンジ】

「EV充電エネチェンジ」

20230308(2)_EV充電スタンド_画像(3).jpg

EV充電スタンドの利用イメ ージ


・エネチェンジのEV充電器の運営方法
 Terra Motorsと同じく、工事後はアプリで管理します。入居者のみに限定したり、来客者やその他外部の方も利用可能にするなどの運用方法を選択可能です。
 利用者が支払う料金は、専用アプリを無料でダウンロードの上、クレジットカードで支払います。固定料金はなく、都度支払う形です。
 事前予約は行っておらず、アプリ上から充電器の利用状況(使用中か否か)を確認することは可能です。充電が完了した際はアプリ上で確認できます。利用者の利用料金は、設置している施設や利用している車種により、異なります。

 電気料金については、オーナーに還元があるプランと、ないプランがあります。
 還元のあるプランでは、設置費など、初期費用がかかります。金額は導入施設や台数により異なります。
 一方、還元のないプランの場合、初期費用はかからず、EV充電で使用した電気料金は、オーナー負担となっています。
 事業開始は21年12月~。全国で展開しています。2022年は、2500機の導入が決定しました。順次工事を進めているということです。



【EV充電スタンドを設置したオーナーの声】

20230308(2)_EV充電スタンド_画像(4).JPG

内山泰伸オーナー
浜松市在住 マンション8戸 アパート4戸 戸建て賃貸18棟を所有。
10年前からEV充電スタンドを導入しており、現在も各戸に1台設置している。

EV充電スタンドを取り付けた背景を教えてください。

 もともと、車に乗ることが趣味です。EV車にも、もちろん乗車経験があります。今後カーボンニュートラルが主流になる中で、EVシフトの動きも高まるだろうと考えています。EV充電スタンドの設置は当初、費用がかかると思っていましたが、新築時に充電器の導線設計を整えれば1台5000円ほどで導入できたことから、標準搭載するようになりました。

 20230308(2)_EV充電スタンド_画像(5).JPG

所有物件に取り付けたEV充電スタンド


どのようにEV充電スタンドを設置していますか?

 入居者専用の駐車場に、人数分のEV充電スタンドを設置しています。新築時に、あらかじめ分電盤から外部の駐車場付近に電源ケーブルを引っ張ってEV車専用コンセントを設置しています。こうすれば、100Vの外部コンセントを設置するコストと大きく変わることはありません。

入居者からの反響や、空室対策につながっている実感はありますか?

 残念ながら、現時点でEV車を保有して充電している実績はありません。賃貸住宅の入居者は今後、引っ越しする可能性があるので、次の住居でEV充電スタンドがあるかわからない。という理由から、入居者がなかなかEV車に手を出せない状況となっています。また、部屋探しをする際に主流となっている大手ポータルサイトにも「EV充電スタンド搭載」のチェックボックスはありません。まだまだ認知度が低いと感じています。ただ、今後EV車が普及するにつれて、周辺の物件との差別化に繋がるでしょう。

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 いかがでしたでしょうか。
 EV車の普及に合わせて、EV充電スタンドの需要もじわじわと伸びてくるでしょう。その中で、駐車場付きの賃貸物件にEV充電スタンドが設置されていると、他物件と比べて分かりやすい差別化になります。今回、取材したサービス提供企業を取ってみても、運営方法は様々です。比較した中で、ご自身にとって納得のいく形でEV充電スタンドを取り入れてみてはいかがでしょうか。ご質問いただきありがとうございました。


(記事執筆 編集部 柴田はるな デジタルメディア事業部 山本悠輔)

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