相続に関する私たちの仕事は話を聞くことだが、相談者の話すことは氷山の一角でしかない。その下に本来の問題が隠れているので、そこを引き出すことが重要である。専門知識を持っていれば答えをすぐに出すことはできるが、それでは氷山の下が出てくる前に話が止まってしまう。相談者が悩んでいるときに求めているのは解決者ではなく理解者だ。まず理解者から入り、問題の本質が見えたら解決していく。まずは依頼者の幸せは何かを考えたときに問題の本質が見えてくる。そうすれば、その後に本当に何をしなければならないかがわかってくる。
相続相談者の悩みを聞きまず理解者となる
家族の縁を切らさず、時には相続放棄も提案
実例として、何代も続く大地主の家庭で父親が早死にしてしまい、母親ではなく長男が多くの不動産を相続したケースでは、長男に子どもができなかった上に、その長男が若くして亡くなってしまった。父親の後継ぎになることを考えて長男に相続させていたが、次の相続人は長男の妻になり、母親にも相続分がある。しかし、もしこの妻が亡くなった場合は妻の実家の方が相続することになる。そのために悩んでしまい、法律相談にも行ったが「3分の2を相続する権利はある」というありきたりな答えしか得られなかった。妻は長男の姉から全財産を母親に相続させろと言われ、何をしていいのかわからずうつ病になったような状況で相談に訪れた。