6月に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空家対策特措法)」の改正法(以下、改正法)は、12月半ばごろ施行される予定だ。これに伴い、一部で空き家に関連するビジネスへの関心が高まっている。空き家の管理と活用、特定空き家の解体に重点を置く、改正法のポイントとともに、各事業者の現状をまとめる。
管理FCへの相談増加も
所有者の責務強化 接道規制の緩和も
空家対策特措法は、管理が行き届いていない空き家への活用を定めた法律だ。個別の空き家に対しては「特定空家」になってからの対応のみを規定しているため、その前の法整備が必要であると、今回の改正法の公布に至った。
改正法のポイントは大きく分けて五つ。
一つ目は「管理不全空家」の定義が新設されたこと。管理不全空家に認定された場合は固定資産税の住宅用地特例による減税措置がなくなり、納付額が3~4倍になる。管理不全空家の具体的な内容は、今後国土交通省のガイドラインで指針を示していく。
二つ目は「空家等活用促進区域」の設定だ。同区域は、各市町村長が、観光振興地域や中心市街地の活性化を目的として指定する。対象区域では、空き家の活用促進のため、建築基準法や都市計画法が一部緩和される。
例えば接道規制では、前面の幅員が4m未満でも、安全策を講じることで建て替えや改築が認定されることになる。また、用途規制に関しても制限外の用途への変更が可能となる。
三つ目は、「空家等管理活用支援法人」の創設だ。市区町村長がNPO法人などを指定し、空き家の所有者への啓蒙(けいもう)や相談対応を行う。
四つ目は、市区町村による特定空家への対処に強い権利を与えることだ。具体的には、特定空家の除却などの代執行手続きを円滑化した。災害時などの非常時に、除却や修繕など、事前の手続きを省略して対処でき、これらの代執行の費用は所有者から徴収する。
五つ目は所有者の責務を強化したこと。国、自治体の施策に協力する努力義務を課す。
法律へ関心高まり 周知はこれから
6月の改正法公布を受けて空き家関連ビジネスに何か影響が出ているのか。
空き家管理のフランチャイズチェーン(FC)事業「日本空き家サポート」を展開するL&F(千葉市)では2022年末ごろから問い合わせが増えてきたという。23年6月前後の問い合わせ数は、22年同月比で約3倍となった。23年8月末時点のFC加盟企業は170社。22年12月から約10社、加盟店が増加した。空き家管理の事業化について、不動産会社からの相談・問い合わせが増えた印象だという。
空き家管理のイメージ(提供=L&F)
森久純社長は「15年に空家対策特措法が成立したときは議員立法だったが、今回は内閣立法。条文も新設が多く、ようやく国が本気になったと感じている」と法改正を好意的に促える。
「今回の改正は待ち望んでいた内容」と話すのは、空き家の活用事業「アキサポ」を手がけるジェクトワン(東京都渋谷区)の大河幹男社長だ。同社への空き家所有者からの問い合わせ件数は、22年度比約2倍に迫る勢いで、空き家対策への関心の高まりを実感しているという。
一方、改正法に懐疑的な声もある。一般社団法人全国古家再生推進協議会(大阪府東大阪市)の大熊重之理事長は「改正法の実効性に疑問が残る」と話す。
行政による代執行や管理不全空家の認定が進むかが、現状ではまだ不透明だからだ。実際に、15年に空家対策特措法が成立してから行政代執行した件数は、22年3月末時点の累計で140件にとどまる。
現状では、改正法の影響はまだそれほど大きくないといえそうだ。今後の省令やガイドラインの制定に期待がかかる。
(柴田)
(2023年9月18日1面に掲載)