実需向けのログハウス「BESS(ベス)」の建築を行うアールシーコア(東京都渋谷区)の2代目社長に壽松木(すずき)康晴氏が就任した。実需向け住宅を経営の軸としながらも、賃貸住宅を含む特建事業を展開し、会社を成長させていくことを目指す。
営業利益10億円目指す
購入者が情報発信 SNS投稿、34万件
ログハウス建築でブランディングしてきたアールシーコアは賃貸住宅にも目を向ける。
1985年に実需向け住宅の建築会社として創業。ログハウス商品のBESSを中心に事業を展開してきた。
BESSは「家は暮らしを楽しむ道具」をコンセプトに規格化したログハウス。あえて造り込まないことで、同じ商品であっても入居者によって異なる暮らし方になる点が特徴だ。購入者は自然派・アウトドア志向の30代後半から40代前半がボリュームゾーン。
購入者により各々の暮らしがSNSなどで情報発信されることで、知名度を高めブランドを確立させてきた。「インスタグラム」でBESSでの暮らし方を発信するタグ「#BESSの家」が付けられた投稿は約34万3000件(11月6日時点)に上る。現在、8種類の商品を展開しており、2023年度は累計438棟を請負契約した。
24年3月期の売り上げは121億4200万円。そのうちBESS事業が約9割、実需向け住宅以外の特建事業が約1割だ。21年3月期より4期連続で営業赤字を計上。24年3月期には、代官山に保有していた旗艦店を売却し、最終利益を黒字化した。
専門は経理・財務 財務健全化で信任
23年6月にトップに就いた壽松木社長は、経理や経営者としての経験を積んできた。赤字が続く同社の財務健全化を、前社長である二木浩三会長に託されての就任だ。
壽松木社長は複数社で経理や財務業務を専門に従事。16年にアールシーコアに入社後は営業本部販社管理室長や営業統轄本部長などを歴任した。
壽松木社長は「今までは創業者である二木会長の下、BESSブランドを築くために世の中に迎合することなく強い信念を貫いてきた。しかし、ブランドが確立され、今後さらに成長していくには、さまざまな事柄を客観視し、必要とあらば他社との提携による領域拡大も検討したい」と話す。
他社での経営者経験もあり、資本市場に精通した壽松木社長に会社成長の推進役として白羽の矢が立った。
新商品で集客強化 契約棟数28%増
黒字化に向けて、まずは新商品の開発・投入および、主力商品のリニューアルを実施。FC(フランチャイズチェーン)店の受注・売り上げの確保に最注力した。加えて、特建事業部を強化し、業績を回復させていく。
24年3月期は新商品による顧客開拓や、集客強化により、BESSの契約棟数が増加。前期比約28%増となった。
23年12月には建築を請け負った木造中高層賃貸住宅を、JR青梅線牛浜駅から徒歩1分の立地に竣工。国産材のCLT(直交集成板)を用い、「90分準耐火構造認定」を取得した木造丸太組み構法の3階建ての物件だ。間取りは1LDKで全8戸。募集開始後、家賃を相場の約2倍に設定しながらも、半年以内に満室になった。
「今後、実需向け住宅の市場は厳しいとみている。必然的に多角化は必要だと考えているが、事業のコアとなるのはBESS事業。BESSを展開する当社だからこそ、賃貸住宅や保育園といった今までになかった建築のリクエストをもらっている。特建事業を展開するにもBESSのブランド力は重要だと考えている」(壽松木社長)
代官山の旗艦店に替わるブランド発信の場づくりを進めているところだ。これに加え、特建事業部の体制を整え、実需住宅以外でのニーズに応じた商品展開を行い、同事業の成長を促進。事業成長の一つの指針として、営業利益過去最高の10億円を28年3月期までに目指す。
(野中)
(2024年11月25日20面に掲載)