【解説記事】みなし仮設住宅って何?災害時における役割と課題
管理・仲介業|2024年02月13日
1月1日に発生した能登半島地震では、4万棟を超える家屋が被害を受けました。被災者の住宅確保が急務となっています。そうした中で、賃貸住宅の空室を活用する、みなし仮設住宅の提供が進んでいます。今回は災害時に重要な役割を果たす、みなし仮設住宅について解説します。
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能登半島地震、住まい確保急務
みなし仮設、供給足りず
【目次】
・みなし仮設住宅の仕組みと役割
・みなし仮設住宅の課題点
みなし仮設住宅の仕組みと役割
みなし仮設住宅とは、賃貸住宅の空室を国や自治体が借り上げて、被災者へ一時的に提供する住宅のことです。災害発生時におけるすべての空室が対象となるわけではなく、所有者が了承した物件がみなし仮設住宅として扱われます。各自治体で罹災(りさい)証明書の発行などの手続きを行った被災者が、登録されたみなし仮設住宅の中から住居を選択するという流れになります。
みなし仮設住宅に被災者が入居できる期間は最長2年。その間の賃料は自治体から支払われます。入居者(被災者)が生活を立て直して別の住宅へ転居した場合は、退去の時点でみなし仮設住宅としての役割は終了し、賃貸住宅の空室に戻ります。また、契約期限の2年を過ぎても当該物件に住み続けたいと入居者から要望があった場合は、普通賃貸借契約に切り替えて契約をし直す場合もあります。
このように、災害時において賃貸住宅の空室はみなし仮設住宅として大きな役割を果たします。また、最長2年間は被災者が入居するので、入居後の定期的な訪問や周辺住民への理解喚起など、管理会社にとっては長期的な対応も必要となります。
では、ここからはみなし仮設住宅の課題についてお伝えします。
みなし仮設住宅の課題点
一つ目は、需要と供給のミスマッチが起こりやすい点です。提供されるのは、あくまで空室です。例えば単身物件のみなし仮設住宅が多かった場合、ワンルームや1Kなどの部屋は多数提供可能です。一方で、被災者が複数人での入居を希望した場合、単身物件では生活が不可能です。結果、住居に困る被災者がいる中でみなし仮設住宅が余る事態が起こります。
二つ目は、入居後の生活についてです。みなし仮設住宅の入居に際して、所有者や管理会社は基本的に入居者を選ぶことはできません。また、被災直後は被災者の心身が普段通りでない場合もあります。そのため、入居後に騒音問題を起こしたり、近隣住民とトラブルになるリスクが高まります。これらの対応は管理会社が行いますが、通常のトラブル対応とは状況が異なるため、解決までに手間がかかってしまいます。こうした事態を防ぐためには、自治体には被災者のメンタルケアや入居後の支援などの対応が求められます。
以上が、みなし仮設住宅の解説と課題点です。災害発生時の対応の流れを把握するうえで、みなし仮設住宅の役割や運営方法について適切に理解しておく必要があるでしょう。