国土交通省は2月22日に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(管理業法)の解釈・運用の考え方」に関する一部改正案を公表した。改正案は6月に施行される予定だ。一部でトラブルが起きているサブリース事業が関連する部分(サブリース新法)について、改正の背景や問題点を国交省と弁護士に聞いた。
家賃減額を巡るトラブルに対処
重説の義務を明確化
今回の改正において特に重要な変更があったのは、特定賃貸借契約(マスターリース契約)の際の重要事項説明(以下、重説)と書面交付の義務についてだ。
具体的には、管理業法第30条の「特定賃貸借契約を締結しようとするとき」という解釈に、マスターリース賃料など、特定の事項(図参照)を変更する契約を結ぶ場合も含むことを記載。重説を改めて行う義務があることを明確化した。
また、第31条第1項において、サブリース新法施行前に結ばれた契約であっても、特定の事項を変更する場合には同法の規定に則ったマスターリース契約締結時書面の交付を行う義務があると明記した。
契約締結がサブリース新法の施行前であっても、契約内容の特定の事項に変更があった場合は、改めて重説や書面交付を行うという指針は従来からあった。しかし、解釈が明確ではない部分があり、一部で特定賃貸借契約を巡るトラブルが起こっていた。
国交省の担当者は「サブリースに関して寄せられる相談には、マスターリース賃料を減額されたオーナーからのものもある。契約内容変更時の重説や書面交付の義務を明確化することで、特定賃貸借契約のさらなる適正化を図っていきたい」と話す。
事業者の濫用を危惧
今回の改正案について、マスターリースの家賃減額を巡る紛争解決に携わっている、花井綜合法律事務所(愛知県名古屋市)の花井淳代表弁護士は、「基本的に、サブリース事業者のオーナーへの説明を適正化するものであり、方向性として評価できる」と話す。
一方で、問題点も指摘する。重説に関して第30条にて、「説明を受けた者が承諾した場合に限り、説明から契約締結まで期間をおかないこととして差し支えない」とされている点だ。サブリース事業者が「時間がないから」とオーナーを急かし、検討時間を充分に与えないよう、意図的に重説の機会をギリギリに設ける恐れがある。
花井弁護士は「何ら制限もなく、オーナーの同意のみを条件にしているため、サブリース事業者による濫用の恐れがあり、実質的に無意味な規定になりかねない」と危惧する。
同法に関する理解の齟齬もしくは悪用によって一部でトラブルが起こっていることは事実だ。事業者とオーナーには同法を正しく理解するとともに、制定の背景を踏まえ、適正なビジネスを実現していってほしい。(小松)
(2022年3月14日24面に掲載)