【築古を生かすコンバージョン・前編】事務所から住宅、利回り15%

エコラ, グッドルーム, Rバンク

物件紹介|2022年05月30日

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 地域の需要の変化に合わせてコンバージョンを行い、不動産の事業性を高めた物件事例を紹介する。コンバージョンすることの利点や難点、収益性などについて6社を取材した。

コンバーションとは

1か月で30戸で成約も

エコラ、事務所ワンフロア改修 住居7戸と収納庫完備

 築古再生事業を手がけるエコラ(宮城県仙台市)は、オフィスのワンフロアを7戸の賃貸住宅へコンバージョン。改修後の表面利回りは15%となった。

 物件は仙台市地下鉄東西線の大町西公園駅から徒歩4分に立地する、築38年になる10階建てRC造のオフィスビルだ。

 約400㎡のワンフロアだった空間が、専有面積約55〜60㎡の1DK2戸と1LDK4戸、約70㎡の2LDK1戸の計7戸と入居者専用のトランクルームへと生まれ変わった。家賃は6万5000〜8万5000円。改修費用は4000万円だ。改修前は物件オーナーの自社オフィスとして使用されていた。

 物件近辺に新たに地下鉄が開通し、周辺のマーケットが2016年あたりから住居地域へと変化しつつあった。需要の高まっている住居として貸し出すことで収益性を高められるのではないかと考え改修を決めた。

 改修の際には各部屋にバルコニーを設置するための設計に苦労したという。各戸に水回りの新設と配管工事を行った。

 加えて、入居者専用で1世帯あたり0.75畳ほどの広さのトランクルームを設置したことで部屋だけでは足りない収納機能を補っている。万人受けするような間取りやデザインで、カップル・DINKSが入居を決めた。

改修後のフロア 工事前のオフィスフロア

改修後のフロア(上)と工事前のオフィスフロア(下)

 百田好徳社長は「近年マーケットの変化による収益性の問題でコンバージョン事例は増加し、今後も増えると予想する。リノベーション・コンバージョンは時代に合わせて流動的に行えるため、外部防水や塗装、給排水・電気設備といったハード面さえしっかりしていればいつの時代にも適応できる」と話す。

 同社は、21年3月にも分譲マンションからホテル、SOHO、賃貸住宅を一体化した複合施設にコンバージョンした物件を手がけた。今後、中古不動産の再生事業を行い、特に古いビルの再生と供給に注力していく。

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エコラ
宮城県仙台市
百田好徳社長(45)

 

 

グッドルーム、社員寮再生で地域貢献コワーキング空間新設

 リノベーション事業を手がけるグッドルーム(東京都渋谷区)では、社員寮だった築30年の寄宿舎を共同住宅へコンバージョン。地域貢献がしたいというオーナーの意向もあり、一般住宅とマンスリーを合わせ持った賃貸住宅として再生。一般賃貸は募集後10日、マンスリー物件も1カ月で満室となった。

 同物件は東急田園都市線宮前平駅から徒歩3分に立つ信用金庫に併設するRC造9階建てのビル「TOMOS(トモス)宮前平」。

 信用金庫の社員寮として竣工したが入寮者が年々減少。多様化する社会ニーズに合わせ、「地域に開かれた場」として賃貸住宅に改修し、22年4月に運営をスタートした。

 1階ではこれまでどおり同信金が業務を行う。2階がエントランスで、元々食堂や厨房だった約223.23㎡の3階には、コワーキングスペース兼キッチンスタジオを新設した。

コワーキングスペース 改修前の食堂

コワーキングスペースとして生まれ変わった (上)と改修前の食堂(下)

 寮の住居部分だった4〜9階30戸のうち、4〜5階は1Kのマンスリー賃貸10戸、6〜9階はワンルームと1Kの一般賃貸20戸に改修。住居の専有部はそれぞれ約23㎡で、全戸家具・家電付きだ。

 共用部は食堂を事務所用途にコンバージョン。天井は既存の梁を生かして天井高を出した開放感のある空間に改修した。住居部分は、20代の単身者をメインターゲットとして、内装にいくつかのカラーパターンを用意した。

 寄宿舎の場合、水回りの設備を共用にしていることが多く、専有部が10〜15㎡と狭い場合には排水設備を入れることが難しい。今回は、各専有部にすでに排水管が通っていたため、用途変更がしやすかったという。

 家賃は一般賃貸が6万8000〜7万8000円と共益費、マンスリーは9万7700円(共益費、水道・電気代、インターネット、ラウンジ利用料込み)。改修費は約1億円だ。

 同社のリノベーション事業部の佐藤陽亮部長は「新型コロナウイルス下で社員寮のリノベやコンバージョンに関する問い合わせ数が2倍以上に増えている。SDGsの観点からも、既存の物件を生かし、持続的に利用できる物件が求められている。コンバージョンの需要は今後も増えてくる」と話した。

Rバンク、築90年の古民家が地域の交流拠点に

賃貸を複合施設に

 「始めは駐車場にする予定だったが、かつて宿場町として栄えた趣のある街並みを生かし、町に新しい価値を生み出したかった」。そう話すのは戸建て賃貸をコンバージョンし、複合施設を手がけたRバンク(東京都目黒区)の鈴木学取締役だ。

 築90年の木造戸建て賃貸5棟が「学・働・食」をコンセプトとした「SHINAGAWA(シナガワ)1930」に生まれ変わった。

 同施設はJR京浜東北線品川駅より徒歩10分に立地する。築年数が古く、安全性を考え入居者を退去させざるを得ない状況だったという。

部屋を仕切っていた柱

改修前の室内

部屋を仕切っていた柱はインテリアの一つとして部屋になじんでいる(上)と改修前の室内(下)

 現在はカフェ、コワーキングスペース、酒屋、建築会社2区画の計4店舗が入った複合施設として生まれ変わった。近くにオフィス街があるため、特に平日の昼間はカフェやコワーキングスペースの利用者でにぎわっている。

 コンバージョン前は、木造2階建て3DKの戸建てが5棟並んでいた。躯体や柱、窓サッシはそのままに、屋根と外壁、床材などは改修。

 住宅は部屋を区切って使用する部屋が多い一方、店舗は間口や空間を広くしなければならない。そのため部屋を仕切っていた既存の柱はインテリアの1つとして空間に溶け込ませている。

 鈴木取締役は「時代の変化に即した用途で物件を再生できる点がコンバージョンのメリット。一方で法的制限や時間と費用の問題もあるため、オーナーの意向や物件の立地・特性を十分生かせるようにすることが重要だ」と話した。

(2022年5月30日4・5面に掲載)

関連記事▶【築古を生かすコンバージョン[前編][後編]】

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