元・入居者の男性が賃貸仲介手数料の一部返還を求めて東急リバブル(以下東急・東京都渋谷区)と争った裁判の上告審判決で、東京高裁は14日、東急側の上告を棄却した。仲介依頼成立時点までに、手数料が家賃1カ月分である承諾を借り主から得なかったことは「違法」とする地裁判決が確定。東急側は、国の定める「原則0.5カ月分」にのっとる形で、男性に手数料の一部を返還することになる。繁忙期シーズンのさなか、不動産会社の仲介業務に影響を与える判決となった。
上告棄却で手数料を一部返還
〝依頼の成立日〟で元・入居者と食い違い
上告の棄却により、2019年8月に東京地裁が下した「借り主の事前承諾なく手数料1カ月分を取ることは違法」という二審判決が確定した。東急側は、13年に男性から受け取った家賃1カ月分の仲介手数料22万5000円のうち、家賃0.5カ月分にあたる11万8125円と遅延損害金の支払いが求められる。
この訴訟は、男性が13年3月から18年3月まで5年間住んだ賃貸住宅をめぐり、退去を控える4カ月前の17年12月、仲介した東急リバブルに手数料の一部返還を求めて起こしたもの。
宅建業法では、借り主から取ってよい仲介手数料の上限は「原則0.5カ月分」と定まっているが、仲介依頼が成立するまでに借り主から承諾を得ておけば、家賃1カ月分でも違法にならない例外規定も存在する。
今回の判決では、東急側が例外規定を「満たさなかった」という結論に至ったが、その中でも争点になったのが「仲介依頼が成立したタイミング」。ここで双方に食い違いが生じた。
時系列を簡単におさらいすると、元入居者の男性は12年末に物件の内覧と仮申し込みを済ませた後、年明けの13年1月上旬に入居の意思を東急側に示し、契約締結日の案内を受けている。
この時点では、賃貸仲介手数料1カ月分の明示はなかった。そして同月20日、男性は、手数料が記載された入居申込書・賃貸借契約書に署名・押印。2日後の22日に家賃1カ月分の手数料を支払ったという流れ。
男性側は「(手数料を)事前に承諾していない」「原則0.5カ月分を知らずに言われるがまま支払った」として、宅建業法の例外規定を満たしていないと主張していた。