空室が現金詐取の受け取り場所に
「今思えば、おどおどした男性の声で怪しげな印象だった」。被害に遭ったアパートの管理会社社員Aさんは、案内を装った電話について、こう語った。
Aさんは8月10日に東京都豊島区の不動産会社を名乗る人物から内見希望の電話を受け、ファックスで名刺を受けとった。名刺に書かれた社名は実在する仲介会社だったため、現地キーボックスの場所と暗証番号を伝えた。数日後、西新井警察署から突然、連絡がきた。暗証番号を教えた神奈川県のアパートが詐欺に使われたという内容だった。身内や公共機関を装い現金をだまし取る詐欺が発生しており、現金の送り先に指定されていた住所が同アパートだった。8月24日に警察立会いのもと、アパートに行くと現地キーボックスから合い鍵がなくなっていた。該当の部屋は施錠されておらず、中に入るとキッチンに合い鍵が放置されていたという。
Aさんがファックスで受け取った名刺の仲介会社に確認すると、社員の名前は架空の人物だったことが分かった。名刺を悪用された仲介会社は「当社に実在しない社員の名前で在籍確認の電話が数件あった」と話す。偽造された名刺は、実物とは異なるデザインで電話番号も虚偽の番号だった。