経済産業省資源エネルギー庁は、プロパンガス(以下、LPガス)の不透明な利用料金の是正に動く。基本料金の定義の明確化や、LPガス業界および不動産業界におけるLPガスの取引適正化を目的とした制度改正の方針を、7月までに取りまとめる予定だ。
設備費上乗せの商慣行にメス
2日には「料金透明化・取引適正化の動向」などを議題とした分科会を開催した。その中で、課題に挙がったのが、賃貸住宅に導入されるLPガスの商慣行だ。
この商慣行は、LPガス事業者が賃貸住宅のオーナーに対し、LPガス本体の設備を無償貸与する営業方法で契約を結ぶことを指す。オーナーから回収しなかった設備費は、LPガスの利用料金に上乗せされることで、入居者が不当に高い料金を負担している実態を指摘した。
さらに、一部のLPガス事業者は、無償貸与の商慣行の中で差別化を図るため、給湯器やコンロ、エアコンなど付帯設備も無償貸与することでオーナーの契約を獲得している実態がある。これらの設備費も、利用料金に転嫁されている。
もう一つの課題が、賃貸住宅の入居者にLPガス事業者を選択する権利がないこと。集合住宅に導入されるLPガスが1棟契約であるため、入居者は供給事業者を選べず、入居後に利用料金を知ることになる。
同庁は2018年2月、ガス会社に対する取引適正化のガイドラインを改訂し、自社の料金メニューを公表することを求めている。入居者が物件契約時に、LPガス料金を知ることができるよう促しているが、あくまでも要請ベースのため、公開するかどうかは各社にゆだねられている。
資源エネルギー庁資源・燃料部の永井岳彦石油流通課長は、契約窓口がオーナーとLPガス事業者とで一本化している点を指摘。「設備費と利用料金の契約を、物件オーナーと入居者に分離することを検討している。これにより、LPガス事業者は、設備の無償貸与についてオーナーからの提案に応えにくくなる。結果、顧客獲得のための過剰な投資を防ぐことにつながる」と話す。不動産業界でも、LPガス事業者の動きと料金傾向を把握することで、同商慣行が健全な取引に改善していくと同庁はみる。
(2023年3月20日1面に掲載)