賃貸住宅の日常清掃、建物管理を専門とする経営者4人による座談会を行った。賃貸管理業法が施行され、建物管理業務の重要度は増している。一方で、賃貸管理会社の業務範囲が広がる中で、建物管理を外部に委託する動きも活発だ。建物管理事業の成長性について話し合った。
―初めに、各社の概要と事業内容について教えてください。
石垣氏 テイクス(京都市)は、賃貸住宅の巡回清掃、定期点検、共用部の設備メンテナンスを専門にしています。京都府、滋賀県、奈良県、兵庫県神戸市エリアで9000戸の建物管理業務を請け負っています。従業員数は45人、そのうち社員は10人。3人が管理職で残りが事務職。社員3人が現場を担当する清掃スタッフを統括します。業務の幅を広げるために有資格者を増やし、消防設備点検業務も受けています。
鈴木氏 たてものサービス(さいたま市)は、埼玉県、東京都、神奈川県に六つの直営店を置き、2450棟の巡回清掃業務を引き受けています。一部でオフィス清掃も受けていますが、大半が賃貸住宅です。従業員数は100人で、正社員は15人。社長を含めて3人の役職者がいます。正社員は六つの直営店を2人体制で運営し、営業も清掃業務も担当します。そのほかに、当社の委託業務を本業とする代理店が17店舗あります。
藤森氏 五條ビルメンテナンス(神奈川県横浜市)は、1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)で3200棟の日常清掃業務を受けています。私自身が投資家家主から、家主向けコンサル事業に転身し、8年前に清掃事業を始めました。建物管理の中でも巡回清掃に特化しています。従業員数は50人で、そのうち正社員が12人です。200社の管理会社と契約しています。
富治林氏 COSOJI(コソージ:東京都千代田区)は、全国の賃貸管理会社から、日常清掃、定期巡回、設備交換、大規模修繕などビルメンテナンス(BM)業務全般を受託しています。全国に1万人を超えるクルー(作業者)を抱えています。また、自社開発した清掃、BM業務の管理システムを、賃貸管理会社や、BM事業者などが利用中です。―賃貸住宅の巡回清掃の実務について、多くの業界関係者が「誰がやっても同じ」と認識していると感じます。専門事業者としての強みはどこにありますか。
石垣氏 当社の場合、社員4人が従事するバックオフィスに強みがあります。大手管理会社が入居者対応を委託するコールセンターから直接連絡を受けています。以前は管理会社の担当者から受けていましたが、今は95%がコールセンターからシステムを経由して届くチャット、メール、電話経由となっています。ここで入居者の要望を聞き、当社で受けられる内容かを判断します。見積金額まで答える必要があるため、要望や状況を精査しなければなりません。経験値を積んだ中心メンバー4人が、受ける、断る、振り分けるという判断を下しています。
鈴木氏 当社では、正社員の業務について、細かく分けていません。反響に対して営業するのも、最も高い清掃技術を持つのも彼らなので、受注してから当面の期間は現場で自ら清掃作業にあたります。各現場で清掃パターンが確立したら、パートスタッフに引き継いでいきます。そのようにして、サービスの品質を高い水準で保つよう心がけています。報告業務を管理会社に行う場合も、オーナーに行う場合も、自社で構築したシステムを用います。現場スタッフが直接送るのではなく、報告内容に問題点がないか、管理部門で確認してから送るようにしています。
藤森氏 優秀なスタッフを集めることができるかで、提供サービスの品質が決まるので、優秀な従業員の確保に力を入れています。20代の社員が中心となって働いており、その世代の人たちに入社してもらいやすいように、2023年、神奈川県横浜市の新横浜駅周辺に事務所を移転しました。オフィスは若者が好むような内装に仕上げています。正社員の場合、営業職がメインになるので、案件を取るほど清掃スタッフを確保する必要があります。それは雇用を生み出す仕事だということです。そのことの素晴らしさを伝えています。
富治林氏 当社がBM業務を元受けする現場が、毎月1万件を超える程あります。発注者である管理会社や家主、あるいは一部の清掃会社に、予定管理や報告書を自動作成する無料アプリを使ってもらっています。清掃スタッフに対するフィードバックや評価を行うことができるものです。システムをわかりやすく使っていただくために、マニュアルを作ったり、機能を標準化したりしています。
抜き打ち調査と、表彰制度
サービス品質維持する仕掛け
―事前に皆さんに実施したアンケートでは、採用に関する課題が多く挙がりました。人材確保、評価をどのように行っていますか。
鈴木氏 人気のある仕事とは言いにくいですが、幅広い年齢層に取り組んでもらえるのは強みです。高齢者も含め、全方位に向けて募集をかけています。黙々と1人で集中して働きたい人が一定数集まっています。皆でワイワイと働きたい人には合わないかもしれません。求人広告や「ユーチューブ」では、「自分のペースでお仕事をしていただくことができます」とメッセージを発しています。
藤森氏 社員の得意分野と、会社の課題をシンクロさせたいと考えています。当社には、以前漫画家や芸人として活動していた社員がいます。求人向けに仕事を紹介する漫画やコントをつくり、応募者の得意なことと仕事を近づかせて、仕事を楽しんでもらいたいと意識しています。良い人材がいることで、事業拡大のアクセルを踏める瞬間は少なからずあります。余剰人員ばかりいても仕方ありませんが、受注が増えればサービスの品質維持がすぐに課題となります。ここのバランスが肝だと思います。
石垣氏 毎年、社内でスタッフの業務を3カ月間調査し評価するコンペを行います。表彰式を開催し、商品券を渡しています。清掃した物件を管理者が48時間以内に抜き打ちでチェックします。属人的な評価にならないよう、2人以上の管理者がチェックすることを徹底しています。コンペ期間中はチェックがより厳しくなりますが、年間を通して清掃の品質確認を行うことと、人手不足に対応する採用が大きな課題です。
富治林氏 1万人のクルーは、電話、紹介、ウェブサイトで集まりました。営業が案件を受注してからクルーを採用しても間に合わないので、受注の可能性が出てきたら採用活動を開始します。本人確認書類などを提出してもらい、バックグラウンドやスキルチェックを実施した後、面談します。採用後は、現地に同行して指導します。クルーを評価するのは、基本的には発注者である顧客です。当社としては、顧客に指導を手伝ってもらっている状態ということもできます。もちろん、社内評価も実施します。ペナルティーが三つになると、契約解除です。ペナルティーの評価がついた場合は、瞬時に管理部門に通知が来るので、指導に行きます。
―日常清掃業務の成長性はどこにあると思いますか。
鈴木氏 賃貸住宅で当社が引き受ける業務は、清掃、点検、報告書作成が3本柱です。点検業務では、建物の異常、入居者のマナー・ルール違反を報告します。例えば、共用部に食べかけのカップラーメンが置かれていた場合、業務上、勝手に片付けるのは良くないのですが、放置しておくのも良くない、判断が難しい状況です。このようなときに、写真を撮って報告します。最終的には当社の判断で片付けることが多いわけですが。当社が受注するのは清掃業務ですが、実際は入居者が安心して生活を送るための建物管理を担っています。管理会社やオーナーが求めるものが何かを見極めて、サービスの品質を高めたいと考えています。
石垣氏 植栽の剪定(せんてい)、床の高圧洗浄、排水桝(ます)の中の掃除など、共用部で提案できることはすべて受注していきたいです。当社も清掃業務の間に現場写真を撮影しており、管理者である社員が、提案すべき内容に漏れがないかチェックしています。また、入居者から困り事を聞いているスタッフは、提案機会がおのずと増えます。やはり、コミュニケーションスキルは重要です。同じスタッフが同じ物件に通うと入居者との関係性をつくりやすくなります。クレームがないのに担当を変えると、それがクレームになることもあります。
藤森氏 従業員に伝えているのは、清掃スタッフを指導する側に回り、彼らをいかに増やせるかを考えようということです。皆の困り事をまとめてルール化する、業務を均一化するといった業務改善にも目配りできる社員が増えれば、受注する仕事に困ることはないと感じています。ただし、清掃業務をきちんと指導できない従業員は、そういう発言もできないわけですが。
富治林氏 25年春をめどに、新入社員や新入クルーでも、現場の写真を撮るだけで、ベテランスタッフのような提案書をAI(人工知能)が書く「プロ提案書」という機能をリリース予定です。99%をAIが作成し、提案書や報告書の作成といった事務作業に割く時間を徹底的に省きたい。その分、現場に行く時間を増やしたいのです。現場で過ごす時間が増えれば、サービス品質を上げることも、提案機会を増やすこともできます。
| 家主・管理会社の要望とらえる | 共用部でやること、すべてやる | 提案・報告書の作成をAIに | 20代社員、働きやすい職場作り |
| たてものサービス 鈴木 範之 社長(50) |
テイクス |
COSOJI 富治林 希宇 社長(35) |
五條ビルメンテナンス 藤森 龍一 社長(39) |
(2024年12月16日8・9面に掲載)




