東日本大震災から11年、原子力発電所の事故の影響で帰還困難区域となっていた福島県双葉町でアパートの稼働準備が進む。同町出身のオーナーが、町の復興のため、物件の運営再開に向け動き出した。今春の避難指示解除が計画される中、6月の入居開始を目指す。
震災から11年、住まいで復興
2月12日、復興庁は、東京電力福島第一原発事故に伴い避難指示などが出た福島県双葉町を含む12市町村への帰還促進や移住人材の確保を目的に、移住者の住宅確保支援を強化する方針を固めた。
同日、福島市で開かれた「原子力災害からの福島復興再生協議会」の公表内容には、移住者が入居する賃貸住宅の家賃低廉化補助や、居住用空き家の改修費などの補助が盛り込まれた。
除染後初の住宅来訪
6月に避難指示解除となる予定の双葉町に2棟6戸のアパートを所有する大沼勇治オーナー(茨城県古河市)は、自身も被災し、茨城県に拠点を移し生活している。双葉町の物件を稼働することで、故郷と接点を持ち続けられ、町の復興にもつながるとし、2017年12月から入居再開に向け、準備を進めてきた。
22年1月15日~22日、所有する2棟のうち、自宅と隣接する1棟について室外部分の除染作業が行われた。その間の20日には、物件に電気と水道が通り、1週間ほど遅れてガスも利用可能となり、住宅としての姿を取り戻していった。
大沼オーナーは、2月25日、アパートに隣接する自宅のハウスクリーニングが完了し、約11年ぶりに靴を脱いで家に上がった。「電気や水道の開通もそうだが、当たり前のことに感謝の気持ちを強く抱いた」と振り返る。
入居対象は復興関係者
除染作業を行ったアパート1棟のハウスクリーニングは、入居開始予定の6月に合わせ、4月ごろに行う見通し。インフラ整備は完了済みで、入居開始の準備は万端だ。同物件は2階建て全2戸で、家賃は共益費込みで6万3000~6万5000円を予定する。入居者ターゲットは、東京電力(東京都千代田区)の復興作業関係者。8月末には、拠点を県外に移していた町役場が新設し再開する予定だ。双葉町は避難指示解除から5年で2000人の生活人口を目指し、復興の道を歩んでいく。
大沼勇治オーナー(46)
茨城県古河市
(2022年3月14日1面に掲載)