企業研究vol.015 藤井 英定 社長

インタビュー|2019年05月31日

  • twitter

原因追究と改良の地道な繰り返しで製品の性能を高めてきた藤井英定社長

月額690円で導入可能な電子錠

間もなく創業23年を迎えるセキュラは、高い安全性能にこだわった電子錠『マイロック』を展開してきた。暗証番号やICカードで解錠でき、鍵の閉め忘れを防ぐオートロック機能も付いている同製品には「安心・安全・便利」の会社理念が見受けられる。藤井英定社長に開発経緯や今後の展開を聞いた。

銀行向け電気錠がベース性能と長期保証に自信

――賃貸住宅にも高いセキュリティー性が求められるようになりました

藤井 「安心・安全・便利」という理念のもとに電子錠の開発・改善を続けてきました。創業から20年以上がたち、主力商品である『マイロック』の累積販売数は25万台まで伸びました。そのうち集合住宅はおよそ15万台を占めます。不動産オーナーさまや管理会社さまの電子錠への関心も高まっていると感じています。

単3電池4本で稼働する

――『マイロック』の特徴を教えてください

藤井 テンキー入力とリモコンで鍵の開け閉めができます。ICカードにも対応しており、本体にかざすだけで解錠が可能です。オートロック機能がついており、ドアが一定時間開けっ放しになると警告音が鳴るので鍵の掛け忘れを確実に防ぎます。もちろんピッキングによる解錠も不可能です。製品の駆動部分にはソレノイドという自動車と同じ機械部品を採用しています。モーター駆動の鍵は歯車部分の摩耗や油切れなどが不具合につながることが多い。それと比べるとコストは高くなりますが、耐久性やメンテナンスの部分では有利です。いくら安全性能が高くても不具合が起きてしまっては不便なものになってしまいます。

――安心感や利便性の追求にこだわりを持っていますね

藤井 『マイロック』の開発にはベースとなる製品がありました。祖父が福岡で創業した日東ドアーという会社が、金融機関向けに開発した電気錠『E Cロック』です。金融機関が使うものですから製品の性能には相当な気を配っていましたが、ある日、導入先の銀行から不具合を知らせる電話が入りました。電気系統がうまく働かなくなったときのため、通常の鍵でも開け閉めができる設計にはなっていましたが「とにかく早く直してくれ!」と先方はカンカン。当時、社長を務めていた父は一目散に現場に向かい対応しました。そのときに父が感じたのは、利便性は不可逆なものであるということ。たとえ通常の鍵で開け閉めができても、オートロックという便利な機能を一刻も早く復旧させてほしいというお客さまの強い思いがありました。

一つ一つの部品から商品改良を考える

―― その経験が『マイロック』の開発にも生かされたのですね

藤井 誰しも鍵の掛け忘れを経験したことがあると思います。そんなときに限って空き巣にでも入られたら「鍵を掛け忘れた自分が悪い」と考えてしまうでしょう。しかし、私たちは「自動で施錠されない鍵が悪い」と考えます。一般向けにも便利で安全な鍵を作ろうと父が創業したのがセキュラです。それまでの実績や製品を評価され、設立当初から1億円近くのお金が集まりました。経営コンサルティングの方の支援で代理店も集まり、船出は上々かと思われましたが、これがうまくいかない。私は2000年にセキュラに入社することになりますが、その時点で売り上げが4000万円足らずであることを知りがくぜんとしました。

――製品は良いのに売れなかった原因は何でしょうか

藤井 全国の代理店を訪問し、営業に同行した結果わかったことは、相手の立場に立った提案ができていないということでした。そこで相手先によせた提案書を作るように指示し、課題を解決できる製品であることを訴えるようにしたところ、次年度には売り上げが1億6000万円にまで増えました。

――住宅向けの販売が増えたのはいつ頃ですか

藤井 数をまとめて販売できる集合住宅の市場は当初から狙っていました。九州をはじめ広島など中国地方の分譲マンションでは標準装備として採用されるなど住宅への導入が進み、売り上げ3億円になった頃にはその7割が分譲マンションでした。しかし、その後のリーマンショックで売り上げが落ち込み、景気の影響を受けづらい賃貸住宅に軸足を移しました。賃貸市場を狙うにあたり障壁となったのがコストです。そこで10年に月額690円から導入できるリース商品を用意しました。次の壁がトラブル対応です。管理会社にとっては、電子錠の内部構造もわからなければトラブル時の対応もわからない。そこで12年ごろに24時間のフリーダイヤルを開設し、一次対応を全て自社で行う体制を整えました。製品の長期保証も新たな挑戦でした。分譲と比較し、賃貸ではドアが雨ざらしになっていることもあり電子錠にとっては過酷な環境です。不具合を起こした製品の設置環境や症状を分析し、設置時の貫通箇所から浸入する湿気が原因であることを突き止め、特殊コーキングを施すようにしました。手間やコストはかかりましたが、安心して使ってもらうための10年保証は好評です。

――今後の展開は

藤井 18年4月に共同開発した宅配ボックスを普及させていきたいです。電子錠と同じICカードで操作ができるものです。電子錠では、専用のスマートキーを持った状態で、手で触るだけで解錠できる機能の開発を考えています。お客さまにもっと便利なサービスを提供していきます。

有料会員登録で記事全文がお読みいただけます

検索

アクセスランキング

  1. 省エネ性能ラベル表示、開始

    国土交通省,リクルート,アットホーム,LIFULL(ライフル),大東建託グループ,積水ハウスグループ

  2. コロンビア・ワークス、「総資産1兆円へ」開発を加速【上場インタビュー】

    コロンビア・ワークス

  3. 大手不動産会社で入社式

    レオパレス21,大東建託グループ,ハウスメイトパートナーズ,APAMAN(アパマン),常口アトム,武蔵コーポレーション,TAKUTO(タクト),三好不動産

  4. 明和地所、創業45年 浦安市で3000戸管理【新社長インタビュー】

    明和地所

  5. リース 中道康徳社長 家賃債務保証システムで成長

    【企業研究vol.244】リース

電子版のコンテンツ

サービス

発行物&メディア

  • 賃貸不動産業界の専門紙&ニュースポータル

  • 不動産所有者の経営に役立つ月刊専門誌

  • 家主と賃貸不動産業界のためのセミナー&展示会

  • 賃貸経営に役立つ商材紹介とライブインタビュー

  • 賃貸管理会社が家主に配る、コミュニケーション月刊紙

  • 賃貸不動産市場を数字で読み解く、データ&解説集

  • RSS
  • twitter

ページトッップ