オンライン時代に、仲介店舗を出店する理由を探る

管理・仲介業|2023年05月29日

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 DXが進む中で、賃貸仲介の手法も変化しました。IT重説、オンライン内覧などのデジタルツールを駆使した完全非対面での仲介サービスを売りに、無店舗で仲介業を営む事業者が増えています。そんな中でも、仲介店舗の出店を続けている企業もあります。デジタル時代において、従来型のリアル店舗を出店するメリットを解説します。

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▲カフェ風の仲介店舗で、空間を演出している(S-FIT)

店舗出店は、エリアの市場占有率を意味する

 店舗出店の理由として知っておきたいのが、各エリアにおける同業他社との商圏争いです。それぞれの地域性と密接に関係する賃貸仲介市場において、各エリアにおける仲介店舗の存在は同業他社とのマーケットの奪い合いを意味しています。例えば「駅前に2社あったフランチャイズ仲介店舗が、1社撤退した」というだけでも、各社の売上には大きな影響を与えます。この傾向は地方においてより根強く、店舗を撤退することで企業のドミナント戦略が崩れる恐れがあります。そのため「机上のコストパフォーマンスでは図れない」として、店舗の地代等のコストが膨らんでも、出店に積極的な企業は一定数いるのです。
 
 四国地方でフランチャイズ店舗を運営している仲介会社の社長は「もし当社が仲介店舗を撤退したとして、別の企業が同じ場所・同じフランチャイズで出店すると、うちがこれまで積み上げてきた信頼が全て後発企業に移ってしまう。」と話していました。部屋探しをする一般ユーザーにとっては、店舗の運営企業名まで認識しているケースは少なく、大多数はフランチャイズの色やCMなどで聞き馴染みのある名前で認識しているでしょう。そのため、運営企業が変わった場合に、聞きなれた大手フランチャイズの看板を見て、来店してしまうということです。過去に取り引き実績があったエリアだとしても、看板一つで商圏の顧客を簡単に奪われてしまうとなれば、店舗の存在は重要であり、撤退は避けたいと考えるでしょう。

 また、管理事業も行っている不動産会社にとっては、店舗の撤退がオーナーへの不信感に繋がり、管理離れを起こすきっかけになる可能性もあります。管理を委託しているオーナーにとって、店舗はその管理会社のリーシング力を示すものです。空室を埋めてくれる役割である仲介店舗がなくなると、オーナーは「所有物件の入居率や収益性が下がってしまうのではないか」と不安になってしまいます。
 賃貸不動産会社の中には、仲介店舗が管理事業の拠点としての機能を併せ持っているケースもあります。同じエリアの管理担当者と仲介営業が密に連携して、管理物件の入居率を維持したり、オーナーに入居者ニーズを反映した設備の入れ替えやリフォームを提案したりするのです。こうした役割があることを加味すると、「エリアを抑えている」というメッセージを地域に定着させるためには、店舗出店は効果的な手段のようです。

社員のキャリアアップとしての店舗出店

 「社員のキャリアアップを促進するため、常に新規出店が欠かせない」と話すのは、九州で複数の仲介店舗を運営する不動産会社の社長です。仲介事業が伸びている同社では、仕事や営業成績に対する上昇志向が強い社員を採用・育成し、成長した賃貸仲介営業担当者が店長やエリアマネージャーなどの管理職にキャリアアップをしていきます。

 店舗数が増えなければ、社員が次のキャリアに挑戦できる機会を多くつくることができません。そうすると社員は成績を上げているのに評価されないことを不満に感じ、モチベーションが下がってしまったり、離職をしてしまいます。そのため、常に新規出店をし、社員がキャリアアップできる場をつくり出していかなければならないという考え方です。当然、仲介事業だけでなく、リフォームや相続対策、建築企画などさまざまな分野に事業領域を広げています。

 時代の変化と共に、仲介店舗の在り方も変わってきています。今までのような、駅前の仲介店舗にあった優位性も徐々に減少していくでしょう。コロナ禍が明けて、リアルの意味が再考される今だからこそ、仲介店舗の意義を再確認する必要がありそうです。

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