賃貸市場エリア分析~福岡市編~

Good(グッド)不動産,ハッピーハウス,三好不動産,三和エステート,福岡市

企業|2022年09月07日

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 地場不動産会社への取材や賃貸住宅に関わるデータから各主要都市の賃貸市場を探る。今回は、人口増加が続き、地価が上昇傾向にある福岡市に焦点をあてる。

単身向け、家賃1万円上昇

 進学や就職を機に、九州地方や中国地方などから多くの若者が集まる福岡市。市の試算では、人口は2035年ごろにピークを迎えるという。市が推進する「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」、市営地下鉄七隈線の延伸など、まちの再開発の影響も加わり中心地の賃貸需要が増加。一方で郊外での賃貸住宅需要も広がっている。

人口データ(2022年6月1日現在)

賃貸住宅着工戸数

住宅総戸数

人口推移グラフ(各年10月1日時点)

家賃相場(福岡市中央区)

賃貸仲介の商習慣

単身者向け新築増 天神ビッグバン影響

 グループ全体で1万7698戸を管理するGood(グッド)不動産(福岡市)の福岡三越店瀧澤圭亮店長は、「家賃が全体的に上がっている傾向にある。天神ビッグバンの影響を感じている」と話す。

 天神ビッグバンとは、2015年から福岡市が推進するプロジェクト。福岡市独自の容積率緩和制度などを活用したビルへの建て替え促進や雇用創出、公共空間の整備などを実施する。天神交差点から半径約500メートルの80ヘクタールを対象とし、21年9月末時点で43棟のビルで建て替えを竣工している。

 福岡県では職場の近くに住む場合が多く、天神ビッグバンによる雇用創出に伴い、需要に応えるべく新築の賃貸住宅が建築されている。新築される部屋タイプは単身者向けが多い。単身向け、家賃1万円上昇市内再開発が新築供給に影響「ワンルームで洗面台が独立している築浅の物件で比較した場合、12年に5万5000〜6万円が相場だったのが、22年には6万5000〜7万円ほどと、1万円以上上昇している」(瀧澤圭亮店長)

コロナ禍でニーズ変化 安価な物件の入居伸長

 一方、新型コロナウイルス禍で収入への影響を感じる層が家賃の手ごろな物件を探す傾向も出てきている。

 福岡市を中心に3万83戸を管理するハッピーハウス(同)の秋田潤一郎執行役員は「コロナ禍で、築年数の経過した物件や福岡市中心部近郊の物件が成約しやすくなっている」と話す。

 同社で部屋探しをする顧客は、これまで新築や築浅物件を第一に希望にする傾向があった。ところが20年ごろからその傾向が変わってきた。

 新たな傾向の一つに、築20年以上で家賃が比較的に安価な物件が成約しやすくなっている点が挙げられる。

 以前と比べ市内で築20年以上の物件でのリノベーションが進んできたこともあるが、コロナの蔓延で、部屋探し顧客が今後の世帯収入への不安を持ち始めたことが要因の一つではないか、と同社は分析している。住み替えが多いのはファミリー層だという。比較的家賃帯の低い物件を求める顧客の動きは22年に入っても、依然続いている。

 二つ目が福岡市中心部から少し外れた物件への需要の高まりだ。リモートワークの浸透で幅広いエリアでの賃貸需要が伸びている。

 福岡市西区では、九州大学が18年から伊都キャンパスに順次移転を開始したこともあり、最寄り駅のJR筑肥線九大学研都市駅周辺ではまちづくりが進み、賃貸物件の需要が高まっている。住み替えは8割ほどをファミリー層が占めるという。

テレワーク増加で戸建て賃貸に反響

 福岡市を中心に約3万9000戸を管理する三好不動産(同)資産管理部の上野貴史シニアマネージャーは「テレワーク勤務者の増加で、駅からの近さよりも住戸の広さを重視し戸建て賃貸の希望者が増えている」という。

 同社の賃貸仲介のうち、戸建て賃貸の仲介件数は、コロナ禍以前の19年度には全体の5%以下だったが、21年度では8%に高まった。

 22年4月以降も問い合わせは増加傾向にある。

 コロナ下で子どもを自宅の庭で遊ばせたいファミリー層や、テレワークをするために部屋数を増やしたいDINKSなどからの問い合わせが多いという。

 戸建て賃貸住宅の供給が進んでいるのは、比較的郊外である、東区、南区、西区などで、地主の土地活用として建築される場合が多い。「今後も戸建て賃貸の需要が増加する傾向は続いていくと考えている」(上野シニアマネージャー)

競争激化で地価高騰 市内案件確保に苦戦

 福岡市を中心に8736戸を管理する三和エステート(同)の井上誠司執行役員は「市内の土地価格が上昇し、賃貸住宅を建築したくても難しい状態。福岡市内の住宅地の地価はこの2年で5〜10%ほど上昇したと感じる」と話す。同社は木造賃貸住宅「CBシリーズ」の建築を年間に30棟ほど手がける。

 建築する土地について、08年から13年ごろまでは、福岡市内が9割、ほかの地域が1割ほどの供給割合だった。だが、それ以降は徐々にその割合が逆転し始めた。市内での建築は17年には2割程度、21年には1割程度にまで減少した。

 市内中心地の土地は、主に地元のデベロッパーが購入し、投資型のワンルームマンションとしてサラリーマンを中心とした投資家に販売しているとみる。昨今では都心型の建売戸建を建築販売する住宅メーカーも市外からへ参入してきており、土地の価格高騰に拍車をかけているようだ。

福岡市、整備進むアイランドシティ

 福岡市と国、博多港開発(同)が福岡アイランドシティの整備を進めている。

 福岡アイランドシティとは、港湾機能強化などを目的として博多湾に整備された島形式の埋め立て地。広さは約401ヘクタール。市立こども病院や商業施設、福岡市初の施設一体型の小中連携校などが集まり、22年3月末では、約1万3400人が生活している。うち、15歳未満の子どもの割合は約29%を占める。

福岡アイランドシティ

福岡アイランドシティ

 賃貸住宅の供給戸数は約1260戸(22年7月末時点)。100〜389戸の賃貸物件が7棟建っており、公募で決定した積水ハウス(大阪市)を代表とする事業連合体などが開発している。

 港湾空港局事業管理課は、「まちづくりエリアの分譲は令和10年代の完了を予定している。引き続き、まちづくりを進めていく」と話した。

(2022年9月5日7面に掲載)

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