企業研究vol.134 ビーフンデザイン一級建築事務所 進藤 強 社長

ビーフンデザイン一級建築士事務所

インタビュー|2021年11月23日

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ビーフンデザイン一級建築士事務所 東京都渋谷区 進藤強 社長(48)

 賃貸住宅の設計を得意とする建築家はいても、自身で中古不動産を購入してリノベーションしたり、土地を購入して新築する建築家はそう多くないだろう。「まずは自分でやってみる」を信条に事業を展開しているのが、ビーフンデザイン一級建築士事務所(東京都渋谷区)だ。創業13年で賃貸住宅やホテルなどの新築を設計。リノベーションも含めると合計134棟の設計を手がけてきた。「空間だけを貸す時代から空間と出来事・体験、愛を貸す時代へと変わる」と進藤強社長は話す。

創業13年で賃貸住宅・ホテル中心に新建築計90棟

不動産を積極的に購入 家主としての感覚つかむ

―近年新築の着工数が減少している中、御社は順調に設計実績を増やしていますね。

 2008年に一級建築士事務所を創業してから13年で、新築90棟、リノベーション44棟の設計をすることができました。設計してきた建物は、集合住宅、ホテルが中心です。おかげさまで多くの人から相談をいただいています。14年から不動産情報サイト「SMI:RE(スマイル)不動産」を開設し、設計した不動産を紹介したり、オーナーの理解を得て積極的に完成内覧会を開いて多くの人に見てもらったり、セミナーを開くなど、広く知ってもらっていることが大きいです。20年からは「ユーチューブ」の「ゆっくり不動産」という56万人も登録者がいるチャンネルで、設計した建物のうち15物件を紹介していただき、そこからの反響もあります。

―本業は建築家ですが、不動産も自身で購入・所有しています。

 私は経営が大好きで、自身を設計が得意な家主と位置付けています。不動産については、05年、32歳のときに土地7坪、床面積19坪という極小中古鉄骨戸建てを購入したのが始まりです。当初は賃貸併用住宅としてリノベーションして活用し、その後、事務所とカフェ、ホテルとシェアキッチンなど、形を変えながら運営しています。本格的に不動産投資を始めたのは13年。これまで14棟購入し、そのうち新築したのは7棟、一部売却もしているので、現在8棟を所有しています。

シェアキッチンの写真

事務所がある代々木の物件にはシェアキッチンとイベントも実施している中庭がある

―自身でも所有していると建てた後のこともわかります。

 賃貸経営についてわかると提案の幅も広がります。私の場合は、常に多くの選択肢を持っておくことを重視しています。将来、時代に合わせて変更して活用できるように設計するのです。例えば、16年にホテル事業を始めました。東京都板橋区の最寄り駅から徒歩9分の場所に新築したホテルは、賃貸住宅として運営するよりも3倍の売り上げになりました。ポイントは、個室にキッチンも含めた水回りを設置したことと宿泊者との交流を重視した点でした。ただ、新型コロナウイルスにより、ホテル事業は売り上げが減少し、20年から賃貸住宅へと転用しています。こうしたリスクヘッジも含めた提案を自身の経験からできるのが強みです。

―確かに自身の経験を生かした提案には説得力があります。

 一方で、建築の相談に来たお客さんに、「建てないほうがいいです」と言って自分の仕事の機会をなくすこともあります。でも、お客さんに自分の尺度で建てないほうがいいとか、不動産を買わないほうがいいとかを言えないとダメだと思っています。私は自分の仕事に責任を持ちたい。90棟の新築設計を手がけてきたということは、90棟分のローンのシミュレーションもしています。いざ何かあったときに買い取ってもいいと思って仕事を受けています。

人と関わることを重視 地域活性を考えて展開

―進藤社長は当初、サラリーマン家主からの設計依頼が多かったですね。自身が不動産を所有しようと思ったきっかけにもなっているのでしょうか。

 設計事務所は狩猟型のビジネスなので、常に仕事を取ってこないといけません。一方賃貸不動産業は安定した収入になります。私は仲間の建築家にもよく話しているのですが、建築家はもっと不動産の勉強をして、不動産を買ったり、借りたりして、企画から運営まで自分で経験してみると、いろいろ幅が広がり、街が元気になり建築設計の仕事にもつながります。

―一から不動産を購入して賃貸経営をするのは簡単ではありませんが、知り合いのオーナーに教えてもらったのですか。

 私は収益不動産情報サイト「健美家」のコラムや講演をするサラリーマン出身家主の赤井誠さんのアパートを設計させてもらったことで、収益不動産を購入して経営するうえで大切なことを教えてもらいました。数字のことだけでなく、入居者と関わることでクレームも滞納もなくなる、人と関われ、と教えてくれたのが赤井さんです。不動産の師匠です。私は管理も受けることがあるのですが、入居者から夜「エアコンが壊れた」と連絡が入るとすぐに駆け付けます。社長の名刺を渡すと、入居者も驚いて、その後話をして仲良くなるとご飯を食べに行きます。そうすると、もうファンになってくれるので、退去後の部屋もきれいです。私にとって不動産は趣味。趣味で入居者から「ありがとう」と言われて、家賃をいただける、そして、時々皆でバーベキューをするのが楽しいです。

―今後の事業展開はどのように考えていますか。

 地域の活性化です。18年に現在事務所を構える東京・代々木に賃貸併用住宅を購入し、19年に隣接する不動産を購入しました。この場所で、ホテルや賃貸、シェアキッチンなどを運営していますが、例えば朝食をとりながら地域の子どもが英語を学べる場を提供したり、シェアキッチンは将来独立を目指すシェフの入居者が優先的に使えます。この地が楽しくなるような街づくりに注力していきたいです。

元スタッフが壁に描画している写真

元スタッフで現在作家として活動するフランス人女性が事務所が入る建物の壁にアートを施す

趣味はバーベキュー

 16年からコロナ前までほぼ毎月29日に開催していたのが「B EFUN(ビーフン)29肉会」。「肉を焼くのが好きなので、始めた」と話す進藤社長は、子どものころ親が仕事で忙しくて、世話をしてくれた祖母から工作とご飯をつくるのがうまいと褒められたことがきっかけでバーベキューが好きになったという。

 親しい友人に声をかけて、自身が所有し運営するシェアキッチンを使って開催。バーベキューも機会があれば行い「スタッフからやり過ぎと言われる」こともあるとか。皆がおいしそうに食べる姿を見て交流を図れるのが楽しいと語る。

肉を焼く進藤社長の写真

肉を焼くのが好きな進藤社長

 

会社概要

社名:ビーフンデザイン一級建築士事務所
所在地:〒151-0053 東京都渋谷区代々木3-15-1 SMI:RE YOYOGI ANNEX 101
設立:2012年
資本金:500万円
事業内容:建築設計、コンサルティング(グループ会社で賃貸管理、ホテル運営、シェアオフィス運営、不動産サイト運営、飲食事業)を行う

会社メモ

2008年一級建築士事務所ビーフンデザイン創業、12年ビーフンデザインを法人化。14年に不動産サイト「SMI:RE(スマイル)不動産」を開設。16年にホテル事業開始。創業からこれまで新築90棟、リノベーション44棟を設計。

社長メモ

1973年兵庫県生まれ。96年京都精華大学美術学部デザイン学科建築専攻卒業後、アーキテクトン米田明に師事。2001年ビーフンデザイン共同設立。08年一級建築士事務所ビーフンデザイン創業、12年株式会社ビーフンデザイン一級建築士事務所を設立し、代表取締役就任。

(2021年11月22日・29日15面に掲載)

おすすめ記事▶『企業研究vol.133 シェア180 伊藤 正樹 社長【トップインタビュー】』

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