志乃丘商事、管理2300戸 公営住宅受託で成長

志乃丘商事

インタビュー|2024年05月22日

 8月で創業53年を迎え、メイン商圏の石川県小松市で賃貸住宅の管理シェア約15%を誇る志乃丘商事(石川県小松市)。人口減少が進むエリアでの成長の選択肢として、高齢入居者の受け入れにアクセルを踏む。他社と同じ土俵で戦わない、差別化戦略について篠岡沁一郎社長に話を聞いた。

高齢者受け入れに商機見出す

小松でシェア15%

 志乃丘商事は、公営住宅の管理を強みに持つ。篠岡社長は「メイン商圏の小松市は、法人や学生など、突出した賃貸住宅需要が見られないエリア。新たな事業の柱として、公営住宅の管理に注目した」と話す。

 管理戸数2300戸のうち、5割超を占める1200戸が市営住宅だ。一般の賃貸住宅は、小松市を中心に隣接する白山市、加賀市、能美市で1100戸を管理。年間10戸ペースで純増させてきた。特に小松市内の管理シェアは約15%となる。オーナーの属性は、6割が地主系だ。

 同社の創業は売買仲介事業。1971年に、篠岡社長の父がゼネコンと不動産会社の二つの会社を設立した。ゼネコンは倒産し、もう1社の不動産会社が現在の志乃丘商事として事業を継続している。篠岡社長は、明治大学の建築学科を卒業後、北陸エリアで展開するゼネコンに入社。86年に家業に戻り、93年に2代目に就任した。

 篠岡社長がトップに就いてから、既存事業として行っていた売買仲介に加え、賃貸管理、賃貸仲介と事業を拡大してきた。管理は、創業時にグループだったゼネコンが建築した賃貸住宅や売買仲介で接点を持ったオーナーから受託。JPMC(東京都千代田区)のパートナー企業に加盟することなどにより、着実に管理戸数を増加。2018年ごろには1000戸を突破した。仲介事業は、不動産フランチャイズチェーンの「ピタットハウス」に加盟する。

 事業構成比は、売上高のうち、賃貸管理が4割、賃貸仲介が3割、売買仲介が2割、公営住宅管理が1割。

 従業員は18人で、小松市に本社兼店舗、金沢市に仲介店舗を置き計2拠点を構える。

JVで運営効率化

 公営住宅の管理は、同社の生き残り戦略でもある。小松市の主要産業は製造業だが、従事者は地元住民が多く、単身で暮らすための賃貸住宅のニーズは高くないという。大学や専門学校は近隣地域の金沢市に集中していることから学生需要も低い。

 そんな商圏の特性を踏まえ、新たな事業として同社が初めて公営住宅の管理受託に参入したのが2012年。白山市で555戸を受託し、12年がたつ。次いで22年に能美市で45戸、24年4月からは小松市で600戸を受託し、合わせて1200戸の市営住宅の管理を手がける。

 企画競争を勝ち抜き、3地域の公営住宅を管理する同社だが、「難しいのは、各地域によって公営住宅に関する条例が違うこと。一般住宅の管理で培った知識を、公営住宅にも活用するための働きかけを行ってきた」と篠岡社長は振り返る。

 例えば、20年ごろには、管理業務の円滑化を目的に白山市の市営住宅で家賃債務保証会社の利用を市に提案し、採用された実績がある。当時、石川県内の公営住宅における家賃債務保証会社の導入は、初めての事例となったという。

 公営住宅は、定められた年間の管理委託料の中で、入居者からのクレーム対応、家賃集金をサポートするための呼びかけや建物修理、火災報知器などの定期点検を行う。加えて、入居者の収入によって家賃が決まるため、毎年確定した家賃を入居者に報告する業務も必要だ。

 規模の大きい白山市と小松市の物件は、共同企業体(JV)で管理を受託。管理業務のノウハウ提供や事務処理を志乃丘商事が、現場対応をJVの建物管理会社が担っている。JV方式を採用することで、限られた社員数で公営住宅1200戸の管理業務を遂行できている。

信頼性の〝看板〞

 同社がこれから強化していくのが、単身高齢者や外国人などの住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)の獲得だ。そのために、「公営住宅の管理」という実績が、要配慮者からの信頼を獲得する看板機能を果たしていくことを狙う。

金沢の店舗外観

仲介事業を行う金沢の店舗外観。要配慮者の受け入れを看板でPRする

 篠岡社長は「金沢市に本社を置く大手不動産会社の中には、小松市に拠点を持つ会社もある。ただでさえ人口が減少しているエリアで大手と戦うためには同じ土俵では通用しない」と話す。

 全国的に増加傾向にある単身高齢者の割合は、小松市にも当てはまる。加えて、製造業が盛んであることから、工場勤務の外国人労働者が一定数おり、賃貸住宅需要が見込めると篠岡社長はみる。

 現在、管理物件の一般住宅1100戸における65歳以上の入居者は2割程度。外国人は約3〜5%だ。18年ごろから、65歳以上の入居者に関しては、孤独死保険への加入を定めた。加えて23年からは、残置物処理などに関する委任契約(以下、委任契約)を結び受け入れを行っている。

更新時に委任契約

 同社では、委任契約の提案を更新時に行っている。身寄りがない65歳以上の入居者に対し、定期借家契約への変更の案内と、残置物処理の内容を説明し、委任契約を結ぶ。「実際に管理物件で孤独死を経験したこともあり、委任契約を導入した。実態として、残置物の処理を問題なく執り行えたケースはまだ1割程度」と篠岡社長は話す。

 委任契約書は、国土交通省が公開している契約書のモデルを参考に、篠岡社長自身が実務に沿う形に修正し活用している。

居住支援で一番へ

 篠岡社長は「狙うのは、居住支援実績での石川県トップ企業」と今後の展望を語る。限られた商圏で他社に先駆け注力し、要配慮者の受け入れでトップランナーを目指す。

 20年から、石川県の指定を受けた居住支援法人としての顔も持つ同社。同法人として、地域や福祉関係者との情報交換を行いやすいことや、公営住宅を管理していることで接点を持つ市役所との連携で、要配慮者の集客を行える体制が整ってきた。

 さらなる情報交換の活発化を目指し、小松市や金沢市などでの居住支援協議会の設立にも意欲を示す。

 篠岡社長は「管理戸数の拡大は、安定したストック収入の面でもちろん意識はする。ただ、注力したいのは居住支援。社会に求められている事業であるうえに、要配慮者の入居も多い公営住宅の管理実績も生かせる領域であると考える」と語る。

 中長期の視点では、高齢入居者の受け入れ実績を重ねたのち、介護が必要な高齢者への生活支援サービスの紹介といった事業展開も視野に入れる。「『不動産』から『総合生活』の領域まで事業を拡大していきたい」(篠岡社長)

篠岡沁一郎社長画像

志乃丘商事
石川県小松市
篠岡 沁一郎社長(61)

(齋藤)
(2024年5月20日11面に掲載)

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