広がるエコ賃貸~前編~

積水ハウス, 大東建託, 旭化成ホームズ

企業|2021年10月28日

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積水ハウスが販売するZEH賃貸「シャーメゾンZEH」の外観

 2018年に補助金制度が始まって以来、ZEH賃貸の販売が少しずつ拡大している。ZEHとは高い断熱性能や省エネ・創エネによって1年間で消費するエネルギー量が正味でおおむねゼロ以下となる住宅のことを指し、その基準を満す賃貸住宅のことをZEH賃貸という。6月に政府が公表した「地域脱炭素ロードマップ」では、住宅の省エネ性能向上や創エネも重点課題の1つとして挙げられている。そうした中、ZEH賃貸の販売を拡大するために賃貸住宅のメーカー各社はどのような取り組みを行っているのか。大手5社に話を聞いた。

積水ハウス、21年度上期でZEH賃貸3486戸販売

直近の半期で前期1年の実績超える

 ZEH賃貸の供給数でずば抜けているのは積水ハウス(大阪市)だ。同社は17年にZEH賃貸「シャーメゾンZEH」の販売を開始。7月時点で累計販売数は7292戸となった。18年度は380戸、19年度は450戸、20年度は2976戸、21年度は半期で3486戸と急速に実績を伸ばしている。

 担当者は「共用部を含めた物件全体で基準を満たすのではなく、住戸単位でZEH基準を満たすメリットを賃貸住宅の長期安定経営を支える要素としてオーナーにうまく訴求できたことが大きい。また脱炭素に対する家主や入居者の関心の高まりもあり、大幅に契約数が伸びたと考えている」と話す。

 シャーメゾンZEHの特徴は、住戸ごとに太陽光パネルを直接接続している点。戸建てのZEHと同様に、発電した電気をまずは各戸の入居者が自家消費し、余れば入居者の売電収入となる。同社の試算によると、広さ65㎡で2LDKの物件を想定した場合、売電効果を踏まえるとシャーメゾンZEHは一般住宅と比べて平均して月額約5500円光熱費を削減できるという。また、停電時にも太陽光パネルで発電した電気は、自室の専用コンセントから使うことが可能だ。

太陽光発電パネルの写真

「シャーメゾンZEH」の屋根に設置された太陽光発電パネル

 入居者にとっては、光熱費削減や売電収入といったメリットに加え、高い断熱性能のおかげで夏の熱中症や冬のヒートショックを予防するなど健康面でのメリットもある。差別化により物件の販売価格の上昇分に見合う家賃設定が可能だという。

 実際、同社の非ZEH賃貸「シャーメゾン」と比べると、賃料を平均5000円程度アップできている。年間では1戸で6万円収入がふえることになる。一方、物件の販売価格は、物件ごとの仕様が異なるのであくまで参考値としながらも、「シャーメゾン」よりも戸当たり50~60万円程度高いため、10年程度で回収できる計算だ。

 CO2(二酸化炭素)の排出量削減につながる点も、オーナーや入居者への訴求ポイントの1つだ。同社の試算によると、1戸当たりのCO2排出量は年間124kg。一般的な賃貸住宅の年間CO2排出量1796kgと比べると、約93%も削減できることになる。

 今後の展開については、「20~22年度にわたる第5次中期経営計画では、年間2500戸の販売を目標としていた。しかし、既に初年度で達成したため、今後新たな目標を検討しているところ」(担当者)という。

20~30代の9割が環境配慮を意識

 積水ハウスは、9月に「地球温暖化防止に対する住生活意識調査」を実施した。調査対象は20~30代の男女各200人。その結果、89.5%が地球温暖化の影響を実感し、87%が「地球環境を意識した取り組みに賛同」しており、93%が「地球環境にやさしい生活をしたほうがよい」と考えていることが分かった。

環境配慮生活の実践に対する考え方の統計グラフ

 また、44.3%がCO2の排出量を全体としてゼロにする「カーボンゼロ」を意識している一方で、カーボンゼロの実現に積極的に取り組むべきなのは「政府・地方自治体」(78.5%)や「エネルギー部門の企業」(69.5%)で、家庭部門(自分自身を含めた個人1人ひとり)が取り組むべきと考えている人はまだ30.5%しかいなかった。

 個人での取り組みに関しては、91.8%が「地球環境に配慮した生活を〝無理せず〟実践したい」、84.8%が「〝無意識のうちに〟カーボンゼロをする方法があれば実践したい」と回答した。

 カーボンゼロの実現に向けて取り組む上で、特に金銭的な負担が障害と感じている人は64%と最多だった。実践していないがやりたいと思っていることの上位3位は「高効率家電やエコカーの選択」「太陽光発電、再生可能エネルギーの利用」「省エネ住宅の選択」。環境効果は高いが、個人の金銭的負担が多い項目は実践したいものの、実践できていない人が多い結果となった。

 

大東建託、2030年に約2万戸の販売目指す

 大東建託(東京都港区)は、17年11月にZEH基準を満たす賃貸集合住宅「大東建託オリジナルZEH賃貸」の1棟目を完成させた。21年4月には、ZEH-M(ゼッチエム)賃貸住宅「SOLEIL(ソレイユ)」の販売を開始。21年4月には「蓄電池搭載型ZEH賃貸」を発売している。

 同社のZEH賃貸の販売数は、21年3月末時点で204棟1400戸。4月からは実績を急激に伸ばしており、9月末までの半年間で107棟784戸を販売。累計販売数は311棟2184戸となった。

 販売が急激に伸びたのは、ZEH賃貸として開発した商品以外も、オーナーの要望に応じてZEH化するという対応を取ったからだという。

 現在、ZEH化を図る際の業務をシステム化し、より手軽に提案することができる体制を整備中だ。さらに、既築の非ZEH物件をリフォームによってZEH化するサービスの研究も進めている。

 「大東建託オリジナルZEH賃貸」は、京セラ(京都市)と共同開発し、特許を出願している低圧一括受電システムを採用している点が特徴。低圧での電力受電、余剰電力の売電、各住戸における太陽光発電力の自家消費などを電力会社との間で同グループが一括して管理するという仕組みだ。

 このほか、気密性・断熱性が高い多層構造の外壁、気密性が高い壁式構造、高断熱のアルミ樹脂サッシ、LED照明、節湯C1対応の水栓などを採用しており、省エネルギーと創エネルギーにより基準1次エネルギー消費量を75%以上削減している。

ZEH賃貸の外観写真

大東建託が販売したZEH賃貸の外観

 太陽光パネルなどの発電に関する設備は同グループの所有となっており、オーナーは設置する場所を貸すという形をとっている。そのため、オーナーは非ZEHの商品と同様の費用負担でZEH賃貸を購入することができるだけでなく、設備の設置場所に対する賃料を受け取り、事業収入を向上させることができる。 蓄電池搭載型ZEH賃貸は、大東建託オリジナルZEH賃貸に蓄電池を設置した商品。蓄電池も同グループが場所を借りて設置する形をとるため、オーナーの負担は0円。一方で、停電時には、共用部に設置された蓄電池からスマートフォンなどの充電ができるといった入居者のメリットがある。

 SOLEILは、日中発電した電力を入居者が使用し、余剰分をオーナーが売電できる各戸受電方式を採用した商品。「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下、FIT法)」による10年間の固定買い取り期間が終了した後は、Looop(ループ:東京都台東区)が提供する20年間の固定買い取りサービス「ソレイユFIT」を利用することができる。

 入居者にとってもメリットは大きい。例えば、基本料金0円、1kwhあたり各地域電力エリア単価からマイナス3円(税込)で電気を使用できる「ソレイユ割」の適用対象になる。同社の試算によると、1LDKの物件で電気代を比べた場合、他社では月額5530円かかる一方で、SOLEILの物件では毎月太陽光発電からの消費で1160円、ソレイユ割で1290円、計2450円の削減になるという。また、停電時にも、太陽光パネルで発電した電気を使用することが可能だ。

 技術開発部環境企画課の大久保孝洋課長は「賃貸住宅メーカーの最大手として、環境配慮の面でもトップを目指す。30年には供給戸数の50%に達するよう、社内的にロードマップを作成する予定。ZEH賃貸の供給約2万戸を目標に、さらなる拡販を進めていきたい」と今後についての意気込みを語る。

 

旭化成ホームズ、21年度上期は全体販売の3割を達成

 旭化成ホームズ(東京都千代田区)は、ZEH賃貸に関する補助金が始まった18年度からZEH賃貸の販売を始めた。18年と19年はBELS申請を行った物件のみを集計していたため、引き渡しベースでそれぞれ3棟、10棟にとどまっているが、20年度は国が定めた「ZEH-M」の基準を満たす物件すべてを対象としたこともあり、74棟となった。

 同社が展開する賃貸住宅「へーベルメゾン」は、標準の断熱性能においてはZEH-Mの基準をクリアしていることもあり、新たな規格商品の開発は特に行わず、「旭化成安心Eco(エコ)サポート」を提供する形でZEH賃貸としてきた。これは13年度から提供を開始したサービスで、太陽光発電設備を同社の費用で設置し、オーナーには20年分の屋根地代を一括で支払う仕組みだ。

ZEH賃貸の外観イメージ図

旭化成ホームズが販売するZEH賃貸の外観イメージ

 さらに3月にはFIT法に頼らない独自の仕組み「Ecoレジグリッド」を販売し、旭化成安心Ecoサポートに変えて提案を進めている。こちらは、太陽光設備と蓄電池を同社の費用で設置し、オーナーには30年分の屋根地代を一括で支払い、入居者には旭化成の電力小売会社を通して再生エネルギー由来の電力を割安料金で提供する仕組み。入居者は停電時でも、共用電力やWi-Fiの利用が可能。

 オーナーへの提案時には、①ZEH賃貸の普及前は付加価値となり、普及後にも非対応の場合は入居者に選ばれない賃貸になるリスクがあること、②入居者にとって光熱費の削減や停電時にも電気が使えるといったメリットがあり、家賃を高く設定できることを説明し、訴求している。地主系のオーナーは、環境や地域に対する貢献の意識が高い人が多く、当初の予想よりもZEH賃貸の採用率が高くなっているという。

 担当者は「ZEH賃貸の販売は、環境貢献につながるうえに、Ecoレジグリッドは当社のRE100早期達成、旭化成グループ全体の再エネ利用推進につながるため、重要度は極めて高い。21年度は全体受注の3割を目標としていたが、上期で目標を大きく上回っており、上方修正を検討しているところ」と話す。

BELSとは?

 BELS(ベルス)とは、Building-Housing Energy-efficiency Labeling Systemの略称で、住宅性能評価・表示協会が運営する、建築物省エネルギー性能表示制度のことを指す。

 具体的には、一次エネルギー消費量をもとに指定機関が省エネルギー性能を客観的に評価し、5段階の星マークで表示するというもの。新築と既存建物の両方が対象。国土交通省が定めた「建築物の省エネ性能表示のガイドライン」に基づく第三者認証制度の一つで、2016年4月に開始された住宅の省エネ性能表示制度において利用されている。

(10月25日4面・5面に掲載)

関連記事▶【広がるエコ賃貸[前編][後編]】

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