賃貸事業とは切っても切れない関係にある家賃債務保証会社。その家賃債務保証業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)と業務効率化をもたらすサービス「家賃保証クラウド」を提供し、同領域の先駆者的な位置に立っているのがリース(東京都新宿区)だ。同社の中道康徳社長に起業までの歩みやサービスについて聞いた。
個人信用に着目 いびつな構造を解消
―まず初めに御社の事業について教えてください。
家賃債務保証会社の業務をサポートする家賃保証クラウドのシステム開発と提供が、現在メインとする事業です。本サービスでは審査業務、契約管理業務、滞納管理督促業務という一連の業務をデジタルに置き換えることで効率化できます。導入企業はイニシャルコストゼロで、リスクチェック、自動帳簿作成、オートコールなどの機能を利用してもらうことができます。クラウドでこうしたサービスを提供しているのは当社のみで、現在競合他社がいない領域ということもあり、リリースから約2年半で、業界全体の1割にあたる約30社の企業に導入いただいております。
―起業の裏にはどんな思いがあったのですか。
「個人の信用価値を最大化する」という当社のミッションには、私自身の経験が大きく反映されています。会社員だった頃は、賃貸借契約や住宅ローンの締結に困ることはありませんでしたが、これが、いざ独立すると個人の信用だけでは契約できないということを体験しました。そこに、個人の信用度を基に個人のお金が集まって成り立っているマーケットでありながら、その信用度を法人が支えているという、この世界のいびつな関係を感じたのです。
―確かに、働き方の多様化で、個人の信用度の評価は難しくなっていますね。
特に不動産に関しては、個人の信用を得られなければ、家を買えない人、借りられない人はますます増えると思います。そうはならずに、さまざまな人が選択肢を持つことができる社会をつくりたいと思いました。
―創業から6年。どのような歩みでしたか。
不動産会社あるいは家主というのは、やはりどうしても知名度の高い企業に勤めている人を入居させたいという傾向があります。そのニーズと入居希望者とのギャップを埋めるために、初めの3年間は自社で家賃債務保証事業を展開し、その中で起こる事象や対応の状況を知る実証実験のようなことをしてきました。そうして過去のデータでは手に入らない個人事業主やフリーランスの情報を蓄積しながらシステムに反映させてきました。私自身、不動産業界に長く身を置いてきて、この業界が新規参入を受け入れやすい体制ではないことをよく知っているので、業界の人たちと同様の苦労を重ねながら、「同じ釡の飯を食べる仲間」として受け入れてもらえる実績を築いてきた感じです。
―遠回りに見えるようで、中長期的な視点でいえば、「近道」をしてきたということですね。