コロナ禍の賃貸市場の影響は?エリアルポ ~岡山編~

ケイアイコミュニティ,サンホーム岡山,ワイケイマネジメント,ありき

管理・仲介業|2022年04月07日

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 47都道府県各エリアの新型コロナウイルス禍の賃貸マーケットへの影響を取材する「エリアルポ」。今回は中国地方で広島県に次いで人口が多い岡山県を紹介する。一部では法人や外国人の需要が減少するなどコロナ禍の影響が出ていたが、2022年からは需要が回復しているエリアもあるようだ。

豪雨被害地区から中心部に人口流入

ケイアイコミュニティ、岡山駅前再開発 競合が増え苦戦

 県内では岡山市と倉敷市をメインに7450戸を管理するケイアイコミュニティ(岡山市)ではコロナ禍においても契約件数自体は例年通りで変動はなかったという。ただし、環太平洋大学の学生の需要が高いJR山陽本線「東岡山」駅周辺の岡山市中区では21年と比べ学生の需要が2割減少。オンライン授業が根付いたのが原因だと同社ではみる。法人に関しては特に異動控えはなかったものの繁忙期に集中することがなくなり、年間を通して分散したという。今繁忙期の問い合わせは3月からと例年より動きが遅かったが、異動が集中したことにより、契約の件数はコロナ前に戻ると予想している。

 岡山市は特にJR山陽本線「岡山」駅周辺の人気が高い。市内では新築の建築が多く、3月だけで約30棟竣工した。そのため、供給過多になり、新築や築浅であっても入居付けが難しいという。

 現在、岡山駅の周辺の再開発に伴い、低層部がショッピングモール、上層部が住居の複合施設の建築が進んでいる。駅周辺の分譲マンションは区分で賃貸に出されている案件もあり、競合物件が増えている。

 同社管理営業部の松原一樹課長は、今後は賃貸住宅の供給過多も解消されるのではないかとみる。その理由として「岡山は災害が少なく、関西、中国、四国、山陰の中間地点で海にも接しており、物流が集まりやすい地域。県もそのことを強くアピールしているので、今後は県外からの流入も増えると考えている」とコメントした。

サンホーム岡山、オンライン授業で4月に短期解約

 岡山市を拠点に約4800戸を管理するサンホーム岡山(岡山市)ではコロナ禍の影響で、20、21年の3月に入居した地元の岡山大学・くらしき作陽大学の学生が4月に退去するといった短期解約がそれぞれ2件あった。授業が対面かオンラインかの大学側の発表が遅く、オンライン授業が中心になることが分かったタイミングで実家に戻る動きがあったからだ。22年は授業が対面に戻ったこともあり、短期退去はないと同社ではみる。

 一方で、例年入居者の1割近くを占める留学生の動きはまだなく、その影響で留学生の需要が高い3点式ユニットバス物件の成約の動きが鈍い。

 岡山駅周辺では再開発の影響もあり、2年前から賃貸マンションの建築が増えているという。同社管理営業部の山田敬子部長は「路面電車の路線の拡大が予定されており、今後さらに市の中心部の範囲が広がるとみている」とコメントした。

【岡山市の賃貸住宅市場】

県南東部に位置し、人口は県内で最も多く、推計人口は2月で72万563人と県2位の倉敷市と25万人近く差をつけている。世帯数は33万4542世帯。18年時点で、居住世帯がある住戸数は31万3200戸。賃貸はそのうち12万5400戸。賃貸の空き家は3万2200戸。

ワイケイマネジメント、法人異動控えで例年の6割減も

 倉敷市で3477戸を管理するワイケイマネジメント(岡山県倉敷市)ではコロナ禍の影響により、ここ3年で市内の人口が約3000人減少し、賃貸市況にも影響が出ているとみる。特に法人や外国人の減少が顕著だ。法人の異動控えがあり、社宅代行サービス会社からの依頼が例年の6割にまで減少し、いまだに回復していない。

 倉敷市は南部に工業地帯である水島コンビナートがあり、三菱ケミカル(東京都千代田区)やJFE(ジェイエフイー)スチール(同)のような大規模工場とその下請け企業が多くある。これらの企業での異動や外国人の雇用が落ち込んだ。

 現在、JR山陽本線「倉敷」駅の北側の再開発が行われており、新築の賃貸物件が増加している。また、物価の上昇により新築の家賃が値上がりしているのも特徴だ。2、3年前より1万円は上がっているという。

 それに伴い、築3〜4年の物件であっても2000〜3000円家賃が上がっている。新築が高いため、それにつられて家賃が上がっても入居が決まる状態だ。

 また、18年の豪雨災害の際にはその影響で、被害の大きかった北部の真備エリアから倉敷市の中心部への引っ越しが増加し、同社が管理する市内の物件の入居率が上がった。18年には約2割の物件が空室だったが、95〜98%程度にまで入居率が上昇したという。同社PM課の蒔田智恵主任は「ただし現在はそこから元のエリアに戻った人もおり、管理物件の入居率は約90%になっている」とコメントした。

【倉敷市の賃貸住宅市場】

県南部に位置し、水島コンビナートを擁する。工業都市の面もある。人口は県内で2番目に多く、推計人口は2月で47万9223人。世帯数は21万6115世帯。18年時点で、居住世帯がある住戸数は18万8930戸。賃貸はそのうち6万2980戸。賃貸の空き家は1万2990戸。

ありき、学生需要二極化 親の収入要因か

 津山市を中心に岡山県県北エリアで3560戸を管理するありき(岡山県津山市)では、コロナ禍の影響で21年までは法人需要が減少していたが、今繁忙期からは回復。異動控えの反動で仲介件数は例年の1.2〜1.3倍になった。

 21年の繁忙期は学生向け物件のニーズが二極化したのも特徴だ。例年は1Kで3万5000円程度の物件のニーズが高い。しかし、22年は安価な家賃を重視する層と、防犯や設備を重視する層に分かれた。同社で最も安い物件は1Kの6畳で1万7000円だ。一方で1DKの6万2000円の物件で決まる事例もあったという。同社は低家賃帯の物件のニーズが高まったのはコロナ禍で親の収入が下がったからとみる。

 またコロナ下で、家主業を始める地元企業が増え、収益不動産の新築案件が増えている。コロナ禍のために、ものが売れなかったり、工場の稼働が厳しくなったりした企業が安定収入を求めるようになったからだ。22年に入ってからすでに2社が同社に相談し、新築の案件が決まったという。

 同社の管理物件の入居率は89.5%。ほぼ横ばいが続いているという。一方で津山市全体の入居率は約60%だ。人口は年間約1000人ずつ減っているものの、核家族化により世帯数は15年の国勢調査から5000世帯増加している。ただし、物件が供給過多となっており、入居率は横ばいの傾向にある。

 有木志津加社長は「生産人口が減っているのに新築がどんどん建てられている。マーケットが小さくなるのは確実なので、大学を増やして学生の需要を高めるしかないのでは」とコメントした。

ありき 有木志津加社長の写真

ありき
岡山県津山市
有木志津加社長(46)

 

 

【津山市の賃貸住宅市場】

県内第三の都市であり、県北で最大の都市。人口は県内で3番目に多いが、人口は3月で9万8545人と2位の倉敷市から大きく離されている。世帯数は4万5555世帯。18年時点で、居住世帯がある住戸数は4万1270戸。賃貸はそのうち1万1770戸。賃貸の空き家は5050戸。

総社市と和気町に注目

 「岡山大家」のハンドルネームで大家の会を主催する森栄徳オーナー(岡山市)は、岡山市を中心に共同購入したり、法人所有しているものも含め、県内に104戸を所有する。戸建てがメインということもあってか、ほぼコロナ禍の影響を感じていないという。

 森オーナーは「最も賃貸マーケットが大きいのは岡山市だが、今熱いのは総社市と和気町」と話す。総社市は07年に就任した現市長が企業の誘致を積極的に行ったことで、労働人口が増えている。一方、和気町では5〜6年前より移住を促進。岡山市まで電車で約30分ということもあり、岡山市への通勤も可能だ。

 収益不動産のマーケットとしてはコロナ禍以降、物件価格が上昇している。そのため、表面利回りもコロナ禍前は10%程度だったが、現在は8%を切ることもある。新築が建築費の高騰などから値上がりするのにつられ、中古物件の価格が上がっているのも要因の一つだが、森オーナーはコロナ禍の影響もあるとみる。コロナ関連融資が出て、余裕のある事業者が物件を積極的に購入しているからだ。森オーナーも20年に600万円で仕入れた物件が1200万円で売れたという。

森栄徳オーナーの写真

森栄徳オーナー(49)
岡山市

 

(2022年4月4日10面に掲載)

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