4月下旬からの円安傾向が継続する中、海外の個人投資家が、日本不動産に熱視線を送る。中国圏の投資家らに日本不動産を紹介するプラットフォームの運営会社では、サイトの閲覧者数が円安前と比べ3割増となった。
円安継続でサイト閲覧3割増
中国圏の投資家向けに日本不動産の情報掲載を行うサイト「神居秒算」を運営するGA technologies(ジーエーテクノロジーズ:東京都港区)グループの神居秒算(同)では、円安の好影響を感じているという。同社の趙潔社長は「サイトのUV(Unique Visitor:ユニーク ビジター)数の増加が、注目度を物語っている。2022年2~6月のUV数は21年同期間比で30%増加した。問い合わせも増えている」と語る。
同社のサイト利用者層は、中国大陸や香港、台湾エリアの投資家が多く、個人が95%を占める。30~40代の初心者投資家が中心で、投資する物件の価格帯は1500万円ほどの区分マンションがメインとなる。
アジアの既存顧客に買い増し提案計画
契約には至っていないが、海外の個人投資家から問い合わせやアポイント件数が増えたと話すのは、三好不動産(福岡市)だ。22年4~6月の問い合わせは21年同期間比ほぼゼロから急増した。
同社は不動産売買事業で、一部海外在住の投資家を顧客に持つ。売買を入り口に購入後の管理を獲得している。顧客となる個人投資家は台湾、上海、香港、韓国、シンガポール在住がメイン。
ソリューション事業部アセット営業室李潔明氏は「もともと日本不動産に興味があった投資家が、円安をきっかけに問い合わせをしているのだろう。海外の投資家は、一度契約まで至った日本の不動産会社に安心感を覚えリピーターになる傾向がある。そのため基本的に新規の問い合わせは少ない。だが、4月以降は感覚的にこれまでよりも問い合わせに占める新規顧客の割合が伸びているようだ」と話す。
今後の方針は、契約率が高い既存の海外顧客に対し、買い増しの提案を強化していく。入国制限が緩和され、対面で情報交換ができるようになった段階で、各国の売買市況を把握し具体的な戦略を立てたいとした。
コロナ終息で購入意欲加速か
中古物件の買い取り再販を行うランドネット(東京都豊島区)では、海外の個人投資家からの問い合わせは円安前後で110~120%とほぼ横ばいだが、今後契約につながっていくと見る。
同社の顧客全体のうち、海外在住の個人投資家は5~6%。現在問い合わせがある顧客は、買い増しを目的としたリピーターが約9割を占める。国籍は、台湾や香港、中国大陸がメインだ。
顧客の特徴は、日本への留学経験があったり、子どもが日本に留学中など、日本の不動産事情に一定の理解がある層だ。探している投資物件の価格帯は1000万~3000万円の区分マンションで、ワンルームが多いという。
榮章博社長は「日本の賃貸住宅で、安定した賃料を得られることを知っている既存顧客が、インカムゲインを求め買い増しに動いていると予想できる。ただ、円安の影響で、キャピタルゲインを視野に入れ、問い合わせをしてくる顧客も増えてきているようだ」と話す。
円安に加え、入国制限の緩和で実際に物件を見られるようになってくれば、海外の個人投資の「日本不動産買い」の動きはさらに活発化していくかもしれない。(齋藤)
(2022年7月11日1面に掲載)