レオパレス21(以下、レオパレス:東京都中野区)が家主に対して起こしていた賃料の減額請求訴訟が、4月25日に和解で決着した。
当初は、賃貸住宅1棟とそれに付随する駐車場を合わせた1物件が訴訟の対象となっていた。今回の和解では、被告の家主と、家主が代表を務める法人の所有する他の3物件を合わせた全4物件の借り上げ賃料の減額について、まとめて解決することになった。
2棟据え置き、2棟は約10%
和解の結果、4物件のうち2物件の賃料は据え置き。1物件は、従来契約より約32%少ない約112万円への減額請求をレオパレスが行ったのに対し、最終的に約149万円で双方が合意。もう1件は、レオパレスの求めていた約133万円に対し、約150万円で合意した。賃料改定となった2棟の平均の減額率は10%程度だった。
4物件共に2028年4月末まで賃料改定協議を申し入れないこととした。加えて、今回の訴訟に関し、和解条項に定めるもののほかに両者の間に債権債務がないとした。その結果、レオパレスが請求していた、21年8月から22年8月までの請求減額分と支払い済み借り上げ家賃との差額等の支払いを求めないとしている。裁判費用は各自の負担となった。
今回の裁判でレオパレスは、被告である家主へ支払っていた物件の借り上げ賃料に、近隣物件の賃料相場との乖離(かいり)が認められたとして、従来の契約賃料より大幅な減額を求めていた。
これに対し、家主はレオパレスによる賃料減額請求は
①借地借家法第32条1項に定められた「土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同権の建物の借賃に比較して不相当となった」とする要件を欠く
②賃料額が事情の変更により不相当になったことを証明できていない
として、レオパレスと争う姿勢を見せていた。
-----------
家賃減額問題のこれまでの経緯についてはコチラも
-----------
争点はレオパレス提示減額賃料の正当性
争点になったのは、レオパレスが請求した減額賃料の妥当性だったが、正式な不動産鑑定評価が行われる直前で、両者の話し合いでの解決となった。
レオパレスは「家賃適正化」として、21年4月以降のマスターリース契約分について、家主との合意なしに、一方的に減額した借り上げ賃料を振り込んだ案件が問題化。今回被告となった家主は、一方的な減額に対し、従来賃料の未払い分の支払いを求める裁判を21年に起こした経緯がある。 裁判の間に従来賃料分の振り込みがあり、賃料減額が別裁判で認められるまではレオパレスが従来賃料を支払うという和解が成立した。このためレオパレスの「適正家賃」については争われず、今回の裁判でその妥当性が俎上(そじょう)に上がった。
家主側の弁護士を務めた、鈴木沙良夢法律事務所(東京都新宿区)の鈴木沙良夢弁護士は「借り上げ賃料については、物件の条件により大きく異なるので、今回の裁判が他の家主の参考になるとは限らない。ただ、レオパレス側が和解をする姿勢を見せたことは、同様の裁判を抱えるオーナーにとっても有益な情報になるのでは」と話した。
本紙はレオパレスに対し、現在進行中の賃料減額請求訴訟は何件あるかを聞いたところ「開示していない」とコメントした。
「近隣相場との乖離がある場合のみ、賃貸住宅管理業法に基づき、交渉を行う」(レオパレス広報担当者)
(2023年5月22日1面に掲載)