広大な山林や農地を開発するヤマイチ・ユニハイムエステート(大阪市)が6月、東京証券取引所スタンダード市場に上場した。2022年3月期の経常利益は21年比68%増の大幅な増益となった。山田茂社長に、同社の成長の理由について話を聞いた。
拠点を大阪に移し業績飛躍
山林・農地を開発 売上191億円超
ヤマイチ・ユニハイムエステートは、分譲マンションや収益不動産の開発を行っている。その中でも注力しているのは収益不動産の開発。開発するのはロードサイド店舗などの事業用不動産だ。開発後は法人に売却し、売り上げを伸ばす。
地主から土地を借り上げて事業用不動産を建設する場合は、建物部分を長期で自社保有し賃料収入を安定的に確保する。
22年3月期の売上高は21年3月期比27.6%増の191億1770万円。経常利益は25億5528万円と、21年3月期比で68%伸長した。
売り上げ構成比は、分譲マンションの販売を行うマンション事業が55%、不動産開発・販売事業が31.3%、自社保有物件から賃料収入を得る賃貸事業が12.6%と続く。
特に力を入れているロードサイド店舗の開発・建築は、1店舗あたり33㎡の狭小店舗から、約3300㎡以上の大型店舗まで幅広く手がける。自社で賃貸する場合には、実質利回り8.7%を目安とし、貸し出している。入居するテナントの業種は物販や飲食などが多い。現在の保有店舗数は20店舗ほどだ。
山田社長は「キャリアを積む中でバブル崩壊を目の当たりにした。経営安定化のため、売り上げを上げる一方でしっかりとストック収益を確保することが重要だと感じ、賃料収入を得られるビジネスモデルを確立した」と話す。
同社の強みは、権利関係の調整だ。面積が広く大規模な開発がしやすい一方、権利関係が複雑な山林や農地をメインに開発を行う。権利者が複数人である場合が多く、根気強い交渉が必要になってくる。
取得が難しいとされる山林、農地で事業を行えるのは、山田社長の経歴が関係している。立命館大学理工学部卒業後、土地の権利に関する事業を行う延時商事に入社し、4年間現場での交渉に従事した。
27歳で独立し、ヤマイチエステート(現:ヤマイチ・ユニハイムエステート)を設立した。前職で培ったノウハウを生かし、広大な土地の取得と開発で事業を拡大してきた。
ビジネス街に照準 事業性高い案件獲得
22年3月期に業績が伸びた要因の一つは、20年に拠点を和歌山市から大阪市に移したことだ。ビジネスの中心街である大阪市に本社を置くことでより事業性の高い案件の情報をキャッチできると考えた。
実際、本社移転後に受注した兵庫県西宮市の大規模開発案件では土地の坪単価は和歌山市の6倍ほどで、約120万~180万円だったという。
23年3月期には賃料収入で、1~2億円ほどの増収を目指す。
上場理由は人員確保 今後戸建て賃貸注力
上場は、人員確保が目的だ。上場による知名度の向上や、信頼性の獲得が会社の成長に伴う人員強化に役立つとみている。
23年3月期は、6年ぶりに新卒を3人確保したという。24年3月期以降は、毎年10人程度の採用を予定している。
今後、新規事業として伸びしろを見込むのが戸建て賃貸の開発だ。「広い間取りの物件を開発し、高賃料を狙っていく」(山田社長)
(國吉)
(2022年12月19日20面に掲載)