管理戸数約1300戸のエスアンドティ(埼玉県蕨市)は、バリューアップを図ったリノベーションが強みだ。原状回復工事のみを行っていたころと比べ、1件ごとの工事単価が上昇。比例して受け取る工事の仲介手数料も上がり、リフォーム工事の売り上げが約2倍に増加した。
同社の売上高(非開示)のうち、賃貸管理業が33%、自社所有物件の家賃収入が15%、リノベーションなどのコンサルティング料が13%を占める。従業員10人のうち、リフォーム・リノベーションなどの担当は3人だ。管理する物件は単身者向け、ファミリー向けでそれぞれ5割ずつだ。元請けとなり施工会社ら3社に分離発注を行っている。リノベーション事業をメーン事業とし、施工後に管理受託を受けることを条件として施工を承っている。
同社では2016年ごろから、入居者のニーズを取り入れたリノベーション提案に力を入れてきた。変更するのは間取りや内装デザインだ。
依頼を受ける物件のうち、築30~40年になる物件は全体の8割を占める。中には新築当時から住んでいる入居者もおり、専有部の間取りや内装がバージョンアップされないままになっている物件も多いという。そのため、退去が発生した際には必ずバリューアップを図ったリノベーション工事をオーナーに提案している。
例えば、築30年以上になる賃貸住宅の間取りは3DKや2DKが多い。「そういった物件は入居につながりにくい傾向がある」と大原亨専務は話す。そこで、入居付けのしやすい2LDKや1LDKに変更する。また内装デザインもコンセプト重視で行う。例えば、「北欧風」をイメージする場合は部屋全体を白を基調としたデザインにする。ブランディングの強化が、家賃を上げた上での入居付けにつながるという。
「北欧風」を意識してリノベーションした部屋の内装。ホワイトレンガのアクセントクロスを使用している
入居者トレンドを組み込んだ間取り変更や内装デザインを行うことで、入居率は97.2%から99.7%にアップした。
16年以前は原状回復工事のみを行っていたが、管理を受託していたオーナーから要望があり、バリューアップを兼ねたリノベーション工事の受注を開始。原状回復工事は1件当たりの施工費が20~30万円前後なのに対し、リノベーション工事は200~300万円ほど。施工費の数%を仲介手数料として受け取っているため、1件当たりの施工費が上昇したことで工事手数料だけで4000万円を売り上げる。
今後は会社事務所の内装をカフェ風に変更し、リノベーション企業としてのイメージ強化を図るという。
※本紙面において、管理会社とオーナーが工事契約を結ぶ場合は「元請け」、管理会社以外の工事会社とオーナーが工事契約を結ぶ場合は「あっせん」と記載しています。
(6月28日15面に掲載)
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