分譲・賃貸マンションの管理を手がけるJR西日本住宅サービス(大阪市)は、直近1年半で管理戸数を2453戸増やした。社内の業務体制を整えることで、管理戸数の急増にも対応する。
1都3県の案件拡大
3750戸を受託関西エリアが56%
ー賃貸管理事業を伸ばしているそうですね。
当社は2015年7月に、前身の会社から新設分割して設立されました。当初は分譲マンションの管理がメインでしたが、22年9月に東京で物件を受託したのをきっかけに、賃貸住宅の管理も本格的に始めました。直近1年半で2453戸増加し、9月末時点で3750戸を受託しています。
ー事業構成比を教えてください。
25年3月期の売上高は22億6900万円です。事業構成比は分譲マンション管理が58%、賃貸管理18%、リフォーム16%、その他8%です。
ー管理戸数増加の要因は。
グループ会社であるJR西日本不動産開発(大阪市)が開発、あるいは取得した賃貸マンションの案件が増えました。管理戸数のうち1969戸はJR西日本グループ(同)が保有している寮や社宅です。残りの物件はJR西日本不動産開発から委託された一般管理で、1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)が746戸、福岡県が614戸、関西が421戸です。事業開始当初は関西エリアを中心に管理受託を行っていましたが、1都3県や福岡でもグループ会社の案件が増加したことで管理エリアを拡大。現在の管理割合は関西エリアが56%、1都3県が28%、福岡県が16%となっています。
平均築30年 リノベを企画
ー他社との差別化をどのように図っていますか。
築年数が平均30年程度の管理物件が多くあるため、リノベーションによるバリューアップを実施しています。物件の状況や周辺環境などを踏まえながら企画しています。例えば子育て世帯向けの賃貸住宅であれば、リビングに学習スペースを設けるなどポイントとなる要素を取り入れています。
ーどの事業を成長のキーとして見ていますか。
当社は成長事業として、分譲マンションと賃貸マンション双方の管理事業を見ています。中でも、JR西日本不動産開発が積極的に物件を取得していることから賃貸管理の受託数も多く、成長の伸び率は大きくなっています。
ITで効率化推進 シニア人材も活用
ー直近1年で管理戸数が急増しましたが、対応にあたってはどのような工夫をしていますか。
23年10月からイタンジ(東京都港区)が提供する電子申し込みと電子契約などのシステムを導入し、DX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めてきました。すべてイタンジのサービスを利用することで、手続きが一元化され、業務の工数を削減できました。これまではエクセルに手入力で行っていた契約管理、クレーム・修繕対応履歴、入金確認などの作業を自動化しました。結果、23年11月からは土日の出勤が不要になるなど従業員の負担も軽減できました。入居者対応に関しては、コールセンターを活用しています。
ーなぜ、DX化しようと思ったのですか。
管理戸数の増加に合わせて、人員を増やそうとしようとしてもすぐに採用するのは難しいと感じました。そこで今いる人材のリソースをどこに注力すればよいか考えた結果、人と接する業務が重要であり、削減できるバックオフィス業務は自動化すべきだと判断しました。
ーほかにも利用しているシステムはありますか。
リベンリ(神奈川県藤沢市)が提供する「Litera App(リテラアップ)」を導入しました。業務アプリやパソコン使用時にサポートしてくれるサービスで、「エクセル」や「ワード」といった基本的なオフィス製品全般の使い方や、ショートカットキーを使用することで実際の利用率や削減時間がダッシュボードに表示されます。
ーシニア人材も活躍していると聞きました。
当社には60歳以上のシニア人材も現役で活躍しており、全社員の1〜2割を占めています。60歳が定年ですが、本人の希望があれば再雇用という形で75歳まで働くことができます。採用の際にも75歳まで働くことを前提に応募してきてくれる人材もいます。
ーキャリアが長い人はどんな仕事をしていますか。
ビルメンテナンス事業を担当しています。長年、培ってきた知識や経験が豊富で、設備のプロとして活躍しています。
ー今後の展望は。
35年までには約7000戸の管理を目指しています。JR西日本不動産開発の案件に加えて、JR西日本プロパティーズ(東京都港区)が所有する物件の管理を受託できるように、社内の体制整備に努めます。これからも管理の質を上げていきたいです。当社ではまだアナログな部分も多いことから、業務体制の統一や現状の業務の改善などに力を入れていきたいと考えています。
(2025年10月27日20面に掲載)




