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創業10年で法人仲介年間2000件 川﨑 洋 社長

エリオン

大阪府吹田市

2018年08月13日号

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川﨑 洋 社長

法人向けの賃貸仲介を行うエリオン(大阪府吹田市)は、年間の仲介件数が2000件に急拡大した成長企業だ。同社の強みは、9割を超す来店成約率で、企業のリピーターを獲得している。創業10年を迎えた同社は、第2創業期として賃貸管理にも参入。東京と大阪で中規模の賃貸マンションの管理受託営業を行う。川﨑洋社長は人材教育に力を入れ、社員がキャリアパスの描ける会社づくりを進める。

取引企業は200社超えリピート顧客で事業拡大

亀岡 本社は大阪の吹田市なのですね。自宅も吹田ですか。

川﨑 豊中市の千里です。

亀岡 奇遇ですね。私も自宅は千里にあります。もう60年前に自宅を建て、当時は関西電力の副社長を務めた石黒久氏や、落語家の笑福亭仁鶴氏なども近所に住んでいました。

川﨑 有名人が多いエリアですね。元阪神タイガーズの掛布雅之さんの店もあると聞いています。

亀岡 大阪の不動産といえば、当時名をとどろかせていた明治不動産です。株だけでなく、不動産でも空売りをやればいいと事業を始めました。警察に捕まってしまいましたが、そこの出身者が起業して原野商法を行う不動産会社が続々と出てきました。

川﨑 そんな歴史があったのですか。

亀岡 40年前くらいの話になるのでご存じないかもしれません。御社はどういった事業を手掛けているのですか。

川﨑 主に法人の借り上げ社宅を仲介しています。創業から10年で年間の仲介件数は2000件です。現在、大阪と東京に拠点がありますが、依頼件数は大阪では10年で3倍、東京では4年で2倍になりました。

亀岡 伸びた理由は何ですか。

川﨑 リピーターが多いことが強みです。当社では法人の顧客が大手を中心に200社ほど契約しており、役員案件など特別案件の依頼も多く頂いています。来店成約率は東京で94%、大阪で90%と業界でも高い数値だと思います。法人仲介で大切なのは結果です。一度依頼して、この会社であれば契約につながると感じてもらえると、依頼件数が増える好循環につながります。

亀岡 すべてのビジネスにおいていえることですが、法人が顧客の場合にも、従業員のコミュニケーション能力が高いということが重要です。

川﨑 その通りですね。当社では、採用時の面接と新人研修を大切にしています。面接の際には必ず私が入ります。その時重視するのが、第一印象です。転勤の顧客が中心であるため、平均1日半で部屋を決めます。来店時の数時間で生まれる信頼感が決め手になります。ですので、面接の際にも10秒ほど話をしてみてその時の雰囲気などを評価します。お客さま商売ですから、「話のしやすさ」と「笑顔」がすべてと言ってもいいでしょう。いわば、瞬発的に感じさせる人の良さが求められます。これは社員自慢になりますが(笑)、よく管理会社の事務担当の方から、「エリオンって、いい子が多いね」とお褒めの言葉を頂きます。

亀岡 新人研修ではどういった人づくりをしているのですか。

川﨑 全員で育てています。顧客にとっては、新人であっても弊社の社員であることに変わりはありません。1回のミスで信頼と顧客を失うことになりかねません。そのために、新入社員には日報を他の社員全員に送らせ、どういう状況なのかを会社全体で確認します。案内の同行も、先輩社員全員と回る機会をつくります。また、企業が顧客なので、コンプライアンス順守の姿勢も求められます。社宅規定に反する要望を言われたときの断り方など具体的な内容の研修を伝えます。問題化した内容を社内のミーティングで持ち寄り、正しい対処法を共有することで同じ間違いを起こさない体制づくりをしてきました。こういった研修の効果で、新人社員でも来店後10件中9件は契約できるようになりました。今、課題と捉えているのは、依頼から来店までの割合を高めていくことです。そのためにAIチャットなどを活用しています。

亀岡 AIでどう来店につなげているのですか。

川﨑 依頼内容によっては顧客の部屋探しの条件に合う物件情報をAIが分析して自動で送ってくれるチャットサービスを使っています。物件情報を豊富に送ることで、来店の意向を高めます。現在3割はAIチャット経由の来店ですが、将来的には5割までに高めていきます。社員がやっていくことは、情報を多く提供する中で、顧客の求める物件のイメージを理解し、早期の来店に誘導していけば、物件がなくなる前に成約できます。

亀岡 これからは会社の名前を売っていくことも大切です。まずは、会社の名前、社長の顔が業界で知られるようになり、次のステージが組織づくりをしていくことです。
都内1棟マンションの受託営業をスタート

川﨑 今年から管理の専門部署を立ち上げ、管理受託に本腰を入れていきます。

亀岡 管理業界はこれから再編時代に突入します。鉄鋼王のカーネギーが何社もの製鉄会社を合併しできたのがUSスチール。経済界に大きな影響を及ぼしました。賃貸管理会社も飽和状態になっています。サブリース問題などがくすぶる中、異業種大手によるM&Aが一気に進むことも考えられます。

川﨑 なるほど。当社は法人の顧客を抱えていることが管理を増やしていく上で効果的になると考えています。企業の場合、滞納もしませんし、長期の契約につながる可能性もあり、空室を抱えるオーナーには魅力的な借主です。企業のニーズがある東京と大阪で30戸規模の賃貸マンションを持つ自主管理オーナーに対し営業をかけています。東京オフィスを出店したタイミングで参入しようと思っていたのですが、仲介が忙しく、4年遅れの参入になりましたが事業拡大の余地はあります。

亀岡 どうやって他社と一線を画すのですか。

川﨑 オーナーの資産運用コンサルティングができる管理会社になっていくことです。そのために、私自身も現在IREM JAPANの認定資格であるCPMという資格を取得するために研修を受けています。管理部は2人体制ですが、相続支援コンサルタントや、ファイナンシャルプランナーの資格を取得させています。オーナーのライフプランを基に、資産運用のアドバイスができる人材がいることが差別化になります。まずは毎年300戸のペースで着実に受託を増やしていきます。企業顧客に対しても、社員が中古のマンションを購入する際、仲介手数料の割引サービスをするなどの可能性もあります。これから進めていきたいのは、企業が保有する土地や工場、オフィスなどの不動産と、他の企業のニーズマッチングを行うことです。

亀岡 法人顧客を切り口にした多方向の事業展開ができるわけですね。

キャリアの選択肢を提示自ら輝く社員の育成目指す

亀岡 川﨑社長はずっと不動産業界ですか。

川﨑 大学を卒業後、大阪の仲介会社で6年間営業をしていました。自分の会社を立ち上げたのは、その場の流れでした。「自分が頑張れば、お客さんがついてきてくれる」そう考えてあまり重く考えず始めました。現在26人の社員がいますが、私の社長としての仕事は、社員にステージを与え続けることだと考えています。資格の取得を勧めるのも、社員に自信をつけてもらいたいという側面があります。仲介営業を極めるのか、法人顧客の開拓で成果を上げるのか、管理部門で資産コンサルタントになるのか、契約手続きに特化していくのか。社員のやりたいことに応じて、キャリアパスをつくっています。人に言われてやるのではなく、自ら進んで仕事ができること、「自ら輝く社員」づくりが私の経営者としての根底にあります。小さな会社であっても、従業員にとって魅力のある会社であれば、会社は成長していけます。

亀岡 まだ若いのですから、頑張ってください。

川﨑 どうもありがとうございました。

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川﨑 洋 社長

エリオン

川﨑 洋 社長

1976年11月1日生まれ。大阪府吹田市で育つ。98年に大学を卒業後、不動産仲介のアイ・ディ―・コミュニティーで6年間勤務し、社宅の仲介などを手掛ける。2007年にエリオンを設立。14年には東京・浜松町に2拠点目となる東京支店を開設。18年から賃貸管理事業も本格始動。座右の銘は一期一会。休日に3人の娘と共に食事に行くのが癒やし。

エリオン
本社所在地 : 大阪府吹田市江の木町1番38号 西谷東急ビル9F
設立 : 2007年  社員数 : 26名人  資本金 : 980万円円
事業内容 : 企業向け借り上げ社宅仲介、事務所仲介、転勤者住宅の管理、賃貸マンション管理など。
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経済評論家 亀岡 大郎

大正15年京城生まれ。新大阪新聞経済部長を経て、経済評論家となる。文藝春秋、サンデー毎日など一流紙で、経済・財界問題を中心に、精力的な活動を続ける一方で「自動車戦争」「ゲリラ商法」「IBMの人事管理」などベストセラー多数。

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