ベトナム人に特化した派遣・紹介事業を手がけるアプライズ(東京都品川区)が2月20日、TOKYO PRO Market(トウキョウプロマーケット)に上場した。岩堀克英社長に今後の展望を聞いた。
管理会社にBM人材紹介視野
教育まで提供
2030年には労働人口の5%を外国人が占めるといわれ、さらに注目が集まる外国人労働者市場。外国人を専門に就業支援を行う企業として、国内で初めて上場したのがアプライズだ。
外国人労働者紹介ビジネスのさらなる透明化と、参入企業の増加によるマーケット拡大を狙う。
同社は14年の創業で、23年12月期の売上高は6億2100万円。経常利益は2300万円となっている。売上高の内訳は、留学生などの在日ベトナム人への派遣・アルバイト就業先の紹介事業が多くを占める。そのほか、企業に対して特定技能登録支援サービスや、日本企業の海外進出のコンサルティングサービスなどを行う。
同社ではベトナム人の採用面接から就業後の教育までワンストップで行っている。創業からの10年間で、累計1万3724人のベトナム人に就労先を紹介してきた。
学生とマッチング
これまでは日本在住のベトナム人への職業紹介が柱だったが、今後はベトナムにある大学、複数校と提携した、1年間のインターンシップの就労支援に力を入れていく。岩堀社長は「これまでに、ベトナムの大学で物流や建設を学ぶ学生に、物流業や建設業のインターン先を紹介・支援してきた。24年からはビルメンテナンス(以下、BM)を学ぶ学生に向けてBM業へのインターンの紹介を開始する予定だ」と話す。
インターンシップの就労先紹介は22年から本格的に開始した。新型コロナウイルス禍で動きが止まった時期もあったが、26人にインターンシップ先を紹介。うち20〜25%ほどがインターン先で正社員として就職している。
大学で専門分野を学んだ学生は、業務に対してマッチ度が高いため就労意欲が高い傾向にある。また、これまで難しいと言われてきた、日本での正社員雇用への入り口となる。
不動産会社と連携
今後は、不動産業界との協業も視野に入れる。検討を進めているのが、賃貸管理会社との連携だ。管理会社から清掃などBMの依頼をアプライズが受け、アプライズからインターンシップのベトナム人大学生を紹介。管理会社はインターンシップ生の住居を提供する、というスキームだ。これにより、管理会社は人材の確保と空室対策が可能となる。
「市場を大きく」
同社は、ベトナム人が安心して就労できる基盤づくりと、人材を求める国内企業とのマッチングのさらなる拡大を目指す。
岩堀社長が、ベトナム人に特化した事業を始めたきっかけがあった。ベトナムの国政関係者から依頼を受け、ベトナム人の受け入れ先企業の紹介を、ボランティアとして始めたことだ。「前職の仕事のつながりで、ベトナムとは縁があった」(岩堀社長)
創業当時は、ベトナム人に対して、違法である有料での職業紹介で、留学生から利益を得るビジネスモデルが横行していたという。そんな環境の中、同社は口コミなどで地道に利用者を増やしていった。現在は同社の活動もあり、ベトナム人への就業先紹介で就業予定者から費用を取る動きはほぼなくなったという。岩堀社長は「ベトナム人労働者の市場で、これまでのノウハウを生かしてトップで走り抜けたい」と話した。
(舘野)
(2024年3月11日20面に掲載)