管理会社の発行を想定、設備情報の把握が鍵か
国土交通省は11月1日から、既存住宅において部位ごとに省エネ性を可視化する「省エネ部位ラベル(以下、部位ラベル)」制度を開始した。同ラベルの発行にあたっては、管理会社がオーナーから委託を受けて発行する業務フローが想定されている。
罰則の定めなし
賃貸住宅における部位ラベルの普及には、サブリース会社や管理会社の果たす役割が大きくなりそうだ。
部位ラベルとは、省エネ性能表示制度ガイドラインに基づき、表示要件を満たした設備などについて記載した所定のラベルのこと。形式を統一することで、住宅の購入希望者や部屋探しの顧客にわかりやすく、省エネ性能を伝えられるようにするのが国の狙いだ。
部位ラベルの発行は、4月からスタートしたエネルギー消費性能や断熱性、目安光熱費を表示する「省エネ性能ラベル(以下、性能ラベル)」を発行できない物件が対象となる。
発行対象となる物件の条件は二つ。一つ目は、3月31日以前に建築確認申請を行ったこと。二つ目は、省エネ性能の向上に関わる部位があるが、住宅全体の省エネ性能の把握が困難であること。
評価に活用できる設計図面や情報がある場合や、設計仕様が図面や書類から把握できる場合には、部位ラベルではなく、性能ラベルを発行することになる。二つのラベルの並列掲載はできないので注意しておきたい。
賃貸住宅の貸主であるオーナーやサブリース会社は、性能ラベルを発行できない場合、部位ラベルを発行することが努力義務とされた。ただ、性能ラベルと異なり、部位ラベルについては、努力義務違反の事業者の社名公表や是正勧告といった罰則は定められなかった。
資料か現地で確認
部位ラベルの発行において、国は、オーナーから委託を受けた管理会社が代行して発行することも想定している。
性能ラベルとの大きな違いは、設計の知識がなくとも必要な項目の入力ができれば発行できる点だ。
部位ラベル発行の必須項目は、窓か給湯器のいずれか一つ以上で表示の要件を満たしていること。
部位ラベル発行システムでは、物件名称等・評価日を入力。改修部位として、窓はサッシとガラスの種類、給湯器は該当する種類にチェックを付ける。外壁や太陽光発電など副次的な項目で該当する内容があれば記入する。
手元に情報があれば、必須項目だけなら入力の完了までに5分とかからない。国交省住宅局参事官付の井波まどか課長補佐は、部位ラベルの発行について「非常に簡易的なシステムにした」と話す。
同ラベル発行にあたってポイントになるのは対象となる住宅設備などの把握。方法としては、二つ考えられる。一つは、リフォーム時の請負契約書や工事内容の説明書からの確認。もう一つは物件の現地確認だ。管理会社が、空室物件の管理受託時や新規の募集時に専有部を確認する際、給湯器や窓をはじめとした設備の商品名などを確認し、把握する。
いずれの情報も、社内のシステムなどに入力しておくことで、部位ラベルの発行が容易になるだろう。
大手は検討中
127万戸超を管理し、サブリースをメインとする大東建託パートナーズ(東京都港区)は、基本的には部位ラベルを表示する方向で検討している。
比較的新しい建物で設計図書が整っているものは性能ラベル、それ以外は部位ラベルで対応する予定だという。入居者募集中の物件から優先して対応していく。サブリース物件については、大東建託パートナーズがオーナーに代わって発行する方針だ。
部位ラベルの発行を行うにあたっての課題として2点を挙げる。1点目が、築年数がある程度経過している建物だ。確認は人が行うため、判断基準の設定などが必要となり、情報をどこまで正確に把握し、部位ラベルの発行ができるか不透明だとする。
2点目はシステム上でのデータ連携について。物件データの連動先と部位ラベルの連携方法、連携後の表示箇所など、多くの確認事項がある。場合によってはシステム改修が発生する可能性がある。
積水ハウスグループは、グループで管理する物件での部位ラベル発行・表示については、現時点では未定。登録に間違いがあってはならないため、運用面なども含め、慎重に検討していく。
積水ハウスグループの広報担当者は「性能ラベルについて、正しい認知が広がることがまず重要であり、国・業界で取り組むべき課題だと思っている。部位ラベルは、登録が性能ラベルと比較して平易にできるようになっているため、運用が難しくなった」とコメントした。例えば、同一住戸に複数の部位ラベルが登録されないよう運用する必要があるといった点を課題とみる。
(河内)
(2024年11月25日1面に掲載予定)