どう稼ぐ?事故物件、風呂なしを取扱うニッチ不動産特集

フィールドガレージ,グローバルセンター,G.U.style(ジーユースタイル),MARKS(マークス)

その他|2021年11月26日

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MARKSでリノベした物件。 元は事故物件だった

 ターゲットを絞り込んだ「ニッチ不動産」を扱いビジネスを行う不動産会社が出てきている。客層があまり広くない需要向けに事業を展開する不動産会社に、その狙いやどのように収益化を図っているのか話を聞いた。

事故物件再販で売上11億円

MARKS、リノベし満室状態で家主へ売却 おはらいで心理的負担軽減

 MARKS(マークス:神奈川県横浜市)は、事故物件に特化した再販事業やポータルサイトの運営を手がけている。事故物件という一般的に販売や入居付けがしにくい物件を狙うことで、コストを抑えた仕入れを行い、事業を伸ばす。

 設立11年で売上高は約11億円にまで成長した。エリアは絞らず、全国を対象に再販事業を展開し、年間の再販件数は30〜40件ほどだ。

 事故物件の買い取りからリノベ、入居者募集、再販まで一気通貫で実施。基本的には一棟単位で同社が買い取り、満室にした状態で投資家に売却する事業モデルだ。入居者募集や再販時の購入者募集は、同社が運営する自社サイト「成仏不動産」で行う。

 花原浩二社長は「事故物件を対象とした投資は売却益が大きい」と話す。死因の内容にもよるが、孤独死の場合では、非事故物件と比べおよそ5〜6%程度、自殺の場合などは10〜15%程度低く買い取れる。売却時は満室状態で売るため非事故物件とほぼ同価格での売却が可能だという。

 事故物件を扱う上で気を付けているのは、新たな入居者の心理的負担を軽減するため、売却前に必ずおはらいを行うことだ。おはらいは4〜5万円程度の費用をかける。

 改修に関しては物件の状況に応じてかける費用を決めている。特殊清掃が行われた場合や、死後72時間以上が経過した場合に限りフルリノベーションを施す。フルリノベの場合、戸当たり平均100万円以下で収めている。

 同社が運営するポータルサイトの成仏不動産経由で年間20件の賃貸仲介の成約につながっている。加えて自社で入居付けを行うため、成約家賃のデータもサイトを通じて収集することで、事故物件の家賃相場の把握が可能になり、買い取り時に適正な価格を査定できることを強みとしている。

 花原社長は「事故物件の査定は慣れていないと売却できなかった場合や、特殊清掃など追加の費用がかかることを考慮し、高額となる場合が多い」と説明する。同社が査定するときと比較し、例えば1000万円の物件の場合、平均100〜200万円の開きがあるという。同社は事故物件における相場家賃を把握していることで、よりコストを抑えた取得が可能だ。

 今後は孤独死を防ぐ見守りサービスを自社で開発し、取得した物件へ導入していきたいとする。付加価値を付けた上での売却を構想している。

MARKS 花原浩二社長(43)

MARKS
神奈川県横浜市
花原浩二社長(43)

 

 

フィールドガレージ、風呂なし物件、銭湯とセットで 人気エリアでも低家賃でニーズ

 持ち家から賃貸物件まで幅広いリノベーションや不動産仲介を行うフィールドガレージ(東京都目黒区)では風呂なし物件を取り扱った物件紹介サイト「東京銭湯ふ動産」の運営と賃貸仲介を手がける。東京23区をメーンに風呂なし、シャワーのみ、銭湯に近い物件を付近の銭湯と一緒に紹介したサイトだ。収益はわずかながらもリノベの受注や、同社のイメージ作りに役立っている。

 同社の売上高は約2億円。そのうち、東京銭湯ふ動産での売り上げは1%にも満たない。同サイトの運営を開始した18年7月より成約件数は合計で50件程度。問い合わせは累積で200件ほどだ。

 運営開始当初は400件程度はレインズから広告可の物件を掲載していたが、現在は同サイトを見て関心を持ったオーナーから依頼された物件を中心に掲載する。およそ2週間に1件ほどは新規物件を追加するようにしており、現在も約50件募集している。

 主な客層は20〜30代で約95%が単身者。男性6割、女性4割となっている。これは風呂なしの物件自体、広い物件が少ないからだという。

 集客は主にSNSを利用し、募集のある物件を紹介し、東京銭湯ふ動産の物件紹介ページへと誘導している。特に「ツイッター」での反響がよく、そのためメーンの客層も若くなる。フォロワー数は11月11日現在で4090人だ。

 元々は15年から銭湯を広める活動を行っている東京銭湯(東京都渋谷区)に同社の鹿島奈津子氏がボランティアライターとして参加したことがサイト立ち上げの契機だった。

 不動産を切り口にして同団体の活動の助けにならないかと考え、16年より風呂なし物件と銭湯を一緒に紹介するイベントを開始。約2年間イベントを続けた中で、参加者からの反応が良く、ニーズを感じ物件紹介サイトの立ち上げを決めた。「東京都内でも渋谷や新宿といった、人気の高いエリアに風呂なし物件があった。風呂がないので安い賃料で希望のエリアに住め、毎日広いお風呂に入れるのはニーズがあるのではないか」と鹿島氏は話す。

 同社では、現在も風呂なし物件の入居者のトークショーやDIYのイベントを企画する。実際に風呂なし物件を見てもらいつつ、最後に参加者全員で銭湯に行く形を取っており、物件の掲載を依頼するオーナーにとっても、風呂なし物件であっても銭湯とコラボすることで人が集まるイベントができる自信につながっているという。

 「当社はもともと、リノベがメーンの会社。あるものをどう生かしていくかという考え方が強く、風呂なし物件を紹介しているのも会社の方針につながる。サイトをきっかけに現在依頼中のものを含めて2件だがリノベの受注にもつながった。コロナ禍が終われば普及活動として、風呂なし物件のおしゃれな使い方や和室のうまい使い方を組み合わせた紹介なども企画していきたい」(鹿島氏)

G .U .s t y l e、店舗付き賃貸住宅で「商い」応援 週1で問い合わせ「需要高い」

 G .U .s t y l e(ジーユースタイル:東京都大田区)では、自社で所有する店舗付き賃貸住宅を入居希望者に貸し出し、家賃収入を得る事業を行っている。週に1回ほど入居の問い合わせがあり、ニーズの高さを感じているという。

 同社の売上高は非開示だが、店舗付き物件に関わる売り上げは10%を占める。現在6戸の店舗付き物件を所有しており、所在エリアのは東京23区内が8割を占める。集客は自社サイト「商い暮らし」にて行っている。2015年から同事業を開始し、約6年間で約60件の成約の実績がある。

 店舗付き物件は自社で建築するか、売買により取得している。取得する物件は基本的に2階建てで、1階を店舗とし、2階を居住スペースとする住み分けを推奨する。

 入居者、入居希望者で多い業種は、カフェなどの飲食業や、美容室など。経営者は30代の若年層がほとんどだという。

 新たに物件を取得した場合には、リノベーション後に貸し出しを行う。リノベの費用は50万〜400万円で、物件により異なる。

G.U.styleで所有する店舗付き物件内装

G.U.styleで所有する店舗付き物件内装

 同社が店舗付き物件のオーナー業を始めたのには小薬順法社長の思いがある。「私自身、バーの経営がしたいという気持ちがあった。仕事場と住居が一体化していることで通勤時間もなくすことができると考えた」(小薬社長)

 物件を探す中で店舗付き物件が少ないと感じ、自身で建築やリノベを行って物件数を増やし、周知することでニーズが高まるのではと考えたという。

 課題は、問い合わせがあっても賃料の面から成約に至りにくいことだ。店舗付き物件は店舗の賃料と住居用賃料の二軸の支払いになる。元々店舗のみを探していた人にとって、予算オーバーになりがちだ。「入居希望者の問い合わせは週1で店舗付き賃貸住宅で「商い」応援週1で問い合わせ「需要高い」あるためニーズは感じている。より物件数を増やし、コスト面を含め多様な要望に応えられる物件を用意したい」(小薬社長)

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G.U.style
東京都大田区
小薬順法社長(47)

 

 

グローバルセンター、うどん屋メーンに近隣物件紹介 広告や人材採用に活用

 香川県高松市を中心に賃貸管理・仲介を行うグローバルセンター(香川県高松市)では同社が運営する物件紹介サイト「CLASO.(クラソ)」とは別に「うどん県索」といううどん屋をメーンに近隣の物件を紹介するサイトも運営することで会社の認知度向上や採用につなげている。

 同社の売上高は13億400万円。そのうちうどん県索での売り上げはゼロ。実際にこのサイトから物件が決まったことがないためだ。メディアで取り上げられることもあり、会社のPR活動の一端という立ち位置で行っている。

 うどん県索は15年12月より運営を開始した。実際に同社の社員がうどん屋に赴き、メニューや店舗の雰囲気、実際に食べた感想などを写真と共に紹介し、紹介の最後に近隣の物件の紹介をする。

「うどん県索」サイト画面

「うどん県索」サイト画面

 掲載物件は同社の管理物件のみ。うどん屋1件につき、同社の管理物件の中で最寄りの空室が1戸紹介される仕組みだ。

 同サイトの制作は同社の若いスタッフの提案がきっかけ。うどんで有名な香川県ということもあり、県外からの顧客におすすめのうどん屋を聞かれることが多く、うどん屋と一緒に生活するための物件検索サイトを作ればニーズがあるのではないかと発案があり制作した。サイト立ち上げから、度々取材が入っており、テレビ番組の「マツコ&有吉の怒り新党」で紹介された時はアクセスが集中し、サイトが落ちてしまったこともあるという。結果的に同社の広告やPRの一助となっている。

 また、会社説明会の際にも同サイトを紹介。来場者に対して、同社が若い社員の意見も積極的に取り入れている姿勢をアピールしている。そのほかにもインターン生に同サイトの運営にも関わってもらうなどしており、採用へとつなげている。

 広報課の近藤いづみ主任は「直接的にうどん県索で物件が決まっているわけではないが、度々全国のメディアで取り上げられており、PRや話題性のために継続している」とコメントした。

(2021年11月22日・29日4面に掲載)

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