おとり広告調査 「遭遇経験あり」46% 無くならない理由は
データ|2023年03月06日
不動産の大手ポータルサイト「LIFULL HOME`S」を運営しているLIFULL(東京都千代田区)が、2022年6月におとり広告に関する調査を実施しました。その結果、住宅総合検索サイトで賃貸検索を利用した人のうち、約半数(46.8%)が「募集終了物件の遭遇経験あり」と回答。賃貸業界で長らく課題となっているおとり広告が、未だに潰えていないことを実証する結果でした。
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おとり広告の被害額 推定30億円
おとり広告とは、すでに申し込みが入っているにも関わらず、入居募集中として掲載されている物件広告です。エンドユーザーが問い合わせをしても、該当物件には入居ができないため「おとり」と表現されています。
今回、LIFULLはおとり広告による被害の把握を目的として、全国の18~69歳の男女9,104人を対象とした実態調査を実施しました。直近3年間の中で、ポータルサイトなどの住宅総合検索サイトで賃貸検索を利用した人のうち約半数(46.8%)が「募集終了物件の遭遇経験あり」と回答。また、20代に限定すると数値が上がり、52%という結果となりました。
こうしたおとり広告に関する被害内容は様々です。ライフルの調査では、おとり物件に遭遇したエンドユーザーの半数以上は、不動産会社や現地に足を運んでいるとして、交通費を主とする年間の被害額は推定30億円に上る。と発表しています。その他、物件を検索する手間や時間なども被害に含まれるため、エンドユーザーが不利益を被る構造が、問題視されています。
物件広告の定額料金制、おとり広告に拍車
ではなぜ、おとり広告が出回ってしまうのでしょうか。LIFULL事業支援ユニット長の加藤哲哉さんは「広告を出稿する不動産会社が、削除し損ねていることが大きな要因の一つ」と解説します。物件に申込みが入った時点で、掲載中の広告は全ておとり広告扱いとなります。物件の管理会社から出稿主の仲介会社へ伝えることに時間がかかり、さらに仲介会社の担当者が広告を取り下げるまでの時間も加えると、リアルタイムの情報がサイトに掲載されている状態を保つのは困難です。
ファックスでのやり取りや、紙での物件資料が流通しているほど、紙文化が根強い不動産業界で、ウェブの即時性に対応できる企業は多くはありません。また、定額で点数無制限に物件広告を掲載できる。といった一部ポータルサイトの料金形態にも拍車がかかり、募集が終了している物件が流通する事態を引き起こしているようです。