公益社団法人全日本不動産協会(東京都千代田区:以下、全日)が会員向け業務支援システムを大幅にリニューアル。全日の秋山始理事長と、同システムの開発を担当したイタンジ(東京都港区)の野口真平社長が対談を行った。
業務支援システムを大改造
中小企業が対象 効率化サポート
―「ラビーネット」を大幅にリニューアルされました。一番の狙いは。
秋山理事長 何といっても会員企業の業務効率化支援です。人口減少の局面にありながらも発展できる企業であるためには、ツールをいかに使いこなせるかにかかってきます。新型コロナウイルス禍で事業環境は大きく変わりました。テレワークがすぐに実行され、大変驚きました。
―電子契約が完全解禁して、もう1年になります。
秋山理事長 電子契約も、IT重要事項説明(IT重説)もどんどん当たり前のものになります。やろうと思った時にすぐ開始できる準備をしておかなくてはなりません。ですが、当会の会員企業は従業員数1~2人の家族経営の企業が多くを占めています。DX(デジタルトランスフォーメーション)化のためのコストが高いこともあり、システムを導入したことによる業務効率化のメリットが大きくないのです。中小、零細企業のDX化を協会として支援すべく、2021年ごろからラビーネットのリニューアルを検討してきました。
26万件の情報追加 取引機会拡大狙う
―「ラビーネットBB by ITANDI(バイ イタンジ)BB」とイタンジの業者間流通サイト「イタンジBB」のデータ連携が可能になりましたね。
野口社長 はい。これにより、全日会員・非会員間の取引機会を拡大します。保有する物件情報はイタンジBBで賃貸を中心に26万件、全日で賃貸が8万5000件、売買が6万5800件です。相互検索ができるようになりました。秋山理事長 これまでのラビーネットは会員間だけで物件情報を流通させるものだったため件数が限られ、顧客の要望に合う物件を提供できないことに直結します。これは、営業機会を大きく損なっているということで、イタンジのデータを共有させてもらうことにしました。会員・非会員の垣根なく取り扱える物件が増えたことで、顧客へ提案する物件の選択肢が広がります。
ー物件連動機能が無料で使えるそうですね。
野口社長 それも大きなポイントです。会員企業の業務効率化に大きく寄与すると考えています。一度の入力で複数の民間ポータルサイトに出稿できるコンバート機能が、1日100件まで無料で利用できます。すでに有料サービスを使っている企業にとってはコストカットに直結します。複数のポータルサイトに入力する手間を省くことができ、業務負担の軽減につながります。業者間流通サイト「REINS(レインズ)」とも連携し、物件情報や成約状況の反映が可能です。加えて、入居申し込みや家賃債務保証会社への審査依頼、IT重説や電子契約などのオプション機能も搭載しており、一気通関でDX化を支援します。
秋山理事長 特に賃貸仲介に関しては、集客の費用負担が大きいです。会員企業のコスト削減にも効果があると考えています。
―会員企業へのフォロー体制もありますか。
秋山理事長 イタンジによる利用マニュアル動画を配信しています。個別のオンライン研修やチャットでのサポートも実施します。
―今後の展開は。
秋山理事長 現在は賃貸仲介業務に関わるDX化が多いですが、今後は売買に関わる機能も追加していく予定です。また、契約書の書式は、会員企業の経費削減や顧客の利便性向上のためにも、将来的に業界全体で統一すべきだと考えています。今後も、会員企業の経営課題改善の支援を行っていきます。
(2023年5月1・8日20面に掲載)