企業研究vol.187 TAKUTO 太田 卓利 社長【トップインタビュー】

TAKUTO(タクト)

インタビュー|2023年01月04日

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TAKUTO 大阪市 太田 卓利 社長(55)

 3万2500戸の賃貸管理を行うTAKUTO(タクト:大阪市)は、2021年10月に宅都プロパティから社名を変更。「選択と集中」で、賃貸仲介事業を譲渡し、利益を重視した管理ビジネスの構築を進める。新たに会社のパーパス(存在意義)を設定。並行して業務改革も行い、大幅な生産性向上につなげる。38年に管理30万戸を掲げる太田卓利社長が同社の目指す姿を語った。

管理3万2500戸、利益重視へ転換

売上15%増の156億円機関投資家の受託に強み

―直近の業績を教えてください。

 22年9月期の決算は、売り上げが156億4800万円と、21年9月期比で15%の増収でした。事業別の売上構成比率は、サブリース事業が57.2%、管理事業が21.9%、ビルメンテナンス・工事事業が12.4%、その他が8.5%です。規模の大きい物件の管理受託が増えています。当社の管理戸数はサブリース物件を含め3万2500戸(22年9月末時点)ありますが、そのうち38%がファンドの物件です。この2年ほどで機関投資家案件の依頼が非常に多くなりました。大阪府と東京都での管理がメインですが、ファンドからの要望で名古屋市でも1350戸の管理を行うようになりました。

管理戸数推移グラフ

―ファンドの依頼を獲得できる理由は何ですか。

 ファンド物件のプロパティマネジメントができる会社は限られています。高度なレポーティング能力が求められるからです。当社が委託の候補先に挙げてもらえるのは、そういった対応ができる人材がそろっていることにあります。二つ目がリーシング力。これまで培ってきた成約のためのノウハウや仲介会社との連携が武器になっています。

業務の棚卸しで生産性向上 規模拡大でも社員数維持

―経営をするうえで方針を変更したそうですね。

 リーマン・ショックや新型コロナウイルス禍から学んだのは、売り上げ至上主義の危うさでした。経営方針を利益重視へと方向転換しました。勝ち残るためには変化に対応する必要があり、その中で当社の強みである管理と開発の強化こそが重要だと考えました。「選択と集中」を実践し、21年3月に賃貸仲介事業会社の宅都をハウスコムに売却しました。21年10月には、管理会社である宅都プロパティの社名をTAKUTOに変更。グループのトップだった私が社長に就任し、新たにグループのパーパス「私たちは常に進化し、街に新しい価値を与え、そこに暮らす人たちに、たのしいくらしをとどける」を定めました。

―太田社長が指揮を執り、業務改善を進めてきたと聞きました。

 21年9月から、私が管理事業改革のかじ取りをしてきました。まず行ったのは、現状把握でした。細かなところまで業務を見直しました。コストコントロールの目線で見ていくと、多くの改善点が見つかりました。二重業務が多かったため、システム連携などにより、その無駄を解消できるようフローを整備しました。作業のペーパーレス化、オンライン化も進めました。その結果、管理戸数が増えても人員数を変えずに、業務を行えるようになりました。

―効果を上げた改善策は何でしょうか。

 一つは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用による、業務時間の削減です。基幹システムへの入力作業などをRPAが行うことで、解約申請や契約更新などの業務削減につながりました。結果、合わせて約2471時間の削減効果を生み出し、年間残業代で換算すると550万円ほどのコスト減になっています。

―現在、進めている取り組みはありますか。

 入居者対応へのチャット活用です。22年12月末で電話対応を終了し、チャット対応に完全移行しました。以前は入居者からの電話対応に疲弊していた社員の負担軽減のため、コールセンターに一時対応を外注。入居者向けアプリからの問い合わせに対しては並行してチャット対応も行うようにしました。ただ、この手法を継続すると、電話対応の外注費とチャットの利用料で年間5000万円がかかります。そこで、専任のチャット対応者を2人配置し、この2人を中心にチャットのみで対応。時間のかかる難しいクレームは完結型のアウトソーシングに依頼するように切り替えました。これにより、年間2500万円のコスト抑制になる想定です。

26年度に利益10億円計画 マーケットリーダー目指す

―今後の成長戦略をお聞かせください。

 リフォームや修繕に力を入れていきます。22年10月には工事会社を2社、M&A(合併・買収)しました。内製化することで工事を安価に提供でき、既存オーナーへの提案がしやすくなります。工事の依頼を受けられるため、新規の管理受託メニューの幅が広がることに加え、ほかの管理会社への提案機会も増えます。今後の潜在的な管理需要を囲い込むことにもつながると考えています。

―長期的な目線でどのような会社づくりをしていきますか。

 利益重視という点では、26年9月期に経常利益10億円を実現したいです。グループ設立40周年になる38年に管理戸数30万戸を目指します。私自身の思いとしては、やりたいことが三つあります。一つ目はマーケットリーダーとして業界をけん引する企業になること。二つ目は、グローバル展開。三つ目が、生まれ故郷である和歌山での地域振興。生まれ育った町に恩返しをしたいと考えています。

第2の職業は漁師

 太田社長は「実は、兼業漁師」と話す。多いときには週に3日、地元の和歌山県に戻って、自らの船「第二卓丸」で漁に出る。公務員をしていた父親が退職後、漁師を始めたことから影響を受けた。12年ごろから、父の指導を受けながら釣りを始めたところ、のめり込んだ。

 「自分の船で、大海原に出て、大物を釣るときにはアドレナリンが一気に噴き出す感覚。ほかでは味わえない」と熱く語る太田社長であった。

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第二卓丸で大物を釣る

 

会社概要

社名:TAKUTO
住所:大阪市中央区高麗橋3-2-7オリックス高麗橋ビル2F
設立:1999年5月12日
資本金:1億円
事業内容:ビル・マンション管理、プロパティマネジメント、リーシング、不動産コンサルティング、サブリース、保険代理店、リフォーム・リノベーションなど

会社メモ

1999年に宅都の不動産管理部門が独立し、宅都管理を設立。2011年に工事会社のプラスサムをグループ会社化。12年に宅都管理を宅都プロパティに社名変更。管理1万戸突破。19年にダイワホームズより賃貸管理事業を承継。21年、代表取締役に太田卓利氏が就任。社名をTAKUTOに変更。22年、タイヨウ工業、サンビリーブを子会社化。

社長メモ

1967年8月21日、和歌山県生まれ。大阪で働き始め、87年に不動産業界へ。大手賃貸不動産会社を経て、30歳で宅都を設立。TAKUTOグループの代表を務める。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の副会長。趣味は釣りと筋力トレーニング。愛犬家の一面も持つ。座右の銘は「質実剛健」。

(2023年1月2日・9日21面に掲載)

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