賃貸住宅フェア2021in東京セミナーレポート、200戸以上の管理会社「できるだけ急いで事業者登録を」

ことぶき法律事務所, さくら事務所, 弁護士法人日本橋さくら法律事務所

法律・制度改正|2022年01月19日

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不動産会社が実務に生かせる賃貸住宅管理業適正化法の注意点

 賃貸住宅管理業務適正化法(以下、管理業法)は大きく分けて二つの内容がある。一つは賃貸管理で、もう一つはサブリース会社に対する規制。この管理業法について、特に注意しておきたい点を説明する。

 まず賃貸管理。賃貸管理とは、事業者が賃貸オーナーから賃貸借契約に基づき管理を受託するということだが、その事業者の登録制度についての法律が成立し、2020年6月19日に交付された。これは管理する物件が200戸以上の事業者が対象となるもので、無登録で管理業を営むと違法ということになる。ただし、200戸未満の場合は登録の義務はない。

 登録した管理事業者は、いくつかの義務を負う。この義務による規制のうち、主な項目を挙げる。

▶事業所、営業所ごとに業務管理者を選任して、監督を行わせる
▶重要事項説明および重要事項説明書交付(重説)の義務
▶契約書の交付
▶分別管理(オーナーから預かっている賃料を、自社の固有の財産と分けて管理する)
▶従業員証明書を携帯させる
▶帳簿の備え付け
▶委託者への定期報告

 登録の手続きには日数がかかるため、管理事業者の登録は令和3年の6月15日までに行えばいいということになっている。しかし、これは「登録をしなくてもいい」というだけで、200戸以上の管理を行うのであれば登録の有無にかかわらず行為規制は及ぶ。この場合、登録をしていなくても規制を守らなくてはならないということで、これは大きな注意点となる。管理物件が200戸未満の事業者も登録は可能で、登録することで法に従った管理をしているという信用が得られるメリットがあるが、いったん登録するとその後は管理戸数にかかわらず先の義務を負うことになるので、留意したい点だ。

 ここで、改めて管理業の定義について見直したい。管理業かそうでないかは、賃貸住宅の維持・保全をしているかどうかで区別される。集金などの金銭の管理も管理業務の一つではあるが、あくまでも賃貸住宅の維持・保全と併せて行うことで管理業と分類されるため、集金だけをしているところは今回の管理業の定義からは外れる。また、維持・保全についてはすべて自社で点検や修繕を行わないといけないわけではなく、これらの業務を行うそれぞれの事業者の手配や発注をするだけでも維持・保全をしていることになる。この条件に該当する、管理物件が200戸を超える事業者は、できるだけ急いで登録を行ってほしい。

 続いて、サブリースについての規制だが、管理事業者と違ってサブリースには登録制度がない。業務としてサブリースをしていれば規制の対象になる。主な規制の内容は以下になる。

▶虚偽広告、誇大広告の禁止
▶勧誘時の事実不告知、不実告知、威迫行為の禁止
▶重説の義務
▶サブリース、マスターリース契約書の発行

 ここで禁止されている虚偽広告、誇大広告のよくある具体例としては、「何年間家賃保証」などと広告で書いておきながら、実際は家賃の見直しがあるというケース。借地借家法に基づいた家賃減額も借主の請求権として存在するので、そういったことに触れずにただ「家賃保証」とだけ書くのは誇大広告にあたる。

 勧誘時の事実不告知、不実告知なども同様だが、威迫行為や迷惑行為を含めた勧誘の禁止事項については、もう一つ覚えておきたいことがある。銀行や仲介事業者などの勧誘者が不当な勧誘をした場合、勧誘者だけでなくサブリース事業者にも行政処分が下る。サブリース事業者は、勧誘者にも目を光らせておく必要があるということで、これも気を付けたいところだ。

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ことぶき法律事務所
東京都新宿区
塚本智康弁護士

 

 

階段崩落事故から学ぶ建築施工不備の予防策

田村 2021年4月17日、則武地所が施工を担当した東京・八王子の物件で階段崩落による死亡事故が発生した。私は建物の売買の前後や契約時などに建物のコンディションをチェックし、オーナーや仲介に報告する住宅診断を行っている。則武地所が施工した物件についてもいくつかチェックしてきており、物件によっては何百もの問題点が報告されたことがあった。

 もし所有物件に不意の施工不良があったらどうすればいいか。まず、不備と思われる箇所の記録を必ず取る。写真を撮影し、どのような不具合が出ているか、日付も含め記録しておく。階段の傾きなどは写真でいいが、雨漏りなどは、動画で記録しておくとわかりやすい。

 私個人の見解となるが、このような物件は利回りが非常に高かったり、工期が極端に短いといった共通点が見受けられる。限界以上にコストを切り詰めていたり、3月の入居シーズンに合わせて無理に工期を短縮したりしており、当然ながらそこに不具合が発生してくる。不動産は金融商品と違いリアルに存在し、実際にそこで暮らす入居者がいるので、きちんとしたものとして完成されなければならない。オーナーや管理会社は、建物の状況を完成前からチェックし、完成後も定期的に見回って、危険の芽を事前に摘んでもらいたい。

上野 八王子のアパートの階段崩落事故の後、則武地所の物件について調査したところ、実に57件で同様の劣化が確認された。それだけの危険が迫っていたと考えるとぞっとする話だが、これはすべての不動産オーナーにとって無視できない話だろう。

 もし手持ちの物件で問題が発生した場合、オーナーにはどのような責任を問われるのか。

 これは民法717条に規定がある。「土地の工作物の設置または保存に瑕疵(かし)があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者がその損害を賠償しなければならない」

 一次的には占有者(居住者)が責任を負うが、その人になんら過失がなかった場合は二次的に所有者(オーナー)が責任を負う。

 先の民法717条によると本来責任を問われるべき相手が存在する場合、例えば管理会社や施工会社に不備があるというのであれば、オーナーは自分が責任を負ったとしても「求償権」をもってその相手に「弁償しろ」と言うことができる。ただし、則武地所のように破産されてしまうと手の打ちようがない。

 結局のところ、オーナーと管理会社は自分たちであらかじめ自衛の手段を取っておき、不具合についてもある程度の対策をしておかなければいけないということだ。田村氏の話にあったように事前に記録を取っておいたり、定期的に話しながら物件の状況を調査・把握したりしておくことが重要となる。同様に、施工会社も過度な値段の競争や工期の短縮をせず、従業員への研修の徹底などを通じて不具合の発生をできる限り抑えていく努力をするべきだろう。

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田村啓経営企画室長

 

 

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(2022年1月17日13面に掲載)

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