2018年10月に東京証券取引所マザーズに上場したリーガル不動産(大阪市)。自社ブランド『LEGALAND(リーガランド)』での開発は都内を中心に1000室を超えている。総合不動産デベロッパーとして拡大を続ける同社の平野哲司社長に、現状と展望を聞いた。
海外に支店設立で顧客層拡大へ
立地条件にこだわり自社ブランド75棟開発
――不動産ソリューション事業や賃貸・売買事業、介護施設の運営まで、幅広い事業を展開していますね。
私が不動産業界で仕事を始めたのが1993年。バブル崩壊の真っただ中でした。不動産価格が一気に下落するあおりを受けて、自己破産する所有者や倒産する企業が相次いでいた時期です。そのときに任意売却に目をつけ、仲介のコンサルティングを始めたのがきっかけでした。その後独立し、現在は自社賃貸ブランド『LEGALAND(リーガランド)』や民泊物件『LEGALIE(レガリエ)』の開発や買い取り再販事業を行っています。
――任意売却の事業からデベロッパーへの方向転換は、どういった背景がありましたか。
リーマンショック以降に成立した中小企業金融円滑化法ですね。任意売却のマーケットが一気に縮小し、売り上げが一気に下がりました。これを機に、時代のニーズに合ったビジネス展開にかじを切りました。
――自社ブランド『LEGALAND』は現在75棟約1000室を展開していますね。特徴はありますか。
『LEGALAND』は単身や少人数世帯向けの低層賃貸マンションです。無駄なコストを省くため、エレベーターやバルコニーがありません。外観はシンプルでスタイリッシュな仕上がりとなっています。入居者にとっては十分な設備とはいえません。その代わりに駅から徒歩10分以内と、立地にはこだわっています。立地条件と設備面をてんびんにかけたとき、駅近の物件に人気が集中すると考えています。そのため、稼働率を重要視すると、エレベーターの有無は大した問題ではないと思われます。販売単価は約3〜5億円で、敷地面積は30〜200坪程度。2013年に東京都の千歳烏山にて1号物件を竣工後、富裕層や資産管理会社から支持されています。当社の不動産ソリューション事業の中で20%を占めています。
――『LEGALAND』は約9割が都内の物件ですね。本社のある大阪ではどのような事業を展開していますか。
都心部と関西では『LEGALAND』の顧客先となる富裕層の数がずいぶん違います。感覚的には9対1といったところですね。そのため関西ではビルやマンションの買い取り再販事業が主です。また、大阪では360日営業可能な特区民泊の指定区域のため、宿泊事業として『LEGALIE』を19年に竣工しました。9階建て全20部屋のマンションタイプで、2階の一部に忍者屋敷をテーマとしたスペースを設けています。主にアジア人のファミリーを中心に稼働率は8割を超えています。宿泊事業を行う際も、第1条件はやはり立地です。1棟目の物件も、大阪で外国人から人気の高い「日本橋」エリアにあります。実は2、3棟目もすでに仕込みに入っているのですが、やはりアジア圏の観光客が押し寄せるエリアに絞っています。
――総合不動産デベロッパーとして、インバウンドを中心に盛り上がりを見せる関西の不動産市場をどのように捉えていますか。
2025年の大阪万博やIRの誘致など、経済成長のエンジンとなるイベントがこの先も控えています。大阪万博では想定来場者数が半年間で約2800万人としており、インバウンド需要は増えていくと想定しています。もちろん、日韓関係の問題や、今話題となっているコロナウイルスなど、世界情勢の波が直接影響します。そういったリスクにも対応しながら特区民泊専用マンションやオフィスビルなどの開発を進めたいと考えています。