【繫忙期総括2022・各社事例】一般顧客「成約好調」5割超

ブルーボックス,アルコ,タウンハウジング,朝日住宅,エムズ,ハウスネット

統計データ|2022年05月16日

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 1面に続き、2022年の繁忙期の動向を振り返る。全国の不動産会社への独自調査から見えてきたのは、一般顧客の成約が好調だった点だ。首都圏とそれ以外の不動産会社では、法人の成約動向が逆転するなど、エリア別での違いも浮かび上がってきた。

法人、首都圏と他地域で好不調逆転

ファミリー層移動コロナ前に近づく

 1面では全体の成約動向として、「増加」の回答が「減少」を上回ったと紹介したが、「首都圏」と「首都圏以外」に所在する会社の回答を比較していくと顧客属性ごとに成約動向の明暗が分かれた。

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 一般顧客の成約動向が「よかった」との回答は、首都圏が63.4%、首都圏以外が56・9%とともに5割を超えた。

 年間2650件の賃貸仲介を行うブルーボックス(愛知県稲沢市)の成約件数は21年繁忙期比5%増。特に、DINKS、ファミリー層は成約が21年繁忙期比20%増となり、単身者の減少分をカバーした。

 21年の転居理由は約10〜20%が「家賃減額」だったのに対し、22年は「転勤」「子どもが増え、広い家に引っ越したい」など、新型コロナウイルス禍前に多かった転居理由に戻った。コロナ禍の影響が落ち着いてきていることがうかがえるという。

 福岡県内を商圏とし、賃貸仲介1428件のアルコ(福岡市)では、来店件数は伸び悩んだものの、問い合わせ件数が21年繁忙期比で約20%増加。結果、成約件数は5〜10%伸びた。特にファミリーの成約が好調だった。

 21年の繁忙期はコロナ下で法人や学生の移動が減少。加えてテレワークの普及で部屋数の多い物件を希望する顧客が多くなったことを踏まえ、22年繁忙期に向けてファミリー物件情報の仕入れを強化したのが成果につながった。

 加えて、21年秋から、ウェブ集客の専門部署を立ち上げたことも成約件数伸長の要因の一つだとする。この2年間でインターネットからの反響獲得の比率が高まってきた。コロナ禍前は、問い合わせにおける電話とメールの比率は6対4ほどだったが、22年繁忙期は、メールが6割、電話が4割と逆転した。

授業方針固まらず学生移動後ろ倒し

 学生の成約動向については、首都圏は「よくなかった」66.2%、「よかった」21.1%、「無回答」12.7%。不調の回答が好調の約3倍となった。

 首都圏以外では「よくなかった」49.2%、「よかった」37%、「無回答」13.8%となり、不調と好調の差は12.2ポイント。首都圏ほど差が開かなかった。首都圏の仲介会社は、学生顧客獲得に苦戦している傾向が明らかだ。

 年間の賃貸仲介件数が6万1708件のタウンハウジング(東京都千代田区)は、21年の繁忙期と比較し成約件数が約10% 伸びた。問い合わせ、来店件数共に21年比10%以上の増加になった。積極的な店舗展開が奏功している。

 同社は21年1〜4月の間に21店舗を新規オープン。新店舗の中には、これまで出店してこなかったエリアが含まれる。埼玉県の熊谷市や神奈川県の平塚市、千葉県の千葉市蘇我といった、都心から電車で1時間強の郊外エリアだ。今後、郊外の出店を強化していくかについては「非公開」(高畑順常務)としたものの、22年は十数店舗のオープンを予定している。

 全体の成約件数の向上の中、横ばいとなったのが学生だ。その理由の一つは保護者と受験生が参加し、部屋探しの相談をする「学生相談会」がコロナ下で開催できなかったこと。二つ目は、学生の部屋探し時期のずれ込みだ。「(コロナ下で)大学の授業内容が確定するまで部屋探しをしないという層が一定数いると聞く。これが影響したのではないか」と高畑常務はコメントした。

21年秋の転勤なし 春に依頼数が集中

 エリアで動向が分かれたのは法人だ。首都圏は「よくなかった」が47.9 %、「よかった」41.5%、「無回答」10.6%と、不調の回答が好調よりも多かった。だが、首都圏以外では「よかった」が46.8 %、「よくなかった」42.8 %、「無回答」10.4%と、好調の回答の方が多かった。

 島根県松江市を商圏に年間1150件を賃貸仲介する朝日住宅(島根県松江市)では、21年繁忙期と比べ成約件数が8%増え、特に法人と学生が伸びた。問い合わせ数は15%増、来店者数は2%増だった。

 来店せずに物件探しを希望する法人からの需要が高まり、来店者数の増加率を上回る成約件数の伸びにつながった。

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 成約が20%増えたという法人は時期によって依頼の傾向に変化があった。21年からは秋の異動がなくなり、春に異動が集中しているという。法人の退去率も減少しており、コロナ禍前では平均して93〜94%程度だった入居率は現在、約97〜98%に高まっている。

コロナ禍の影響「法人契約」最多

 成約件数の増減の理由でコロナ禍の影響を受けた内容(複数回答可)として、もっとも多かった回答は、法人契約の増減で98件だった。全体の回答のうち、具体的に「減少」と回答したのは、39件、「増加」としたのは7件、残りの52件は増減を明記しないものの影響があったと回答した。

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 地方で法人が伸び悩んだケースもあった。年間仲介件数2334件のエムズ(北海道札幌市)は、22年繁忙期1〜3月の成約件数が21年比で約20%減と不調。担当者は「コロナ下の影響か、社宅代行会社からの法人送客が減少した」と話す。

 同社は、札幌市内に賃貸仲介店舗を6店舗展開する。仲介する顧客の属性は、一般社会人・学生が8割、法人が2割。法人について、肌感覚で21年比3割減少したという。「コロナ下の21年繁忙期も、移動制限の影響からか法人は減少傾向にあったが、22年も引きずっていて回復の兆しがない」(担当者)

 対策として、社宅代行会社の新規開拓を行い、21年から送客の間口を拡大した。

 一方、法人が増えたのは埼玉県入間市と狭山市を中心に年間835件の賃貸仲介を行うハウスネット(埼玉県入間市)だ。狭山市内での法人契約による入居者が2〜4月で22件ほど増加した。22年1月ごろに新たに製造工場ができたことが影響しているという。近年は築浅や新築を求める入居者が多く、狭山市駅近くには大手ハウスメーカーの高級新築賃貸マンションが建ち、市内の病院に務める医療関係者らの入居で満室となった。

 同社では新卒採用もあり、従業員数が確保できたことで十分な顧客対応体制を取れたという。同社の新井靖社長は「遠方顧客によるオンライン接客も増えている。IT重要事項説明(IT重説)は21年繁忙期比で約2倍に増え、業務のオンライン化が進んでいる」と話した。

ピークは3月上旬 来店者35.5%減

 22年の繁忙期のピークは「3月上旬」の回答が最も多く166件、次いで「3月中旬」が98件、「2月下旬」が93件となった。

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 全国賃貸住宅新聞の21年繁忙期の調査でも3月上旬がトップ、次いで2月下旬、3月中旬の順であったため、3月上旬が繁忙期のピークであるという傾向はこの2年で変わっていない。

 一部で、大学での対面授業の方針が定まるまで学生が動かず、4月に入ってから部屋探しをするケースがあったとの声も上がった。

 「2021年と比較した来店者の増減」では、「変わらない」の割合が最も多く36.2%、「減少」が35.5 %、「増加」は23.2%だった。全体の成約動向の「増加」37.4%、「減少」29.8%と比較すると、来店せずに成約する動きが継続している。オンライン内見やスタッフの同行なしでの内見などの利用も増えているといえそうだ。

 コロナ禍を脱した後、学生や法人の動きがどれだけコロナ前の水準に戻るかに注目が集まる。

(2022年5月16日4・5面に掲載)

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