タスキホールディングス(以下、タスキHD:東京都港区)は柏村雄社長に経営の権限を集中。主要2社のシナジーにより不動産開発事業を伸ばしていく。2033年9月期の売上高2000億円を目指す。
33年に売上高2000億円目指す
経営の権限を集中 判断を迅速化
タスキHDはさらなる成長を狙い、システムを活用した物件開発のノウハウをグループ全体に浸透させていく。
同社は24年に、ともに投資用不動産のデベロッパーである新日本建物(東京都新宿区)とタスキ(東京都港区)が経営統合して設立された持ち株会社だ。24年9月期の売り上げは474億5500万円。そのうち、不動産開発事業が99%超を占める。
24年12月には、代表権を柏村社長に一本化。同社は現在の不動産開発事業の環境は建築資材・人件費が高騰しており、大きな変化の時を迎えているとみる。このような環境下では、意思決定の早さや、ぶれない経営方針が必要となると判断したためだ。
狙うのは、タスキで培ってきたスキームをグループ内に浸透させること。そして33年に、自社開発の不動産テックサービスの導入社数1500社を達成することで不動産開発・仕入れに特化したテックサービスの国内トップの座を獲得することの二つだ。
柏村社長は「タスキは3年で売り上げを2.6倍にするなど、事業拡大のスピードが速かった。タスキHDも同様のスピード感のある成長が求められている。タスキで培ったノウハウをタスキHDグループ全体に伝播させ、成長を継続していく」と話す。
自社施工を開始 建築コスト削減
新制タスキHDは33年9月期の売上高2000億円達成を目標に掲げる。達成に向けて力を入れるのは主に二つ。
一つ目は不動産開発事業だ。タスキが強みとする、絞りこんだエリア内でまとめて物件を開発するドミナント戦略を、新日本建物での開発物件にも適用。間接コストを削減する。
24年には自社施工部隊をタスキ内に設立した。これにより、さらに建築コストを削減し、その分を価格に転化することで競争力を上げていく。33年までにタスキの開発物件のうち半数を自社施工することが目標だ。開発エリアは従来と変わらず東京都23区を中心とする。
二つ目はSaaS(サース)事業だ。タスキはデベロッパーの目線を生かした不動産の仕入れ・デベロップメント業務の効率化を目的としたシステム「TASUKI TECHLAND(タスキテックランド)」「TASUKI TECH TOUCH & PLAN(タッチアンドプラン)」を開発。自社で活用するだけでなく、外部のデベロッパーや売買仲介事業者向けにも提供している。25年9月第1四半期の利用社数は24年同期比で3倍の126社に増えた。
今後は新たに、不動産の売り手と買い手のマッチングプラットフォーム機能をリリース予定。25年9月期第1四半期時点での1社あたりの平均利用額は月額3万円(フリープラン利用者含む)だが、サービスを拡張することで33年には月額21万円にまで利用料金が増額する見込みだ。27年9月期には利用社数470社を目指す。
収入の柱を増設 積極的にM&A
加えて、新たな事業の柱もつくる。資産コンサルティング事業を新たに開始し、収益の柱を増やすことで経営の安定化を図る。
既存オーナーではなく新規顧客として地主を開拓する。地主に対して、土地の売却・活用を提案。近隣の土地をまとめて交渉し買い取る場合も想定。一つのまとまった開発用地として、外部デベロッパーなどに再販していく。
「今後のさらなる成長には人材獲得が重要だと考えている。社員が人材を紹介・推薦するリファラル採用とM&Aによる人材獲得も積極的にしていきたい」(柏村社長)
(野中)
(2025年3月3日20面に掲載)