1面に続き、2022年の繁忙期の動向を振り返る。全国の不動産会社への独自調査から見えてきたのは、一般顧客の成約が好調だった点だ。首都圏とそれ以外の不動産会社では、法人の成約動向が逆転するなど、エリア別での違いも浮かび上がってきた。
「IT重説」が要望トップ
22年繁忙期では、成約増減の理由に「インターネット集客の強化」が2位に入っており、賃貸仲介会社が優先的に取り組むべきテーマといえる。「2021年と比較したオンライン仲介・内見の増減」については、「増加」が42.4%、「変わらない」が44%、「減少」が3.6%と、オンラインの接客ニーズが高止まりしている。
「導入しているITサービス(複数回答)」では「IT重説」が280件でトップ、ビデオ通話などの「オンライン接客」が235件、「VR(バーチャル・リアリティ)やリモート内見」が196件となった。
一方、顧客から要望の高かったITサービスも、「IT重説」がトップの197件、「オンライン接客」119件と「VRやリモート内見」115件が、ほぼ並んだ。
ITサービスの要望が高い顧客属性としては、一般の単身者が223件と5割を占めた。次いで学生が104件と23.7%。一般客のファミリー95件と法人93件はそれぞれ21%程度だった。
SNSで外国人反響
年間仲介件数約6100件のワンダーライフ(愛知県名古屋市)は、22年繁忙期、外国人対応に注力した。
集客には、外国人専用のポータルサイトやSNSを活用し、外国人の成約件数は21年繁忙期と比較し大幅に増加した。
外国人からのネット反響は毎月平均70〜80件あり、約半数がSNSからだ。SNSには広告費がかからず、費用対効果が高いことも活用するメリットだという。
20年にベトナム人、中国人を新卒入社で採用し、同国からの顧客対応を担当。2年で一通りの営業を担当できるまでに成長した。22年はネパール人と、英語対応できる日本人も採用し、さらに外国人集客に注力していく。
ただ、繁忙期の仲介件数は5%減と伸び悩んだ。「飛び込み来店が激減した」(東康貴社長)と振り返る。年々、飛び込みでの部屋探しは減少しているが、特に22年繁忙期は激減し、ポータルなどからの反響来店で補填(ほてん)しきれなかった。しかし、ほかの事業でカバーし、会社全体の売り上げは増加している。
セルフ内見実施倍増
群馬県前橋市を中心に年間約900件の仲介を行うアルファプラン(群馬県前橋市)では21年繁忙期に比べ問い合わせ数が10%増加、セルフ内見の実施やIT重説により、来店数は減少したが成約数はほぼ横ばいで着地した。
同社ではコロナ感染拡大直後の20年繁忙期から感染症対策としてセルフ内見サービスの提供を開始した。物件の開錠・施錠のみ従業員が事前・事後に行い、入居希望者は物件内にあるQRコードをスマートフォンで読み取り、物件情報を見ながら内見する仕組みだ。これにより内見数が従来の2倍となり、成約にもつながっている。
21年にはあまり動きがなかった法人契約の単身入居者が増えた印象があるという。同社の賃貸営業部の境野惠介氏は「オンライン化に抵抗がある顧客も多いのではないかと懸念していたが、セルフ内見やIT重説もスムーズに浸透した。今繁忙期から電子申し込みシステムも導入し、業務効率化も図れている」と話した。
ポータル反響4割増
年間の賃貸仲介件数3137件の朝日綜合(秋田県横手市)は、1〜3月末の成約件数が21年同期比で101%とほぼ横ばいだった。
一般客を中心に利用するポータルサイト全体の問い合わせは21年同期比で140%になった。これまで複数のポータルサイトを利用していたが、22年繁忙期では「SUUMO(スーモ)」を中心に物件を掲載。広告費を維持したまま、問い合わせ数が増加した。
同社の熊谷塁取締役は「SUUMOの集客力の高さを感じた。今後は問い合わせからの来店や成約率を高めていく」と語る。ただ、法人は不調。テレワークに対応できるホワイトカラー系の職種を中心に減少し、21年比で7割程度に縮小した。
(2022年5月16日4・5面に掲載)