管理戸数2020戸のアエラハウス(兵庫県尼崎市)は、管理戸数増加により経営基盤を安定化。管理物件での工事件数を伸ばし、年1000万円ずつ売上高を積み増す。工事事業では対応幅を広げるため、建設業許可を取得。500万円以上の案件にも対応可能とする。大浦崇弘社長に、取り組みの詳細を聞いた。
売上高2億8000万円、年1000万円増
建築会社と協力 2020戸を受託
アエラハウスは本社を構える尼崎市内を商圏に、ストック収入である管理戸数を増やし、管理物件における工事の請負で売り上げを伸ばす。
2024年5月期の売上高は2億8000万円。そのうち管理、賃貸仲介、売買仲介を含む不動産事業は約65%にあたる1億8000万円。リフォームなどの工事を行う建設事業は1億円と約35%だ。
管理戸数は2020戸。直近1年間では232戸増やした。増加数のうち7割が大手ハウスメーカー(以下、大手HM)系管理会社からの管理業務の一部委託だという。大手HMが抱えるオーナーが、尼崎市内で新たに物件を建築した際、地場不動産会社であるアエラハウスに管理を依頼する協力関係にある。大手HMと、送客をし合う協力関係を築くことで、安定して管理を積み増すことができている。
アエラハウスは管理を受託するオーナーに土地活用を提案し、建築の意向があった場合にオーナーを大手HMに紹介する。
大手HM系管理会社からは月1〜3棟ほど管理の依頼を受け、アエラハウスからのオーナー紹介は年1〜4件行っている。
地主系オーナーから受託した物件の管理離れは少ないと感じているという。大浦社長は「当社の従業員はほぼ全員が勤続10年以上のベテラン社員。そのため、提案の質は高いと自負している。管理物件のオーナーチェンジが起きた際も、元のオーナーから買主に当社を薦めてもらえているので、管理離れを防げている」と話す。
賃貸仲介事業も展開。管理物件へのリーシングも自社で行えることがオーナーへの訴求要素にもなっている。自社付け率は6割だ。
管理を受託するオーナーは約100人。その内訳は地主系が8割、投資家系が2割。
管理戸数を増やすことで管理手数料収入が増えるだけではなく、受託するオーナーから売買仲介の依頼を受けるなど、別事業の案件につながる。同社はそこに管理戸数を増やす意義を感じている。
500万円以上のリノベも受注
建設業許可を取得 大規模改修に対応
管理からつながる別事業の中でも、特に狙い目と感じているのは工事事業だ。14年に、500万円以上の工事請負が可能になる建設業許可を取得。年600件以上の工事を請け負っている。この件数の中には、小修繕や設備交換、原状回復、リフォーム・リノベーション、大規模修繕工事を含む。同社が元請けとなり、協力会社に分離発注を行う。協力会社は100社。
建設業許可は、管理物件の空室対策で行うリノベ工事や、10〜20年に1度発生する大規模修繕工事に対応するために取得した。リノベ工事で間取りの変更や、水回り設備の交換で、1件あたりの施工費が400万〜500万円かかることもあるためだ。大規模修繕工事の1件あたりの工事単価は1500万円ほど。
22年からは、工事の内製化に注力している。管理担当者のうち経験が豊富な1人を抜てき。工事の現場監督として、施工管理などを担当させている。加えて23年には同社員に電気工事士の資格を取得してもらい、簡易的な電気工事もスピード感を持って行えるようになった。
「足元で1人の教育に集中しているが、工事件数の増加に伴って今後は担当者の人数も増やし、事業の拡大も視野に入れている」(大浦社長)
テック導入推進 採用難をカバー
事業拡大に伴う業務量の増加に対して、クラウドサービスの導入により業務効率化も進める。
7月には不動産仲介業務支援サービスを提供するiimon(イイモン:東京都中央区)の「入力速いもん」を採用し、賃貸仲介業務で活用している。同サービスは事業間流通サイトに掲載されている物件をポータルサイトに登録する際、ワンクリックで物件情報の保存や転載が可能になるというものだ。これまで1件あたり30分かかっていた入力作業が、5分程度まで削減されたという。
こういったシステムを、吟味をしたうえで積極的に導入していく。
大浦社長は「業務量が増えるにつれ人員を増やすという手もあるが、他社と同様に採用難はもう一つの課題。採用は欠員が出た際に今後も補填(ほてん)していくが、基本的にはシステムの力でカバーしていく」と語る。
同社の賃貸仲介店舗は1店舗のみ。店舗数を増やすことで成約件数の増加につながると考えてはいるものの、人員が確保できないリスクを感じているという。出店による事業拡大ではなく、社内業務の改善による利益の伸長を重視する。25年5月期は、売買仲介が好調なため、売上高3億円超を見込む。
「売買仲介における良い波はイレギュラーだと認識している。あくまで管理と工事の成長に力を入れ、派手ではなくとも堅調に売り上げを伸ばしていきたい」(大浦社長)
(國吉)
(2024年10月14日5面に掲載)