東京証券取引所スタンダード市場に上場する、収益不動産デベロッパーのアスコット(東京都渋谷区)の新社長に中林毅氏が7月19日付けで就任した。賃貸マンションの開発規模拡大のほか、物流施設にも領域を広げる。商品の多様化を進め、安定経営を目指す。
開発不動産の多様化推進
売上250億円に伸長
アスコットは、都内の賃貸マンション開発に強みを持つデベロッパーだ。2021年9月期決算のグループ連結売上高は20年9月期比60.3%増の249億3200万円。不動産開発事業の売り上げが201億6100万円で全体の80.9%と最も高く、そのうち、賃貸マンションの開発が7割を占める。
7月にトップに就いた中林社長は「物流施設など開発物件の多角化に加え、アセットマネジメント事業を強化していく。市況に左右されない安定した経営ができるようさらなる成長を目指す」と語る。
中国投資家需要つかむ
中林社長は1982年に東北大学経済学部卒業後、旧・日本開発銀行(現・日本政策投資銀行:東京都千代田区)に入行。約20年間、ベンチャー企業への投資や、地方中堅企業への融資を経験した。
2000年に、IT業界のスタートアップやベンチャー企業へ投資を行うアイティーファーム(東京都新宿区)を共同創業。また、中国資本の投資会社である平安ジャパン・インベストメント(東京都千代田区)の設立にも携わった。
16年に中国平安保険グループがアスコットの株主となったのを機に、17年に取締役に着任。22年7月より社長に就任した。
中林社長は取締役着任前からアスコットの株主として経営に携わっていた。経営状況やアスコットの持つ強みを熟知していたことから、今回白羽の矢が立った。投資家と現場、双方の視野を持つ経営者として、不動産開発の幅を広げる展開に向けて動く。
従来の賃貸マンション開発は、個人投資家向けに1棟あたり15~30戸、販売価格5億~10億円程度の物件と、機関投資家向けに30~50戸、販売価格10億~20億円規模の物件を中心に行っていた。今後は1物件50億円程度にまで規模を広げていく。
物流施設も企画
新たに、ニーズが高まっている物流施設の開発も手がける。同社として1号目となる案件の用地取得を21年12月に完了。23年夏に竣工する予定だ。賃貸マンション、分譲マンションなどの集合住宅開発に加えて、開発するアセットの多様化を図り、事業を拡大していきたい考えだ。
中林社長は「特に中国の投資家からの出資が増えており、現在の販売先の約3分の1を占めるまでに拡大している。新たな投資家層のニーズをつかむ不動産の開発を行っていきたい」と話す。
売り上げ規模を拡大する一方で、ストック収益の確保も進め、安定した経営を推進していく。手段の一つとして、4月には私募ファンドの第1号を組成した。ファンドは長期運用を予定している。
同ファンドに出資した投資家を対象に、資産管理を請け負うことで、継続的にアセットマネジメントの手数料を受け取ることができる。
同社の開発物件をファンドに組み込むことで、資産規模を拡大する。
(國吉)
(2022年9月12日20面に掲載)