適格消費者団体が、三井ホームエステート(東京都千代田区)を相手に更新料と明け渡し遅延金の差し止めを求めていた裁判で、東京地方裁判所は7月5日、いずれの請求も棄却した。東京地裁で更新料が有効と判断されたのは初めて。
この裁判は2010年9月に適格消費者団体・NPO法人の消費者機構日本(東京都千代田区)が、三井ホームエステートに対し、2年ごとの契約更新時に発生する賃料1カ月分の更新料と、契約終了時に入居者が明け渡しを遅延した場合に入居者に支払いを求める2カ月分の賃料等の明け渡し遅延損害金が、消費者契約法に反するとして破棄を要求したもの。
東京地裁は更新時1カ月分の賃料に対して、賃貸借契約書に具体的に記載されており、賃貸人と入居者の間で明確な合意が成立していると判断。2年で1カ月分の更新料も高額すぎないとした。
明け渡し遅延損害金について原告は、「明け渡し遅延によって家主がこうむる損害は賃料のみ」と主張。これに対し、三井ホームエステートは、明け渡しが遅滞すれば「弁護士費用や執行費用等相当額の損害が生じるほか、新たな賃貸借契約や売買契約の履行ができない」と、損害は賃料のみではないとしていた。
東京地裁は、明け渡し遅延損害金について入居者が明け渡し義務を履行しなかった場合にのみ発生するもので不合理とは言えず、家主の損害の填補、明け渡し義務の履行を促進するという意味からも相応と判断した。
更新料裁判を多く手がける田中伸弁護士は「常識に合致した妥当な判決」とコメントした。