不動産評価ウェブサイト「TAS-MAP(タスマップ)」を運営するタス(東京都中央区)は、9月30日に「賃貸住宅市場レポート 首都圏版 関西圏・中京圏・福岡県版2021年9月」を発表した。発表された数字は、21年6月期のもの。空室率TVI(タス空室率インデックス:以下、TVI)は、同社独自の賃貸住宅の空室指数だ。民間住宅情報会社に公開された情報の空室戸数を募集建物の総戸数で割ったもので算出する。
募集期間は拡大傾向
今回は同レポートの中から東京23区にあるハイクラス賃貸住宅の市場動向を見ていく。
同社では、月額の賃料の1㎡単価が4000円以上で専有面積が40㎡以上のRC造・SRC造の物件をハイクラス賃貸住宅と定義。このうち、月額の賃料の1㎡単価が4000~5000円のものと、5000円超のものとの2クラスに分類している。
グラフはTVIの推移だ。月額の賃料の1㎡単価4000~5000円では20年2月以降悪化傾向が見られたが21年4~6月はおおむね横ばいとなった。5000円超では21年5月以降は悪化の兆しが出ている。
また、募集期間の推移では、21年6月末の時点で、4000~5000円では3.17カ月と若干拡大、5000円超は4.36カ月と大幅に拡大した。賃料指数では、4000~5000円では、おおむね横ばい、5000円超では減少傾向が見られた。
同社によると「ハイクラス賃貸の背景には物件供給数が単身者向けのように多くないこと、大手企業が手がける物件が多く、マーケティングやリーシングがしっかりしている点が特徴だという。
賃料の減額傾向や募集期間が拡大した要因について藤井主任研究員は「新型コロナウイルスの感染拡大の影響が多少ある」と話す。海外企業の日本オフィス勤務者の減少で、ハイクラス賃貸を希望する層が減り、空室物件が増えたことに加え、コロナ禍前に計画された物件も供給されており、全体的に物件供給数が増加した。「これらの要因で賃料が横ばいか減額傾向となった」(藤井主任研究員)
募集期間の拡大は、ハイクラス賃貸に住む層が在宅ワークのために広さや部屋数を求めたことが要因の一つとしてあるとしている。加えて、ニーズの増加に伴いこれまで市場に出てこなかった物件も流通したことと、タスの募集期間の推移の数字は市場に流通し成約した物件の平均募集期間を示すため、しばらく眠っていた物件が流通することで、募集期間の数字に影響を及ぼしたのではないかと藤井主任研究員は考察する。
(10月18日31面に掲載)