『糸魚川市駅北復興住宅』は、2016年12月22日に発生した糸魚川市駅北大火の「復興まちづくり計画」の一環として生まれた復興市営住宅だ。全18戸、準耐火木造3階建てで、災害時の避難通路を考慮し設計された。地元の木材を使用した地域に寄り添った注目物件だ。
エリアとの親和性を考慮した"小路"や"中庭"
『糸魚川市駅北復興住宅』は「復興まちづくりの象徴」をメーンコンセプトとして、自力再建の難しい人々のためにつくられた。外壁や柱、手すりに地元の木材を、集成材のラミナに糸魚川産のスギを使用。さらに新潟県内の集成材工場でパネル製作をするなど、地元の資材や人材を活用している。「地域の木材を使った準耐火木造の復興住宅モデルとして参考になればと思っています」。こう話すのは設計を担当したスタジオ・クハラ・ヤギ(東京都千代田区)の八木敦司社長だ。
南側に2階建て、北側に3階建ての2棟構成とした。南側棟と北側棟の間に『ナカニワ』、棟を南北に貫くように細い小路を再現した『コウジ』を設けた。さらに南側道路面にはこの地域にあった雁木を再現した『ガンギミチ』を採用。東側道路沿いには、北側に海、南側は山が楽しめる『ガンギデッキ』、そしてガンギデッキに上がれる『ポケットパーク』を設けた。それらすべて地域住民との交流の場であると同時に、住民の避難通路としての役割も担う。
建物内には、訪問診療所や約90㎡の市民も使える交流スペースがある。『コウジ』の壁面には、ワークショップで制作した、ルーバー端材のアートを飾っている。ワークショップは市民が訪れるきっかけづくりとして行ったという。
潮対策で設けたインナーバルコニーで明るい室内
海からの風が強いため、全住戸の玄関は『ナカニワ』側に設置。潮風対策として各棟の南側にインナーバルコニーを設けた。そのため北棟のインナーバルコニーはガラス引き戸の玄関横に位置する。また全住戸のリビングには越後杉合板が貼られ画びょうなどの使用も可能だ。