CHINTAI(チンタイ:東京都港区)は2023年11月、奥田倫也氏が代表取締役社長に就任した。新社長体制の下、若年層顧客と質の高い反響の獲得を目指す。
若年顧客拡大に向け取り組み
学生の認知向上へ
賃貸物件検索サイト「CHINTAIネット」を運営するCHINTAIの新社長に就任した奥田社長は新トップの方針として若年層顧客の取り込みと反響の質を高めることの2点を掲げる。
一つ目として、若年層の顧客の獲得を進める。同社では06年から学生の認知度を上げるための取り組みを始めていたが、奥田社長の下、さらに積極的に推進。これから賃貸住宅に住む可能性が高い学生を支援することで、将来の顧客の獲得を目指す。
そのための施策として、22年からは関連会社で、コンサートや演劇などの企画・制作などを行う光藍社(東京都新宿区)を通して、無償で招待するなど学生が芸術に触れる機会を提供する。23年からは若年層に人気のアイドルグループをイメージキャラクターに採用するなど、学生からの認知度を高める取り組みを継続的に行う。
奥田社長は「20〜30代の利用者の認知と利用率を向上させるために、若年層に対して種まきをする」とコメントする。
物件提案を強化
二つ目が、反響の質の向上だ。「LINE」公式アカウントの「CHINTAIエージェント」を通して、物件の提案を行うサービスを強化する。24年1月末時点の友達登録者数は約78万人だ。
CHINTAIエージェントは希望条件を登録すれば、おすすめの物件を自動で提案してくれるサービスだ。忙しくても部屋探しを効率的に進めることができる。希望条件に近い物件の提案も行うので、顧客の選択肢の幅を広げる。そのため、確度の高い反響を得られ、来店率も上がっているという。
今後は、CHINTAIエージェントの機能を強化し、登録者を増やしていく。質の高い反響の獲得により、仲介店舗も成約に至るまでに提案の件数や、内見案内をする手間を減らすことができるようになると同社はみる。
まずはCHINTAIエージェントの友達登録者数100万人達成を目指していくとする。
「当たり前」を議論
奥田社長は13年に甲南大学経済学部を卒業後、新卒で野村証券(東京都中央区)に入社。長野支店へ配属となった。営業職として資産コンサルティングを行い、営業成績が支店での団体成績で1位、個人では北日本エリアでの1位になった。
17年には東京都の荻窪支店に異動。そこで大学の同窓会に関わる機会があり、CHINTAIの前社長で現会長の佐藤茂氏と出会った。
20年に上場・非上場企業の社長や法人、創業家の家族の資産を管理する専門部署のウェルス・マネジメント部のサポートを行う部署であるプライベート・バンキング業務部を経て、21年にウェルス・マネジメント部に異動した。
奥田社長は「資産管理業務では経営者目線を持って、顧客の資産運用に対してアドバイスを行う。そういった考え方などを佐藤会長に評価され、引き抜きの誘いは受けていた」と話す。
野村証券でやりたいことが実現できていたので転職するつもりはなかった。しかし、23年の春からはCHINTAIの社長になる打診を受け、自身でもいつか会社を経営したいと思っていたため、承諾し、今回の社長就任に至った。
同社社員の平均年齢は35歳で奥田社長とほぼ同じだ。年齢が近い社員も多いため、社内で社長に話しやすい雰囲気をつくることができ、多くの社員の声を拾えるようになると奥田社長はみる。
「業界外から来たこともプラスに働くと考えている。業界の『当たり前』についてゼロから議論するきっかけをつくることができる。今まで見落としてきた発展のヒントや課題も拾いやすくなると考えている」(奥田社長)
(野中)
(2024年2月12日20面に掲載)