勤倹貯蓄の家主に見る、安定不動産経営への道のり①

企業|2022年01月19日

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08年に初めて取得した物件

 空室が埋まらない、銀行への返済が多くて手残りが少ない。賃貸経営をする中で、想像よりもキャッシュフローが生まれにくいと感じる家主は多いだろう。今回は、経営を安定させることに成功した家主たちを取材。黒字になったコツを聞いた。

付加価値与えて返済早める 売却益元手に都内で新築を

 都内を中心に50戸を所有する溝口晴康オーナー(東京都世田谷区)は、物件を売った際の売却益を元手に新築する経営を行っている。

 サラリーマンだった溝口オーナーが賃貸経営を始めたのは2008年の年末。最初は株やFXの投資をしていたが08年秋に起きたリーマン・ショックの影響で、運用額が0円になり、つぎ込んだ1000万円がすべてなくなった。意気消沈したが、脱サラして経済的な自由を得ることを諦めなかった。以前より本やセミナーで不動産投資について勉強していたことから、リーマン・ショック後、すぐに物件を探し始め、金融機関へ融資を打診。大企業勤めの自身の属性と妻の金銭サポートにより融資が通り、中古の1棟マンションを購入できた。

初物件の売却が大成功

 1棟目の物件は神奈川県にある1〜2階にテナントが入居する築約20年のRC造6階建て全6戸のマンション。7700万円で購入した。年間家賃収入は約700万円。だが、もっと家賃収入を増やしたいと考え、自主管理を実施。併せて無料インターネットを導入することで1戸につき家賃を3000円上げられた。さらに金融機関と返済金利を交渉し、徐々に金利を下げることに成功。最終的に1.4%分下げることができた。その結果、最高で年間約200万円のキャッシュフローが出た。

 1棟目の物件は14年に売却した。不動産購入から5年以上たった場合、長期譲渡所得となり、所得税と住民税の税率を下げられるためだ。購入時より高額な9500万円で売却できたが「捻出した利益は繰り上げ返済に充てたため、最終的な利益は約3000万円でした」(溝口オーナー)

 その売却益を元手に、15年に東京23区内に木造アパートを建てた。勤め先は16年に退職。脱サラを果たした。これまでの累計の売却益は約2億円(税引き前)。キャッシュフローは年間約2000万円だ。

 「1棟目の物件の売却に成功したことをきっかけに、再現性が高く安定したキャッシュフローを出しながら、資産を増やせていると思う」(溝口オーナー)

【黒字にするためのコツ】
初物件の経営時に、無料インターネット導入によって家賃アップと金利交渉に成功。最初の想定よりもキャッシュフローが出た。その利益は繰り越し返済に充てたため、売却益が多くなった。

溝口晴康オーナーの写真

溝口晴康オーナー(45)
東京都世田谷区

 

 

 

2棟目以降融資受けられず 現金購入で増やす実績作り

 日下部コウキオーナー(茨城県つくば市)は現役サラリーマン家主だ。11年に大学を卒業後、信販会社に就職した。転勤が多かったことから16年に現在の会社に転職。休みも取りやすく、地域に根差した賃貸経営をすることが可能になった。

 1棟目は28歳だった16年に日本政策金融公庫の若年層向け融資を使ってアパートと倉庫を2700万円のフルローンで購入。ところが転職後は融資を受けるのが困難に。そこで、現金による投資で実績を作った。まずは300万円の築古戸建てを現金で購入、リフォーム費用の分だけ200万円ほどの融資を受けた。その後5年間で戸建て4戸、区分1戸を現金で購入。21年時点で家賃収入は40万〜50万円になり、月間キャッシュフローは20万〜30万円になった。その成果が認められ、信用組合から600万円の融資を受け、700万円のアパートを購入できたのだという。「ゆっくり実績を重ね、成長してきました」(日下部オーナー)

中古戸建ての写真

現金で購入した中古戸建て

 初期の原資は、節約でコツコツためた500万円。賃貸経営を始めてから6年。一部売却した分の現金、貯金、家賃収入が手元にあることで、最近やっと、お金がたまってきた実感が得られるようになったのだという。

つくばの地主を目指す

 リフォーム事業者に資金を45万円ほど持ち逃げされたり、アパートの浄化槽から汚水が漏れた際に敷地外には保険が下りず70万円かかったり、区分マンションの漏水が収まらず入居募集ができなかったりと、これまで幾多の困難を乗り越えてきた日下部オーナー。「失敗するほど成長がある」と笑い飛ばし、家主仲間にもその経験を包み隠さず伝えている。

 賃貸経営者としては、いわゆる地主を目指す。「今、僕は30代前半。この年齢からつくば市の物件を増やしていけば、いつか地主のように多くの物件を所有できる。その資金を使い、この街を盛り上げるようなすてきな建物を増やしていきたい」(日下部オーナー)

【黒字にするためのコツ】
「賃貸経営の実績があったから、21年のアパート購入時に融資を受けることができた」と話す日下部オーナー。「高属性でなくとも、コツコツ実績を重ねれば金融機関の信頼も得られる」という。

日下部コウキオーナーの写真

日下部コウキオーナー(34)
茨城県つくば市

 

 

 

レバレッジで安定経営物件

 東海4県に150戸超を所有する神田恵一郎オーナー(名古屋市)はクリニックを開業している兼業家主だ。賃貸経営を始めたきっかけは子どもの教育資金が必要だったから。子どもが医学部に進学した場合、学費や仕送りなどで3000万~4000万円ほどかかることが予想される。早いうちから資産形成をしようとFXや株も含めて検討し、安定感がありそうで直感的に気に入った賃貸経営を選択。子どもが小学生だった13年から賃貸経営を志し、15年5月に最初の物件を購入した。

 積極的に融資を活用。15年から年1~2棟のペースで物件を増やしていった。中古の場合は原則として入居率が9割以上の物件を選び、新築の場合は立地のよい土地を押さえ、利回りでは7~9%を目指している。「全室空室の物件をリフォームして満室を目指す〝全空チャレンジ〟をした以外は安定を一番に考えて物件を増やしてきました」(神田オーナー)。その後20年12月に大型の2棟一括の物件を条件付きフルローンで購入したところで所有150戸超となり、神田オーナーは〝これで学費のめどが付いた〟と安心したのだという。現在のキャッシュフローは月々140万円ほどだ。なお、調達金利は0.8~1.45%で、返済比率は平均で45%となっている。開業医であり、貯蓄と本業でしっかり実績を残している点が評価されたことから、低い金利で融資を受けることができた。

 「自分の物件に誰かが入居して、街に人が増えるのが見えることが賃貸経営の醍醐味」と話す神田オーナー。先日、子どもも無事希望学部に合格。キャッシュフローだけで学費も賄えそうだが、売り時が来れば売却も検討するそうだ。

 お金がたまるようになるコツは、「お金を使うときに、得られる価値が支出に見合うものかどうかを慎重に見極めること」だと神田オーナーは話す。

(2022年1月17日16面に掲載)

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