髙松エステート 小松晋治社長 借り上げ強化、管理3万5000戸超

【企業研究vol.264】髙松エステート

インタビュー|2024年10月07日

髙松エステート 大阪市 小松 晋治 社長(62)

 髙松コンストラクショングループで賃貸管理を主軸とする髙松エステート(大阪市)は、借り上げを強化し、管理戸数を3万5000戸超にまで伸ばした。小松晋治社長の下、売り上げと利益を安定して拡大してきた同社は、オーナーとの長期の関係性構築を重視する。継続的な事業成長のため、企業理念を策定し、人事制度の改革を進める。

売上252億円に拡大 営利10%に迫る

―売り上げ、利益共に安定して伸びています。

 2023年度の売上高は前期比3.7%増の252億1000万円。営業利益は23億6000万円と同25.2%伸び、増収増益でした。営業利益率は9.3%です。事業構成比は、サブリースが68.4%と7割近くを占めています。工事が13%、一般管理と入居者募集が9.5%、不動産の販売が2.6%と続きます。商圏は1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)、関西圏(大阪、京都、兵庫)を中心としています。東京・大阪両本店制で、営業拠点12カ所を展開しています。従業員数は382人にまで増えました。管理戸数は3万5070戸(24年3月末時点)、オーナー数は約1800人です。管理物件の所在地は関西圏が60%、1都3県が33%、名古屋圏が7%です。

―社長になってから、どのように会社を成長させてきたのでしょうか。

  私が社長に就任した16年6月から8年間、経営のかじ取りをしてきました。大阪だけで見ると、就任初年度の売り上げは約55億円でした。それから4年で売り上げ100億円、営業利益10億円を超えました。2社合算では15年度の94億4200万円から順調に右肩上がりで伸びてきました。売り上げが伸びたからといって、急に人を増やしたり、組織を変えたりといったことは一切していません。力を入れてきたことの一つは、借り上げの拡大です。髙松建設(同)で建築し、当社で管理する物件は、私が社長になる前まで7~8割が一般管理でした。それを借り上げに切り替えることで、16年4月末時点で18.8%だった借り上げの比率は、37.5%にまで高まりました。

―借り上げの比率が約2倍になったのですね。

 新築時に一般管理で受託した物件を、築年数が10年、20年になり、リーシングが厳しくなってきたタイミングで借り上げる提案をしています。23年には、髙松建設が建物の50年保証を打ち出しました。そのタイミングで、当社でもRC造の物件は築50年までは一括借り上げする営業を進めています。法定耐用年数を超えても対応します。

事業構成比

―利益の増加もサブリースによるものですか。

 借り上げ賃料のベースは90%程度になるため、企業努力により利益を生み出しやすいです。当社で保証するリスクを負い、宣伝広告費や原状回復費も出します。その残りで利益を確保するという点では、一般管理よりも事業性を高めやすくなります。

売り上げ

―管理戸数4万戸が見えてきました。

 受託のチャンネルを増やすことで、管理戸数は直近の5年間で約8000戸ほど増えました。23年度は1809戸増加し、そのうちグループで大規模修繕などを行う髙松テクノサービスやアパート建築を行うタカマツビルドからの紹介が15.5%を占めました。自主管理オーナーへの管理営業も進めています。単体でも売り上げ、利益を上げていける賃貸管理会社を目指してきたつもりです。

管理戸数推移グラフ

―再販事業にも取り組まれているとか。

 年に10棟前後、管理の解約があります。賃貸経営をやめることにしたというオーナーが結構多いです。当社で売買仲介したり、場合によっては購入して再販する物件が出てきています。再販は年に2~3棟ですが取り扱う金額としては小さくありません。23年には15億円近くの大型物件をオーナーから買い取りました。一定期間所有してから販売するケースもあります。

新たな企業理念 人事制度を改革

―22年10月に、大阪と東京の2社を合併、大幅な組織再編を進めているようですね。

 当社は1973年に日本建商として大阪で創業。84年からマンションの賃貸管理を開始しました。2000年に分社化のため、東京で日本建商を設立しました。17年には2社の社名を髙松エステートに変更しました。社名は同じなのですが、全くの別会社のようなものでした。それを22年10月に1社に合併しました。

―同じ社名でも違う二つの会社を、どのようにまとめてきたのでしょうか。

 合併に伴い、新たに企業理念、コアバリュー、ビジョン、従業員満足、行動規範などを策定しました。全く違う船同士が一つの船になって同じ方向を目指す。そのために私自身の思いを全て企業理念に注ぎました。合併前の半年間は特に試行錯誤しました。合併後2年を経て、従業員のマインドの方向性がそろってきたと感じています。

―企業理念を新しくした理由は。

 企業理念の実現のための行動基準に「従業員満足」という項目を入れた点がこだわりの一つです。社員がこの会社で働いてよかったと思える会社だからこそ、お客さまに一生懸命尽くすことができると思っています。

―従業員満足向上のために行っている取り組みは。

 従業員へのエンゲージメント調査でわかったのが、学びによる成長への満足度が低く、評価制度、キャリアアップがわかりにくいという指摘でした。ステップアップしていくにあたり、課長と部長をそれぞれ業務推進職と管理職に分けて、4月から仮運用しています。賃貸管理会社では一般的にプレーイングマネジャーが多いと思います。当社の新しい人事制度では、売り上げをつくる業務推進職と、組織運営し人を育てる管理職で役割を分けるようにしました。管理職が、人を育てるという自分の仕事をどうつくり出していくかが、新しい人事制度における鍵になるでしょう。

大阪オフィスのエントランス

大阪オフィスのエントランス

家族信託の提案開始 2030年に5万戸目標

―家族信託の提案を進めていくようですね。

 はい。L&F(千葉市)の運営する「家族信託の相談窓口」に登録しました。当社のスタッフが研修に参加し、家族信託についての提案ができるようにしています。11月19日には当社開催のオーナー向けセミナー「資産塾」で、家族信託をテーマにL&Fの森久純社長に登壇してもらう予定です。約100人のオーナーさまに集まっていただく予定です。

―提案はいつからスタートする予定ですか。

 現場担当の提案は、今秋から本格的に始める予定です。家族信託の際、次世代を受託者として指定する場合、所有権の変更が必要になります。委託者がオーナー、受託者がそのご子息に代わり、契約書をまき直すタイミングで借り上げを提案していきます。

―今後の方針は   

 管理戸数を増やしていくというのは、管理会社の軸。その軸がぶれたらいけない。事業を広げ過ぎて本質を見失わないということが非常に大事だと思っています。

―中長期での経営目標はありますか

 30年度には管理5万戸を目指したいですね。

お笑いから社長業へ

 小松社長は異色の経歴の持ち主だ。社会人になり、職を転々とした後、人生を振り返った時にお笑いが好きだったことを思い出し、24歳で松竹芸能に入所。8年間お笑いタレントをやっていた。

 事務所の推薦もあり、デビューして半年後にテレビとラジオのレギュラー番組を週5本担当。番組の司会も任された。

 相方とコンビを組んでいた4年半は漫才もやり、メディアの仕事もあったが、コンビ解散後は単独で活動。仕事が減って、アルバイトを掛け持ちした。人気がなくなると、周囲の人間も離れ、一時は人間不信になりかけたという。そんな時、父親が病気になった。亡くなる前の2カ月ほど、母親と交代で、病室でつきっきりで看病をした。父に「普通の仕事をして、結婚して孫の顔を見せてくれ」と言われ、それが遺言のようになった。その後、不動産会社に就職。35歳で現・髙松エステートの門をたたくことになった。入社4カ月で管理物件の約半分の150棟を任された。激務により、3カ月で5㎏痩せたほどだったが、仕事に関しては前向きだったという。「部屋を決めてオーナーに喜んでもらう。こんな簡単な仕事ないなと。人を笑わせるのは一番難しい。それに比べると、賃貸管理は、一生懸命オーナーのためにやれば認められる。そう感じました」と小松社長は当時を振り返る。順調に昇進し、53歳で取締役、54歳で社長に就任した。「コミュニケーションは、お笑いで学ばせてもらいました」と小松社長は笑顔を見せた。
 
会社概要

社名:髙松エステート
所在地:大阪市淀川区新北野1丁目2番13号
設立:1994年4月1日資本金:3億円
事業内容: マンション管理事業、不動産活用事業、保険代理店事業、ビルマネジメント事業、プロパティマネージメント事業、コインパーキング事業、介護サービス事業
 
社長プロフィール

1961年12月20日生まれ、京都市出身。さまざまな職を経た後、85年に松竹芸能に入り、芸人の道を進む。一時売れっ子になるも、父の思いを継ぎサラリーマンの道に戻る。97年に日本建商(現:髙松エステート)に入社。役員を歴任後、2016年6月に代表取締役社長に就任。

(2024年10月21日13面に掲載予定)

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